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第21話
「Everybody say! そ~ら!」
「……なんでコール&レスポンス方式なん?」
「Say! そ~ら!」
「……そ~ら」
「声ちっちゃい! Say! そ~ら!」
「そ~ら!」
「そ~ら!」
「そ~ら!!」
「Excellent!!」
「いや、無駄に発音ネイティブやな」
空が満足げにパンパンと手を叩いている。ほんま、ふざけすぎてええ加減にせんと、子供らが起きてくるで。
「蜷川、もう結構酔うてんな?」
「は? 酔ってへんし。……って、空!!」
「ふふっ、ごめん。空、やな」
少し照れながら名前を呼ぶと、さっきまで勢いづいていた空も急に恥ずかしそうに顔を赤くして、缶に残っていたビールを一気に飲み干した。
「……あ、元宮さん。明日、写真撮りません?」
「え?」
急な提案に、ビールを置く手が止まる。空が指差したのは、リビングの壁にあるコルクボードだった。新がいた時に話したけど、今年撮ってないのなんで知ってんの?
「これ、結構前の写真ですよね? 奥さんがいるし、洸くんなんてほんま赤ちゃんじゃないですか」
「……そうやな。それは二年前ので、去年のやつはいつの間にか無くなっててん」
「……押しピンの穴が一つしかないってことは、今年はまだ撮ってないんでしょ?」
なんなんその探偵みたいな言い方。思わず吹き出してしもたやん。
「ご名答。すごいな、空の推理力」
「……でしょ?」
ん? 空、ちょっと耳まで赤くなってないか。大分お酒も回ってきたみたいやな。一週間の仕事の疲れもあるやろうし、明日もきっと朝から子供たちに振り回される。はよ寝てもらわんとな。
「……俺、今ちょっと髪伸びてきてるし、薄目で見たら八割方お母さんですよ」
「ふふっ、わかった。じゃあ、ピンチヒッター空くんでお願いしよかな?」
「はい! もちろんです! やったー!!」
「ふふっ、やっぱ空はかわいいなぁ」
ニヤつきながらビールを喉に流し込んだ瞬間、ハッと心臓が冷たくなった。
……俺、今、口に出してなんて言うた!?
あかんやん! 今まで散々心の中で留めて、言うのを我慢してきたのに。お酒の力ってほんまに怖すぎる。
「ごめん! 今のはその、子供たちと同じ感じのかわいいやから! そんな下心とかあるやつじゃないからな? 変な感情とかないから!!」
慌てて手を振って弁解する俺を見て、空は一瞬目を丸くしたあと、ふっと柔らかく微笑んだ。
「……大丈夫です、わかってますよ。……義理の長男として、ですよね?」
そう言いながらも、空もどこか耳の赤さが引かないまま、二人してアタフタと視線を泳がせている。もう、ほんま俺、いつまでも情けない先輩のままやわ。
「えっと……! 俺、今日は下のソファで寝るから。空は二階のベッド使い!」
「はい! あ……明日、写真撮るのと、あと『伝説の剣』を探すのも忘れないでくださいね!」
さっきまでの気恥ずかしい空気をガラリと変えるように、空が茶目っ気たっぷりに笑って二階へと上がっていく。
そうや、伝説の剣。さっき二人の部屋に入った時も気づかんかったし、俺の寝室にも無かったよな。
まぁ、隠し場所は明日の楽しみにしとこか。
トクトクと、まだ少しうるさい胸の音を聞きながら、俺は静かになったリビングの電気を消した。
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