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第22話 兄弟からの知らせ
同居をはじめて2週間が経った。クロノスと再会したあの日以来、怪しい人物からの接触はない。
二人で村へ買い出しに行った帰り道、今日も平穏そのものだ。
「午前中、騎士団にまた報告に行ってたんだろう。そろそろ戻ってこいとか言われないのか?」
騎士団のことはよくわからないが、そこそこの位の騎士がこんな長期間部隊を離れてもいいんだろうか?出張扱いとかなのか?
「大丈夫大丈夫。むしろちょっと町のほうがきな臭くなってて、気をつけろって釘刺されたよ」
「きな臭い?」
クロノスは少し考えるように首を傾げた。
「子供が攫われてるんだ。それも高位魔術の家の子供ばっかり。最初は家出かもって話もあったんだけど、ここ最近は未遂も含めて4件だって。事件性ありそうだっていって、捜査してるみたい」
「高位魔術の家の子供?」
「めっちゃ怪しいよね、俺の時と同じだとしたら、またキンドやシムが動き出したのかもしれない」
ネオチルドレン計画が再始動したってことか?あの地獄がまた始まるのか?
「だからリヒトはマジで危険だってことで、護衛は継続です」
「…………」
俺のことなんてどうだっていい、問題は兄弟たちとクロノスだ。実験の成功例は今世では俺一人ではない、俺の治療で健康になった兄弟たちも狙われる可能性がある。
(運命はまだ、俺たちを許してくれないってことかよ)
死に戻って、地獄を抜け出して、やっとみんな幸せになれると思ったのに。
「早く帰ろう、スイとエンヤに会いにいく」
「…あ、うん」
「どうした?」
「いや、あの……さ、リヒト」
「?」
はっきりものを言うクロノスには珍しく言い淀んでいる。こいつは最近少し様子がおかしい、何か言いたげにしてるのに結局聞いてこない。
「お前、最近どうし」
「「リヒトーーーーーーーー!!!!!!!!」」
教会の方角、大声で名前を呼ばれた。聞き慣れた声、ちょうど会いに行こうと思っていたエンヤとスイが、こっちに向かって大きく手を振っていた。クロノスと二人であわてて駆け寄る。
「お前ら、どうした急に」
「よぉ、元気にやってるか」
「久しぶりだね」
エンヤの隣でスイが美しく微笑んでいる。人妻の色気というのか、エンヤと結ばれてからスイはさらに美しくなった。これはエンヤ大変だろうなぁ。
「って、え!?」
「クロノス!?!?」
二人がクロノスを見て驚愕の声を上げる。そういえば、クロノスが来てから二人とは会ってなかったな。7年ぶりの再会、いやーわかるぞその気持ち。この子犬、狼並みに成長したからな。
「お前、デカくなりすぎだろ!俺と変わんねぇとか、あんなちっこかったのに!」
「驚いた。……そうだね、本当に大きくなった。クロノスも元気そうでよかった」
「エンヤ、スイ、久しぶり。二人結婚したんだろ?おめでとう」
「ふふ、ありがとうクロノス」
当然のように祝いの言葉を述べるクロノス。だが俺は再会してから、二人の結婚のことは話してない。
「お前、なんで知ってんの?」
「あーそれは、」
「俺が教えたからだよ!!」
またしても第三者の声、聞き慣れたその声は
「チリ!?お前までなんでここに?」
チリは騎士団に入ってから多忙なようで、戻ってくるのは半年ぶりくらいか。
「そこの|俺《・》|の《・》|上《・》|官《・》に伝言があったからだよ!」
「は?上官?」
「え、もしかして」
「お前ら同じ騎士団なのか!」
言われてみれば、チリは騎士団に入ったんだ。クロノスと会っていても不思議じゃないが、まさか直属の上官になっていたとは。
「そこのクソ上官は俺に仕事押し付けて、大好きなリヒトにぃに護衛っていう名目で押しかけ女房してんだろ。あーあーこっちが汗水垂らして働いてるってんのに、ふざけんじゃねぇっての」
「名目じゃなくてちゃんと護衛してるわ」
