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#59 悪魔のチョコレートゲーム〜セーラの舌がラムダスの口内へと侵入し、ほろ苦いチョコが溶けてゆく〜

かつてアーメンガードは、同じ支社長室でミンチンという圧倒的な強者にひざまずかされていた。それは自分の将来を人質にとられての命乞いだった。 羞恥心を差し出し、屈辱を受け入れるしか生き残る道はなかった。それがこの——口移しのチョコレート。だからこそ、アーメンガードにとってそれは己の過去を断ち切るための儀式だった。 「このチョコレートを、お前の口で咥えろ。そして、それをラムダスの口へと直接押し込め。手は一切使ってはいけない。わかるよな、このルール?」 屈辱に歪むセーラの顔を、今か今かと待ち望むアーメンガード。 しかし——。 セーラの瞳に宿っていた冷たい殺意は、ふっと霧散した。代わりに浮かび上がったのは、不敵で、どこか蕩けるような熱を帯びた「オス」の顔だった。 セーラは無言のままローテーブルに顔を近づけ、小皿の上のトリュフチョコレートを唇で咥え上げた。そして、黒服に組み伏せられているラムダスを見下ろし、ゆっくりと膝をつく。 (セーラ……) ラムダスは抵抗するそぶりすら見せず、潤んだ瞳でセーラを見つめ返し、ごく自然に、誘うように自らの唇をわずかに開いた。 ——重なる、二人の唇。 セーラの舌がラムダスの口内へと侵入し、甘くほろ苦いトリュフチョコレートを舌先で転がしながら、奥へ奥へと押し込んでいく。 「んっ……ちゅ……」 チョコが溶けるドロドロの甘さの中で、二人の唾液がねっとりと絡み合う。すでに夜通し何度も肌を重ね、深く結ばれ切っている二人にとって、それは今さらなんの羞恥でもなかった。 周囲の存在を完全に無視するかのように、二人はアーメンガードの目の前で、生々しい水音を立てながら熱烈なディープキスに陶酔していった。 ——れろ……っ   ——れろ……っ  「……ッ!? な、なんだよ、これ……」 アーメンガードの顔からみるみる血の気が引いていく。 その横で、ラビニアは息を荒らげながらスマホを構えていた。画面には舌を激しく絡ませ合う二人の顔がドアップで映し出されている。ラビニアのタイトスカートとパンストの股間は興奮で限界まで張り詰め、薄手のナイロンを突き破らんばかりに巨大なテントを張っていた。先端からは我慢汁が溢れ、下着をじっとりと熱く湿らせていた。 (あぁ……なんて美しいの……、ワタシも仲間に入れて欲しい……) 夢中で動画を撮り続けるラビニア。 しかし、アーメンガードの頭の中は完全に破裂寸前だった。 セーラもラムダスも、つい先日に肌を重ねたばかりの間柄、——その二人が自分の前で熱く絡み合い、甘い水音を立てて舌を貪り合っている。 本来なら最も見たくない、自尊心を粉砕されるだけの絶望の光景。しかし、二人の浮気の現場を完璧に押さえたという奇妙な達成感が、アーメンガードの目を釘付けにさせた。 それは脳の致命的なエラーだった。のけ者にされた激しい拒絶感と嫉妬は、あまりにも強烈な精神的ストレスとなり、その苦痛を麻痺させるために脳の報酬回路が過剰な快感物質を分泌し始める。見たくないはずなのに、見入ってしまう。苦痛と連動して跳ね上がる狂おしいほどの昂りに、アーメンガードの思考回路は完全にショートしていった。拒絶すればするほど股間は熱く脈打ち、次々と溢れ出す我慢汁で、下着はもう飽和状態だった。 「違う……こんなの、俺が求めてたのはこんなんじゃない……ッ!!」 アーメンガードは頭を抱えて狂乱し、悲鳴のような絶叫を残すと、逃げるようにその場を去っていった。 「あれ? アーメンガード!? どこ行ったの?」 極上のポルノ撮影に夢中になっていたラビニアは、ようやくアーメンガードがいなくなったことに気づいた。 「もう、めんどくさいわね! ……あんたたち! そいつら適当に鍵のかかる部屋にでも放り込んどきなさい!」 ラビニアは黒服たちにそう言い捨てると、もっこりと膨れ上がった股間を擦り合わせながら、慌ててアーメンガードの後を追いかけた。 ◇ 支社長室に取り残されたのは、拘束されたラムダスとセーラ、そして顔を見合わせる二人の黒服だけだった。 「……チッ。おい、とりあえずこいつら立たせろ。いつもの地下にでも……」 黒服の一人が、ラムダスの拘束を解いて立ち上がらせようと腕を掴んだ、その一瞬の隙。 「舐めるなッ!!」 セーラが野獣のように吠え、もう一人の黒服の腕に思い切り噛みついた。 「痛ぇッ!?」 「今だ! 行けッ、ラムダス!!」 セーラは噛みついた黒服を盾にするようにして、もう一人の黒服に強烈な頭突きを食らわせた。体勢を崩した隙から、ドアへと続く活路が開く。 「セーラ……っ!」 「いいから逃げろ!」 セーラの男らしい一喝に、ラムダスは弾かれたように立ち上がり、開け放たれたドアから深夜のオフィスへと駆け出した。 「……必ず、助けに来るから……ッ!」 ラムダスは血を吐くような思いで背を向け、闇の中へと消えていった。 「逃がすかッ!」 「追うな! こいつを押さえろ!」 激高した黒服たちが、残されたセーラへと一斉に襲いかかる。多勢に無勢。渾身の抵抗も虚しく、セーラは再び冷たい床にねじ伏せられ、両腕を後ろで固く縛り上げられた。 そのままエレベーターで最下層へと引きずり下ろされ、陽の光すら入らない地下の資料室へと乱暴に投げ込まれる。 「大人しくしてろ、この変態野郎が」 外側から重厚な扉が閉められ、電子ロックの音が無情に響いた。 ——ピッ。  ——ピッ。 ——ピッ。  ——ピッ。 カチャンと強固なロックがかかる。再び暗闇と静寂に包まれた檻の中。しかし、床に這いつくばるセーラの瞳からは、決して光は失われていなかった。 つづく — 【次回予告】 アーメンガードとラビニア。互いの内に「同じ傷を持つ者」の歪んだ共鳴が、二人を激しく突き動かす。 理性を焼き切るほどの焦燥感を抱えたまま、二人はただ互いの熱を求め合う。 次回 #60 早く欲しい……永遠にも感じるエレベーターの中〜三和土(たたき)で狂うように求め合う共犯者たち〜 「……うち、来る?」 お楽しみに!

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