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18.もう一度、貴方の隣で-4

 店を出たあと、セレンは受け取った代金を再び数え、グランディオまでに必要な食費と宿代を先に取り分けた。  残った額を見れば、徒歩で十日以上かけるより、馬を手に入れた方が早い。グランディオで乗馬を習っていなければ考えもしなかった方法だった。  町の外れには、旅人や商人へ馬を売る店があった。厩には何頭もの馬が繋がれており、セレンは値札と馬の様子を見比べながら、一頭ずつ確かめていく。店主に話しかけられた時、セレンは口を開いた。 「北まで行ける馬を探しています」 「どの辺まで?」 「グランディオです」 「そりゃ遠いな。それなら、速さより丈夫なやつがいい」  店主に案内されて厩の奥へ進むと、白い馬がこちらを見ていた。真っ白というより、陽の当たるところでは淡く銀色を帯びて見える毛並みをしている。 「この馬は?」 「若くはないが、おとなしいし長旅には向いてる。街道を走るなら十分だ」  セレンが手を伸ばすと、白馬は逃げることもなく掌の匂いを嗅ぎ、そのまま鼻先を押しつけてきた。黒い瞳は優しく、その眼差しはあたたかい。セレンが馬の首を撫でると、白馬は呼応するようにぶるると鳴いた。 「この馬にします。……この子がいいです」  やがて顔を上げて店主に向き直ると、セレンはその馬を指差した。 「早いな。……でも、アンタはもうそいつに選ばれたみたいだな」  値段を聞き、セレンはもう一度残りの旅費を計算した。鞍や最低限の馬具を含めても、食事と宿に必要な分は残る。馬の餌代まで考えれば余裕があるとは言えないが、歩き続けるより早くグランディオへ着ける。  代金を払い、店主から手綱を受け取る。自分で馬を買うことになるとは、ルミナリアを出た時には考えてもいなかった。 「名前は?」 「名前、ですか?」 「呼ぶ時に困るだろ。まだ決まってないから、名前つけてやんな」  セレンは白馬を見る。馬もこちらを見返していた。これから北まで一緒に行くのなら、いつまでも「この馬」と呼ぶのもおかしい。 「そうですね……では、アルバで」 「アルバか。いい名前じゃないか」  セレンは確かめるように、もう一度その名を呼んだ。 「アルバ」  白馬の耳がこちらへ向く。 「これから、よろしくお願いします」  店主が「馬にまで丁寧だな」と言ったが、他にどう話しかければいいのかわからなかった。  鞍へ荷物を括りつけ、鐙へ足を掛ける。グランディオで初めてディノに乗った時はリヴァルの手を借りて、彼に支えられていた。今は教えられた通りに手綱を取り、自分一人で馬上へ上がれる。  短くなった髪が、風で舞い上がる。以前なら背中を流れていた髪はもうなく、首筋を撫でた風がそのまま襟の中へ入り込んでくる。まだ慣れない感覚に襟元を整え首を傾けると、アルバが待ちかねたように蹄を鳴らした。 「行きましょうか。……グランディオへお願いします、アルバ」  白い馬が街道を駆け出す。風を受けながら、セレンは北を見据えた。  この先に、リヴァルがいる。

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