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#62 アーメンガードとラビニアの常習化する肉体関係〜今夜もピロートークはセーラへの復讐作戦会議〜
昼間、監視カメラのシステム——手に入れたばかりの全能の権限を使って目撃した、支社長室でのラビニアとガートルードの背徳的な情事。
その生々しい光景を思い出すたび、アーメンガードの胸の奥でどす黒い嫉妬が燻った。だが、ラビニアを問い正したり、責め立てたりするつもりはない。
——いや、そもそもこれを『浮気』などと呼べるのだろうか。つい昨夜、初めて体を重ねたばかりだ。二人の間に恋人のような明確な約束や、契約があるわけでもない。
だからこそ、権利を振りかざすような野暮な真似はすまいと、あの時「見て見ぬ振り」を選んで心に誓ったはずだった。許せないのではない。ただ、自分の存在をラビニアに刻み込みたい。自分を見てほしい、忘れないでほしい——そんな、自分でも整理のつかない歪んだ渇望に突き動かされ、気がつけばアーメンガードは、夜のマンションのエントランスでラビニアの帰りを待ち伏せしていた。
しばらくして、夜の闇の中から現れたラビニアは、待ち構えていたアーメンガードの姿を認めると、少しだけ目を丸くした。
「どうしたの?」
「どうしたって、言われても……来ちゃダメだったかな?」
「……そんなことないけど」
沈黙が降りた。街灯の薄明かりの下、二人はじっと見つめ合う。 やがて、ラビニアの方からふわりと歩み寄り、アーメンガードの手をそっと取った。そのまま手を引き、マンションの中へと誘い込む。
エレベーターに乗り込み、密室に二人きりになる。上へと昇る浮遊感の中、アーメンガードは今すぐここでラビニアを押し倒してしまいたい衝動に駆られていた。
昼間見た情事の残滓と、目の前にいるラビニアの熱。理性を保とうとすればするほど昂りは隠しようもなく、アーメンガードの股間はすでに限界まではち切れそうに張り詰めていた。
不意に、ラビニアの手がスッと伸びてきて、スーツ越しの硬い昂りを外からぐっと握りしめた。
「っ……!」
アーメンガードが息を呑むと、ラビニアは至近距離で妖艶に微笑み、耳元で甘く囁いた。
「部屋まで我慢して」
そして、部屋のドアをくぐった瞬間——アーメンガードは完全に理性をかなぐり捨てた。玄関の三和土(たたき)で、靴を脱ぐ間すら惜しむようにラビニアの身体を強引に引き寄せ、壁に押し付ける。
「ちょっと……っ」
ラビニアの言葉を遮るように、荒々しく唇を塞いだ。今夜は完全にアーメンガードがリードしていた。その激しさに込められた嫉妬と熱を敏感に察知したラビニアは、抵抗するどころか彼の手荒な愛撫を愉しむように、妖艶に喉を鳴らしてそれを受け入れた。
ひとしきり貪り合い、乱れたシーツの中で息を整えていた時のことだ。 ふと、ラビニアが自分のスマホを取り出し、画面をタップしてアーメンガードに見せてきた。
「これ、この前撮ったやつだけど……」(59話参照)
そこに映し出されたのは、セーラとラムダスが薄暗がりで激しく唇を重ね合わせている、あの生々しい映像だった。ラビニアはアーメンガードの反応を試すように、じっと彼の顔を覗き込んでくる。
「ねえ。嫉妬って、辛いかしら?」
悪戯っぽく囁くラビニアの問いに、アーメンガードは苦々しい表情を浮かべた。
「……ねえ、これ。セーラが可愛がっていたロッティーに見せたら、一体どうなるかしらね?」
「ロッティーを?」
アーメンガードは苦い表情で画面を一瞥し、眉をひそめた。
「あいつ。ちっとばかりお灸を入れたら、次の日から会社に来なくなっちゃってさ」
ラビニアの瞳に嗜虐的 な光が宿る。
