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第17話
リアムはその後も俺に剣を指南してくれた。
俺は一生懸命やっているつもりでもリアムから見ると無茶苦茶、当てやすいそうだ。
「待て、身体能力の差を考えろ」
「そう大差ない。ヴォルフは初心者にありがちな”やってはいけないこと”をやっている。だから駄目なんだ」
リアムは打ち合いながら、いくつかのやってはいけないことを懇々(こんこん)と俺に説明しながら手ほどきしてくれた。
それらを習得すれば、いつの間にか日は暮れかけていた。
「ヴォルフ、貴方の身体能力は竜人の中でも突出して高い。それこそ古代種のように。おそらく貴方は山で狼達に育てられる前、無意識のうちに異世界渡りしてしまった古代種だ。瘢痕化の原因はその異世界渡りで竜丹(※初出部分で「竜胆」となっているため「竜丹」に統一)を限界まで使ったためだろう」
ルイも同じようなことを言っていたな。
「瘢痕は竜丹の表面が破壊されただけのものだ。ヴォルフの竜丹の本質に傷はない。意識的に何度も極限突破し、表面を破壊していけば竜腺はいずれ正常に再生する。そうだな……一週間後に闘技場で盛大に武闘会を開催させよう。そこでできる限り極限突破しろ。人間相手では無理だが、竜人達(あいつら)なら」
「いや、待て、そんな祭りのように楽しそうなもの。モルグはどうする?」
「あんなもの! ただの駆除だ! ルーティンで狩ればいい! それに、それなら……祭りのようなもの、しないでいいなら、貴方達の婚約披露宴も、別に、しなくて良かったじゃないか」
「それだとこうして俺とリアムが出会うこと(※「出会うことは」などの方が自然ですが原文のニュアンスに合わせて微修正)なかったが」
項垂れるリアムの肩を軽く叩こうとして、流石に馴れ馴れしいかと思い直し、袖を軽く、くいくいと引いた。
「…………! …………! な、な、な、なんだ!? 私は貴方に惚れんぞ!」
「知っている」
目元を真っ赤に染める神授の美貌は中々見ごたえがあるが。
「聞いてくれ。ルイは俺に課せられたモルグ討伐のノルマと自分の分、合わせて二人分、背負い込んでくれている。俺だけそんな楽しそうな祭りに参加できない」
竜人は戦闘狂だ。武闘会と聞けば、血が騒ぐ。祭りのようで楽しそうだと思ってしまう。俺もそうならルイもきっとそう思うだろう。
「なんで! グレイグ殿はそんなことを!」
「俺に怪我させないように」
「竜人には超回復力がある! 超、過回復か(※「過回復」より「回復」や「超回復」の意図か確認推奨。原文のままにするならこのままでも可)! ああ、そうか。あの男はヴォルフを閉じ込めて、そんなに自分だけのものにしたいか!」
ふわりと風が吹いて、腰に腕が回された。ほのかな優しい香り。ああ、この香りは、ルイ。
腕の持ち主を見上げれば、端麗な美貌に、鋭くリアムを射抜く琥珀色の瞳。
「ヴォルフにはその超回復力がない。怪我すれば人間と同じくらい回復するのに時間がかかる。それに閉じ込めようが、出て行こうが、ヴォルフは俺のものだ。フェルサン公爵家嫡男、リアム・ド・ヴレ殿」
リアムが俺と一緒にいた時と雰囲気ががらりと変わった。冷ややかで誰にも寄せ付けない繊細さを醸し出すと、目元を静かに伏せ、気品に溢れる仕草でルイに礼をした。
「そうとは露知らず、失礼致しました。グレイグ殿。私のことはどうぞヴレと」
神授の美貌を涼やかに佇むリアムとは対照的に(※「涼やかに」または「涼やかな佇まいのリアム」などにするとよりスムーズです)、ルイは端麗な美貌に荒ぶる熱い目でリアムを一瞥すると、俺の衣装の襟を緩め、鎖骨辺りを剥き出しにすると、指先で撫でた。
「二人で打ち合いをしていたのか?」
リアムに打たれたところだ。リアムが絶望的な表情を浮かべているところから見て、おそらく痣になっているんだろう。
「大丈夫だ。確かに怪我の治りは人間並みだが、生まれつき丈夫にできている」
普通の人間に竜人と打ち合いになんて不可能だろうなと今さらながら思う。あれは大岩が落ちてくるような衝撃だった。人間なら途中で死んでいる。
ルイが俺の身体を壊れもののようにそっと抱え上げた。
「治療しよう。ヴレ殿、今日はここで失礼させた(※「失礼させていただく」の誤り)いただく」
「グレイグ殿! 話が」
「……後で公式に伺おう」
リアムの涼やかで麗しい貌が少し引きつった。
竜人はその気になれば数キロ先で針の落ちる音さえ聞く。
ルイはまさか、俺達の会話を盗み聞きしていたのか?
ルイはいつもこんなに早く帰ってこない。
リアムは先程、俺のことを”運命の番”と呼んでいた。聞かれたか? もしかするとルイは聞いていて、知らん顔しているのか?
そうだとしたらーーたまらなく、嬉しい。
ルイに抱え上げられたまま、ルイを見上げれば、ルイは切なげな表情で俺を見下ろしていた。
ルイの胸に身体をそっと預け、幸福な気持ちそのままで、ルイの胸に頬を擦り付ける。ふわふわと優しい香りに包まれ、ルイが俺の頬にそっと唇を落とした。
リアムが一礼して颯爽と去って行く姿と、薄桃色の野花が風で飛んだのか、ルイのつま先で踏みにじられているのが視界の隅に映った。
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