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✦︎19.あの日の続きを-5

 今度はより深く。ちゅ、くちゅ、と、かすかな水音が響く。リヴァルとセレンは角度を変えて何度も唇を重ね、睦み合う。時々荒々しさが混ざり始めた口付けに、セレンはだんだんと興奮を抑えきれなくなっていく。  不意に下肢に視線をやると、下穿きの下でリヴァルのそれは既に兆しを見せていた。布越しのそれを掌でなぞると、大きくて硬い感触が伝わってくる。目の前から「んん」とくぐもった低い声が返ってくる。その声を聞いたセレンもまた、ずく、と自身の下腹部が疼くのを感じた。  リヴァルもセレンの興奮に気付いたのか、彼の武骨な手がこちらへと伸びてくる。押し上げられた布地の先端がわずかに湿っていたのは、雨で濡れたせいではない。そこをリヴァルに触れられて、セレンの口から「あっ」とあえかな声が零れた。  お互いの体を触りながら、貪るように接吻を交わす。言葉にしないまでも伝わってくる互いの気持ちを舌先に包めながら、セレンはどちらともわからなくなった唾を飲み込んだ。  寝台に仰向けになると、大きな影がセレンを覆う。リヴァルの手が、セレンの下穿きを奪う。裸身を見られる恥ずかしさはあったけれど、身一つで彼と同じ気持ちを共有できるのが、なによりも嬉しかった。 「セレン。……俺も、お前を愛している」 「リヴァル様……ありがとうこざいます」  そう礼を告げた途端、口付けの雨が降ってくる。唇だけでなく、全身を余すところなく触れる勢いで、彼の愛を受け止める。彼の指が後孔に触れる。セレンは受け入れるように、足を広げた。 「んっ……」  リヴァルの指が入ってくる。思わず声が漏れた。リヴァルはセレンの様子を見ながら、セレンのいいところをまさぐる。我慢できなくて、セレンは息を荒くしたまま反応する。 「リヴァル様、私、もう……!」  出そう、と思った瞬間、リヴァルの指が抜けて行った。突如感じた寂しさと足のあいだを抜けていく涼しさにセレンは目を開け、腰を軽く揺らす。セレンは唇を噛み締め、続きをねだった。 「っ、リヴァル様……」  隠しきれなかった情欲を見せつけるように、艶やかな声で名前を呼ぶ。ややあって、リヴァルの怒張が入口に押し付けられる。 「平気か」 「はい……」 「そうか」  短い言葉のやり取りだった。次の瞬間、リヴァルのそれが中に入ってくる。大きくて硬くて、なにより熱い。セレンは歯を食いしばり、息をするので精一杯だった。 「あぁっ……!」  やがて、根元まで埋め込まれる。久しぶりに重ねた体に、手間取らせてしまったらどうしようと思ったが杞憂だった。リヴァルの熱が、そんな不安ごとすべて溶かしてくれる。  覚えている。この熱も、吐息も。彼を感じて、泣きそうになってしまったことも。忘れるわけがなかった。 「セレン……動くぞ」  リヴァルの低い声でそう囁かれ、セレンの下腹部にずきりと甘い疼きが走る。感じる間もなく、中にいたリヴァルが動きだす。奥深くで、繋がっている。 「あっ、あ、リヴァル様……!」  先に限界を迎えたのはセレンだった。リヴァルの太いモノで中を掻き回され、いいところを執拗に突かれてしまえば、セレンの体は絶頂に至るまでの糸口を簡単に見つけてしまう。こんなに品のない自分は初めてで、彼に嫌われないか不安になる。それでもリヴァルの注ぐ眼差しは、セレンのすべてを溶かしてしまった。 「あぁっ……!」  頭の奥がちかちかする。全身がびくびくと震える。リヴァルの肩に手を回し、ややあってセレンは白濁を吐き出した。以前より筋肉のついた自分の腹が、精液で濡れる。リヴァルが動きを止める。自分の喘鳴が聞こえる。リヴァルもまた、普段戦場で息を切らすことは珍しいのに、今日に限って息が少し乱れていた。  リヴァルの体がセレンの中から抜けていく。セレンはリヴァルへと背中を向けた。 「殿下……もっと……」  今しがたリヴァルの寵愛を受けていた秘部を晒し、セレンは気をやったばかりだというのに、まだ、もっと、と欲しがってしまう自分の貪欲さに呆れてしまう。それでも、もう遠慮しないと決めたのは自分だ。 「欲しいです……」  そう言うと、背後でリヴァルが喉を鳴らした。 「セレン」  名前を呼ばれ、もう一度、リヴァルがセレンの中へ入ってくる。硬さを保ったままのそれに後ろから感じるところを抉られて、セレンはたまらず甘い声を上げた。少しずつ抽迭が速くなる。肉を打つ音が、祖国から離れた狭い宿に響く。殿下とこんなはしたないことをして、愛し合っている。そう意識するたびに、セレンの身体はより一層熱を持った。  セレンはうなじへと手を伸ばす。長い髪のあったところを払おうとして指先が宙を掻く。やがて、うなじを守っていた首輪に手を添える。金具の噛み合いで細工師とセレンしか外し方の知らないそれを外すと、髪を切ったことですっきりしたうなじが露になる。リヴァルにはどう見えているのだろう。セレンは、喘ぎの合間に懇願する。 「リヴァル様……っ、私のうなじを、噛んでいただけませんか」  そう言うと、リヴァルは「ああ」とわかっていたように頷いた。  それは、番の証になる行為だった。  それでも、欲しいと思った。自分にはただの傷としてやがて癒えて消えるものだとしても、愛された記憶までは消えない。  ──だから。  リヴァルがセレンのうなじへと首を伸ばす。セレンの中を穿つ腰の動きはそのままに、顔の前に手が回される。リヴァルの手が喉へ触れる。うなじにリヴァルの吐息を感じたその瞬間、セレンの興奮はさらに強くなる。 「リヴァル様……リヴァルさまっ」  何度名前を呼んだだろう。しばらくして、自分のうなじを食い破る鋭い痛みがあった。 「──ッ」  じわ、とうなじがあたたかく濡れる感覚がする。鮮烈な痛みさえ甘美な喜びに感じで、セレンはリヴァルの腕の中で身体を震わせた。  ──リヴァル様。  心の中で、手繰り寄せるように何度も彼の名前を口にする。そうするうちに、セレンの意識は再び解放の入り口に立つ。同時にリヴァルの限界が近いこともわかった。腰を振る速度がますます速くなる。やがて、セレンの中で彼のものが膨れ上がる。ふっと短く息を詰めたリヴァルが最後に動きを止めると、どくどくと中に注ぎ込まれる熱を感じた。  視界が白く染まる。それでも彼の噛み跡を残したうなじの痛みだけは、セレンの中に残っていた。

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