「誘拐されかけた高位貴族の魔術師ご子息って嘘ついてなー」
「おいチリ!バラすな、アホ!」
「クロノス、お前な……」
ってことはクロノスは俺と再会する前からチリと騎士団で再会していたってことか。
「チリ、お前俺に気ぃつかって帰ってこなかったのか」
出て行ってすぐは毎週帰ってきていたチリが全然帰ってこなくなって、兄離れの早さに少し悲しくなってたがそういう理由があったのか。
「まーね、リヒトがクロノスと会ってもいいって思うようになるまで、会わせないようにしようと思ってたわけよ。それをこいつは力づくで押しかけやがって!」
「力づくじゃないし、運命だ」
「なーにが運命だ!職権濫用して他部署の報告盗みまくってたくせに!」
「うるせー!!!お前がいつまで経っても会わせてくれないからだろー!」
「だからリヒトの気持ち考えろって言ってんだろー!アホ犬ー!!!!!」
めっちゃ既視感のあるやり取り、こいつらはいつもこうやって喧嘩ばっかりしていた。図らずしも兄弟大集合に、心が浮き足立つ。
「はは、とりあえず家入ろうぜ」
兄弟5人、仲良く飯でも食おう。
「はー!うまかったー!やっぱりスイの料理は最高だな!」
「ふふふ、ありがとう。美味しく食べてくれて、嬉しいよ」
「毎日こんな料理食ってるなんて、エンヤは幸せ者だな」
「そうだろうそうだろう!まぁスイは飯だけじゃなくて全部が最高なんだけどな!」
「ちょっと、恥ずかしいから!」
兄弟のバカップルぶりにニヨニヨしながら菓子を摘む。なんて名前かわからないけど、スイのお手製菓子は甘じょっぱくてめっちゃうまい。
「スイ、作り方俺にも教えて」
「うん、いいよ。落とすなら胃袋からだよ」
「ちょっとお二人さん、聞こえてますけど」
先日のおっぱいおしゃぶり事件から、クロノスの求愛行動はより激しさを増している。恋心を隠さなくなったクロノスは怖いものなしだ、子犬と男の顔を使い分けて迫ってくるからかわすのが大変でしょうがない。キスとお触りはほぼ諦めている、気持ちいいし可愛いからもういいかなって。
(一応一線は超えないようにギリかわせてはいるが)
どっちかというとクロノスがそこまで強く迫ってこないから至っていないだけとも言える。
(多分両思いになるまでは我慢、とか考えてんだろうな)
意外に純情な弟なのである。
俺はきっと本気でねだられたら拒否できない。こいつの望みはなんだって叶えてやりたい、俺の中でクロノスはそれくらい特別で大切だ。
「あ、そうだ。リヒトのところに変な人来てない?」
「変な人?」
どうやらこれが今日夫夫が訪ねてきた本当の理由のようだ。
「この前、家の近くに怪しい奴がいてな。スイが声かけられたんだ」
「怪しかったから幻影魔術で撒いたんだけど、研究所関係の人間だったら困るなって思って」
「俺らのところに来たならリヒトのとこにも来たんじゃねぇかって思ってな、そしたら不審者じゃなくてクロノスがいたんだけどな」
スイに、声をかけただと?
「あ、それそれ俺んとこにも来たんだよ。魔術で捕縛したんだけど煙幕使って逃げられた。クロノスがいるのは知ってたし大丈夫だろうとは思ってたけど、報告がてら一回帰ってきたってとこ」
チリにも、刺客が?
「フウラとライラが国を出てて良かった。街でも高位魔術の家の子供が誘拐される事件が続いてるらしいし、これはかなり信憑性出てきたね」
ふざけんじゃねぇぞ。
「クロノス」
「はい!」
「敵の拠点は掴めてるのか?」
「いや、それはまだ……、ってかリヒト?」
「チリ、奴らがよく出る出没ポイントは?」
「はい!いくつかあるけど、えっと、これはもしかして?」
俺たちのハッピーエンドを邪魔するなら、そんな運命何度でもぶっこわしてやるよ。
「ぶっ潰す」
((((ブチギレてる~~~~~(兄弟心の声)))))
俺の兄弟に手ェ出して、無事でいられると思うなよ?
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