「え? なに? ラビニアのパワハラが原因だったのかよ。あいつ今、人事部付きでリハビリ出社してるぜ」
「……へぇ、生きてたんだ」
「朝来て、日報書いたら、あとはネットサーフィンして昼には帰っちゃうんだ。……なぁ、あんな子まで巻き込むのかよ。ちっとばかりエグ過ぎないか?」
アーメンガードの僅かな躊躇。しかし、ラビニアは彼の逞しい胸板に指先を這わせ、ねっとりとした瞳で睨みつけた。
「うるさいわね! あのクソガキ、生意気なのよ! 今度はロッティを餌にして、セーラを釣るのよ! ラムダスの時は散々手伝ってあげたんだから、手伝わないとは言わせないわよ」
ラビニアの甘く狂気じみた脅迫に、アーメンガードの瞳から急速に光が消え、冷徹な虚無が戻ってくる。
「……で、どうやって罠に掛けるんだよ?」
「そうねぇ。無茶な仕事でも振って、深夜まで残業させてだなぁ……」
「無理だな。さっきも言った通りリハビリ中だ、残業なんか絶対にしないよ」
アーメンガードが即座にマジレスすると、ラビニアはつまらなそうに唇を尖らせた。
「じゃあ、どうすんのよ」
「……セーラになりすました、偽装メールってのはどうだ?」
ラビニアが「は? そんなの騙せるわけないでしょ」と鼻で笑うと、アーメンガードは賢者の刻 らしい話題を始めた。
「簡単だよ。ヘッダの『MAIL FROM』をセーラのアドレスに書き換えるだけさ。普通のハガキと同じだよ。裏面の差出人欄に誰の名前を書こうが自由だろ? 実際にどこのポストから投函されたかなんて、ハガキを受け取った側には分からない。大抵の人間は、そこに書かれた名前を信じちゃうのさ」
「へぇ……一応、ガートルードにも聞いてみるね」
ガートルード——。 その名前がラビニアの唇から無造作に零れ落ちた瞬間、アーメンガードの胸の奥で、燻っていた嫉妬の炎が再び爆発的に燃え上がった。昼間、あの白日の支社長室で、ラビニアの前に跪いていた若い男の生々しい姿が脳裏をよぎる。理性が一瞬で焼き切れた。アーメンガードはラビニアの細い手首を掴むと、力任せに、その身体を再び激しく貪り始めた。
「どうしたの? 急に…… あっ……/////」
アーメンガードは自らの心の中にドロドロと湧き上がる醜い嫉妬心と真っ正面から向き合っていた。ラビニアにとってはただの便利な手駒の一つに過ぎない男にすら、これほどまでに心を掻き乱されている。そんな己の狭量さと脆さを、脳のどこか冷徹な部分が恐ろしいほど冷静に俯瞰し、酷く嘲笑っているのが分かった。
分かっていながらも、この底なしの愛憎の沼に飲まれそうになる自分を止められない。今の俺は、哀れなほどに弱く、ひどく脆い。
だからこそ、その心の弱さを、胸を焦がす暗い嫉妬を完全に消し去るためには、目の前で身をよじる怪物の、狂おしいほどの喘ぎ声が必要だった。ラビニアの声を、その存在のすべてを自分だけで塗り潰し、支配しているという歪んだ錯覚だけが、今のアーメンガードをこの世界に繋ぎ止める唯一の救いだった。
つづく
—
【次回予告】
セーラを騙った偽装メールにロッティーがまんまと騙され、深夜の会社にのこのことやってきて黒服にあっさり捕まってしまう。最上階の支社長室で闇堕ちしたアーメンガードとラビニアの人質になり、セーラを誘き出すための呼び出し電話をかけられるという、次回の泥沼拷問展開へ突入するためだけの、ただの状況進行・繋ぎ回!
次回
#63 【本編スキップ可】〜ロッティーが罠にハメられて捕まるだけの純度100%の状況繋ぎ回〜
「お前の愛しいセーラも呼んであげる。……これから、楽しい楽しいパーティーが始まるわよ」
お楽しみに!
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