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19.あの日の続きを-4
「……ルミナリアへ帰れば、貴方への気持ちも落ち着いて、諦めることができると思いました」
セレンは俯きそうになるのを抑え、どうにか顔を上げた。
「でも、できませんでした。毎日、貴方のことを考えました。日に日に会いたいと思う気持ちは強くなって……そうして、城を飛び出しました」
微笑みを浮かべながらリヴァルを見つめると、彼は真っ直ぐな目でセレンを見ていた。誰からも目を向けられることのなかった自分を、彼の双眸だけは捉えて離さない。その目をたまらなく愛しいと思った瞬間、セレンの気持ちは思わず言葉に出ていた。
「愛しています、リヴァル様」
セレンはそっと唇を寄せ、重ねた。リヴァルは少し驚いたようにびくりと肩を揺らしたが、そっと目を閉じ、セレンの口付けを受け入れてくれた。最初は表面を合わせるだけだった口付けも、少しずつ深くなってゆく。
魔石灯の明かりが二人を柔らかく照らす中、二人は角度を変えて何度も唇を重ねた。離れていた時間を埋めるように、互いの存在を確かめる。
「リヴァル、さま」
ふっと唇が離れた拍子に名前を呼ぶと、リヴァルの目にじんわりと熱が滲んでいるのが見て取れた。呼応するように、リヴァルもまた「セレン」と名前を口にする。
「もう、嘘はないな」
「……はい」
念押しされ、セレンは頷いた。
「それならいい」
リヴァルの手がセレンの頬へ触れる。そのまま髪を撫でるように指を滑らせて、短くなった白灰色の髪を梳いた。
その感触に、セレンは以前のことを思い出した。
ミハイルが家族と話していたこと。そして、正室と二人の側室、それぞれのあいだに生まれた子供たちが、当たり前のように一緒に過ごしていたこと。
「……リヴァル様」
「なんだ」
「先日、ミハイル陛下のご家族とお会いしました。正室の方と、二人の側室の方と……お子様たちです」
セレンは少しだけ言葉を探した。
「皆様、とても仲がよろしいのですね」
「そうだな」
「ですから……少し考えたのです」
セレンはリヴァルの胸元に手を添えた。
「リヴァル様がこの先、誰と番おうと……誰と子を成そうと、私は、リヴァル様をお慕いしております……」
「……それを、俺に言うのか」
「はい」
「俺は、お前以外を選ぶつもりはない」
「……」
「だから、勝手に俺のために諦めるな。俺は、自分で決めたんだ。お前がいいと」
セレンはしばらくリヴァルを見つめ、それから小さく頷いた。
「……それなら、安心しました。私だけが、あなたを選んでいるのではないのですね」
リヴァルはなにも言わず、セレンを強く抱き寄せた。耳元で感じる吐息が、先ほどまでよりずっと熱い。
「セレン。もう一度、言ってくれ」
「……なにを、ですか」
「俺を好きだと」
セレンは少しだけ目を伏せ、それからリヴァルを見上げる。
「好きです。……愛しています、リヴァル様」
今度はリヴァルの方から唇が重なった。今まで空いてしまった時間を取り戻すような口付けだった。セレンもその背に腕を回し、今度は自分から唇を追いかける。
「……リヴァル様。もっと、近くにいてください」
その言葉に、リヴァルの腕がさらに強くなる。
「離れるつもりはない」
再び唇が重なる。
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