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第6話 再会
「リヒトにぃ~~~!こっちこっち!」
「おいもなくなっちゃうよ!」
遠くからライラとフウラの声がする。今日は豊穣祭、この国の祭りの一つで作物の収穫を神に感謝する祭りだ。
希望の家では普段畑で育てている芋を、庭で焼いてみんなで食べる。腹いっぱい甘い芋が食べられるこの日を、子供達は楽しみに待っていた。
「お前ら、もう芋ではしゃぐ年でもないだろ」
「「そんなことないもーん!」」
ハモる双子達。
あれから3年、俺は15才になっていた。
「いやいやいや!おいもだよ!甘くて美味しいおいもだよ!」
「こんなにたくさん食べれることなんて、そうそうないよ~!」
「そうだよ!ぼくなんてはちみつつけて食べちゃうもんね!」
「……チリ。お前そんなんだから虫歯になんだよ」
騒がしい弟のもとに向かう途中、
「ぅわ!」
足を踏み外したところを大きな腕に支えられる。
「お前最近よくコケるな!運動足りてないぞ!」
「お前は………………、運動しすぎだろ」
エンヤは俺の一回りも二回りもでかい、というか筋肉がすごい。なんだこのゴリラは。
「ふふ、一緒に運動する?僕も最近やってるよ」
「スイ」
控えめに笑うスイに、周りの子供達が釘付けになっている。年をとってますます綺麗になった。
「「「リヒトにぃ、はやく~~~~」」」
「はいはいはい」
いつまで経ってもうるさい弟たちをみてると、自然と笑みが溢れる。
みんな、本当に大きくなった。
3年にわたって生命力を渡し続けた結果、兄弟たちは普通の子供と変わらない健康体になり、身体も順調に成長した。
エンヤに至っては、先日16才の成人を迎え大人の仲間入りを果たしている。
一般的に成人する頃に、魔力の器は形が決まると言われている。今の器が体に馴染んだエンヤは、もうずっと治療を行っていないが健康そのもの。ネオチルドレンの衰弱を病とするなら、エンヤは完治したと言っていいい。
これから弟たちも順に年をとり、数年後には全員完治するのだろう。
ここまでくるのは、簡単ではなかった。魔力を渡しすぎて俺が死にかけたり、実験で飛ばされたエンヤの腕をくっつけたり、スイにつきまとうストーカー男の玉を潰したり、本当に色々あった。
ちなみにネオチルドレン計画はまだ続いているらしいが、魔力爆発が見込める年齢でもないため実験はもう行われていない。衰弱していない被験体(俺達)は魔力が多いただの優秀な魔術師だから、国に貢献する優秀な魔術師を育成するという当初のネオチルドレン計画の目的はすでに達成されている。が、キンドの悲願が達成されるまでこの計画が終了することはないだろう。
(今後どうなるのか、俺にもわからない)
すでにここは、俺の知る未来ではないのだ。
俺の治療魔術は上達したが、それも|理《ことわり》の範囲内。キンドの悲願を達成することは不可能だ。
(それはもう、あいつだってわかっているはず)
でもあの男が、そう簡単に諦めるとは思えない。だから油断はしない。
(俺はずっと今日、この日が来るのを待っていたんだ)
俺が15の年、豊穣祭の日、俺の兄弟が
――6人になった日。
「皆さん、揃ってますね?」
キンドが子供が溢れる庭にシムを連れてやってくる。そしてシムの背後には、背丈がシムの半分もない小さな人影。
(………………やっぱり、きた)
「新しいお友達です、さぁ名前を」
黒髪に赤い目の子供が、地面を見て俯いている。
「………………クロノス、です」
クロノス・シュバルツ
稀代の悪の魔術師、大量殺人犯として指名手配された俺を捕らえ処刑した、兄弟で唯一生き残った最後の弟の名前。
もしかしたらやり直したこの世界では、お前と会うことはないかもしれないと思っていた。俺たちと関わることなく幸せに暮らしてくれたらいいと、そう願っていたけれど。
運命は簡単には変えられないということか、
それなら俺がやるべきことは一つだ。
一歩進んで、俯くクロノスの前に膝をつき、小さな手を取る。その手は冷たく、震えていた。
「クロノス」
「……なに?」
「俺の名前はリヒトっていうんだ」
「……りひと」
「お前は今日から、俺の弟だ」
「……おと、うと?」
その時、クロノスの大きな瞳から、涙が一粒こぼれ落ちた。
前回の対面では起こらなかった現象に胸が苦しくなる。
(ごめんな)
(お前には、本当に辛い思いをさせた、ごめんな)
「あれ?……、俺……」
戸惑うクロノスの背中にゆっくり腕を回し、そっと抱き寄せる。
小さな背中は、震えていた。
(今度こそ、必ず守ってみせるから)
死に戻った俺の使命はまだ終わってない。
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