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#40 鞭となったスリッパが引き裂く深夜の静寂!〜強がるロッティーと限界突破するラビニアのドS心〜
深夜のオフィスで、セーラは無機質な硝子の人形になりきっていた。頭上には、休憩コーナーから運ばれたマグカップ。何時間も保温され、どろりと煮詰まった熱々の黒いコーヒーが注がれている。
ほんの数ミリのブレすら許されない極限の静止の中、ジェシーの下卑たカウントだけが響いていた。
「ろーぉく……」
ジェシーの粘着質な手が、セーラのタイトスカートの奥で卑猥に蠢く。セーラは唇を血が滲むほど噛み締め、屈辱と熱に耐え続けた。
「なーぁな……」
極限の緊張、頭上からの凶悪な熱、そしてジェシーのいやらしい愛撫。セーラの身体が微かに揺らぐ——。
「セーラさん……!」
それを見かねたロッティーが、思わず悲鳴のような声を上げた。
「大丈夫だよ、ロッティー……。このくらい、何でもないさ……」
しかしそのやり取りを見たラビニアは、満面に醜い笑みを浮かべて手を叩いた。
「ハイ、残念でした! ペナルティの罰ゲームです!!」
「コーヒーはこぼしてないだろう!」
セーラが鋭く睨みつけるが、ラビニアは冷酷に言い放つ。
「人形が喋るんじゃないよ!! ジェシー、罰を与えろ!」
「了解です、ボス」
ジェシーは容赦なくスリッパを振り上げ、ロッティーのお尻をめがけて思い切り振り下ろした。
パチーーーン!!
激しい破裂音が静かなオフィスに響く。
「ロッティー! 大丈夫!?」
「……っ! こんなのなんともないさ……っ!」
ロッティーは歯を食いしばり、涙を堪えて強がった。セーラにこれ以上苦痛を与えないための、精一杯の抵抗だった。
だがその健気な姿を見て、ラビニアのサディスティックな笑みはさらに深まる。
「手を抜くな、ジェシー! 次はもっと強く打て!」
そしてセーラに視線を戻し、冷たく命じた。
「さあ、最初からやり直しだ。熱いコーヒーを入れてやれ」
「了解しましたボス! ほら、今度はなみなみ注いでやるぞ」
ジェシーが下卑た笑みでコーヒーを注ぎ直そうとした瞬間、ロッティーがセーラの足元に激しくしがみついて叫んだ。
「もういいです! やめてください、セーラさん!」
大粒の涙がボロボロと溢れ落ちる。
「僕が、僕が罪を受ければいいんです……っ!」
頭上にカップを乗せたまま汗を滴らせるセーラと、涙に濡れて懇願するロッティー。終わりのない無限地獄の中で、互いを守ろうとする二人の強い情愛が激しくぶつかり合っていた。
ラビニアはそんな二人を見下ろし、冷たい笑い声を上げた。
「美しい友情だねぇ。でも、契約しただろう? 途中でやめることはできないぞ。続けてもらうよ」
三人の狂ったプレイが臨界点に達しようとしたその時——。
オフィスの暗闇の向こうから、眩しい直線的な光が三人をダイレクトに照らし出した。
「そこ、何やってるんですか? ……って、ええええっ!?」
光の主は夜間巡回中の警備員、ベッキーだった。懐中電灯を構え、信じられない光景に目を丸くしている。
ベッキーが照明のスイッチを入れると、フロア全体が白日の下に晒された。
さすがのラビニアも、これ以上体裁が悪くなるのは避けたかった。舌打ちをしてジェシーに目配せする。
「チッ……今夜はこれくらいにしといてやる」
ラビニアはスリッパを床に投げ捨て、冷酷な捨て台詞を残してジェシーを引き連れ、足早に去っていった。
遠ざかる足音が完全に消え、フロアに静寂が戻った。
パチッと点いた蛍光灯の白い光の下、懐中電灯を握ったベッキーが、戸惑った様子で二人に近づいてきた。状況を完全に把握できていないようだったが、涙目のロッティーとセーラのただならぬ様子に、何かを感じ取っているのは明らかだった。
「あの……大丈夫なんですか? こんなに遅くまで……」
心配そうに顔を覗き込んでくるベッキーに対し、セーラは頭上のマグカップをそっと机に置き、乱れた息を隠すように背筋を伸ばした。
「ああ、大丈夫だよ、ベッキー。特に何もない。心配いらない」
落ち着きを取り戻そうとするセーラの言葉に、ベッキーはまだ釈然としない様子で二人を交互に見つめたが、小さく頷いた。
「そ、そうですか……。じゃあ、僕はまだ見回りがあるので……気をつけて帰ってくださいね」
後ろ髪を引かれるように言い残し、ベッキーは再び暗い廊下の奥へと巡回に戻っていった。
二人きりになった深夜のオフィス。
セーラはふっと肩の力を抜き、床の暗がりに視線を落とした。ラビニアに投げ捨てられたブライス人形のエミリーが転がっている。タイトスカートの裾をわずかに揺らしながら静かに身を屈め、それを拾い上げた。
顔を伏せたまま、エミリーをロッティーの胸元へそっと手渡すと、セーラは今にも消え入りそうな掠れた声で呟いた。
「ロッティー……今夜は帰らないでくれ。僕と一緒にいてくれ……」
それは、かつて完璧なスパダリとして君臨したセーラからは想像もつかない、弱気で切ない甘えだった。至近距離でその言葉を受け止めたロッティーは、傷つきながらも自分を必要としてくれるセーラの痛々しい姿に、静かに「はい……」と頷いた。
つづく
—
【次回予告】
深夜の修羅場を乗り越え、せき立てられるようにセーラの部屋へと向かう二人。一刻も早く二人きりになりたい焦燥感と、もどかしい道行きに胸を焦がしながら、互いを求める熱情は高まっていく。
次回
#41 ついに結ばれるセーラとロッティー!? 〜パノプティコンの社員寮・二人を切り裂く着信音〜
「すまない。ロッティー。俺とは、もう関わらない方がいい」
お楽しみに!
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