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『先生の陥没乳首が狙われているようです』五時限目③*
赤峰はぼんやりと蛍光灯を見上げていた。額に手を置くと、汗で髪の毛が貼り付いているのがわかった。
(なんだったんだ? 今のは)
「太陽さん、大丈夫?」
「え? ……ああ」
碧に支えられて体を起こす。碧はまだ腕まくりをしていた。
「あれ? さっき出てきたと思ったのに、また隠れちゃったの?」
言われて胸元を見下ろすと、薄い皮膚の中心には、真横に切れ込みがあるだけだった。
(『陥没』って言うだけあって、出てきても元に戻るのか)
「はっ」
碧が短く息を吐き、前髪を掻き上げる。口元には、悪童のような笑みが浮かんでいた。
碧の長い指が、赤峰の顎に触れる。
「乳首まで小悪魔みたいだね。そうやって俺を煽ってるの?」
妖艶な仕種に、頬が熱くなる。
次の瞬間、碧に腰を引き寄せられ、薄い皮膚ごと埋まった乳首を甘噛みされてしまう。
「おいっ! まっ……っ! ……は、ああっ……」
またしても強く吸われてしまい、思わず声が漏れる。
「声、まずいでしょ」
「そ……ん……いわれ……は……あんっ……んっ、んんぅ……」
碧にキスで口をふさがれ、赤峰の喘ぎが吸い込まれる。
「……っ……は……ん……」
リップ音と息継ぎの音だけが室内に響く。碧は赤峰の後頭部を固定し、何度も角度を変えて上唇と下唇を交互に愛でた。余った手でもう一方の乳輪をきゅっと摘まみ、ぐりぐりと乳首を押し出すことも忘れなかった。
「はあ……あ……」
長いキスが終わり、赤峰はほてった顔で碧を見上げる。
「ほら、見て。太陽さんの乳首、ちゃんと出てきたよ」
碧の唇は艶を帯び、頬もほんのりと赤く染まっていた。
「本当だ」
ピンクの乳輪の中心に、まさしく粒とでもいうべき突起があった。外気にさらされたことがないせいか、赤く色付いている。
「よかったね。仮性だよ」
(そういえば、そんな話だった)
もとはと言えば、赤峰の陥没乳首が仮性か真性かを確かめるために、碧に胸をいじくり回されたのだ。
碧が口の端に笑みを浮かべて、赤峰の乳首を指ではじいた。
「っ……」
むずがゆいような感覚が胸元から広がり、また体温が上がってしまう。
碧が見惚れるような笑みを浮かべる。
「太陽さんの乳首、ベリーみたいでかわいい」
「もういいだろ!」
赤峰は恥ずかしくなって、慌ててワイシャツのボタンを閉じようとする。
「俺はむずむずしてるだけ」と、赤峰は自分に言い聞かせた。
「ちょっと待って。清潔にしないと」
碧は立ち上がって、机の上に置いた学生服のポケットから、何かを取り出して戻ってきた。そのまま赤峰の脚の間に膝を入れ、王子のようにひざまずく。
碧が手に持っていたのは、携帯用のウェットティッシュだった。一枚取り出し、赤く腫れた乳首にあてがう。
「……っ……」
冷たい感触に、熱い吐息が漏れ出る。
「これからは、俺が消毒してあげるからね」
ふたつの蕾を拭き終えた碧が、ぽつりと言う。
(これから? またこんなことされるのか?)
そう思った直後だった。
廊下から扉がノックされ、赤峰は小さく悲鳴を上げる。複数の生徒の声が聞こえた。
(しまった! 鍵をかけ忘れた!)
曇りガラスに生徒たちのシルエットが映っている。
自分のうかつさを呪いたい。なさけなくて涙が出そうだ。
「赤峰先生? いないんですか?」
「職員室にいないんだから、ここにいるはずなんだけどな。あれ? 鍵は開いてるぞ」
赤峰は、さあっと血の気が引いていくのを感じた。唇がわなわなと震え出す。握り締めた拳は汗ばんでいた。心臓はばくばくと脈動し、極度の緊張で口から飛び出しそうだ。うまく息が吸えず、浅い呼吸ばかりを繰り返す。
今見付かったら、教師生命が終わってしまう!
赤峰を救ってくれたのは、原因を作った碧だった。
「戸棚の陰に隠れよう。ドアからは見えないから。俺に掴まって」
「え? わっ」
碧は軽々と赤峰を抱え上げ、姫抱っこの状態で戸棚の後ろまで運んでくれた。
「今なんか聞こえなかった?」
赤峰は慌てて両手で自分の口をふさいだ。
「赤峰先生? いますかー?」
ドアが開かれたのと、赤峰を抱えた碧が戸棚の後ろに滑り込んだのは、ほぼ同時だった。
(危なかった……!)
なんとか生徒に見付からずにすんだが、赤峰のピンチはまだ続いている。
「間一髪だったね」
碧が囁くように言う。碧は腰を低くして、赤峰を床に下ろしてくれた。
壁と戸棚の間のわずかな隙間に、吸われて敏感になった乳首を露出させたまま、トップモデルの碧と抱き合った状態で声を潜めて隠れていなければならないのだ。
下半身に違和感を覚え、赤峰はなんとか首を動かした。
(おい! 嘘だろ?)
赤峰は大きな目を見開いて叫びたくなった。
乳首をいじられたせいで、赤峰の欲望が反応しているのだ。
(背中合わせだったらよかったのに!)
密着しているため、体の向きを変えることもできない。勃起していることを気付かれたくなくて身をよじるが、剥き出しの乳首が、碧のワイシャツに擦れて甘い吐息が漏れる。
「は……あっ……」
やはり、今の今まで隠れていた乳首は、ことさらに感じやすいようだ。
頭上から忍び笑いが聞こえた気がした。嫌な予感がする。碧がよからぬことをたくらんでいるのか。
案の定、碧は尖った胸の粒に指を伸ばしてきた。
「おまえ……なんて、ことっ……」
小声で抗議するも、碧は耳元で囁く。
「いいの? 声、聞かれちゃうよ」
指の腹で乳首をひねられ、腰がびくりと震える。
「っ! ……ふぁ……」
赤峰は声を押し殺して碧の胸に顔をうずめる。
「んふ、んっ……」
香水でも付けているのか、碧からは花の香りのようないい匂いがした。碧の匂いが肺いっぱいに広がり、酔っぱらったみたいに頭がくらくらする。
何を血迷ったのか、碧が赤峰の腰の辺りをまさぐり始めた。
「おいっ!」
声を押し殺して抗議するも、片手でベルトのバックルを外されてしまった。
赤峰の肘が壁に当たり、大きな音が響く。
「やっぱり音したよな。ん? ソファーになんかあるぞ。ティッシュ?」
一瞬で背筋が凍り付いた。碧に乳首を消毒されたティッシュを、生徒たちに見られてしまったのだ。極度の緊張のため、心拍数が跳ね上がる。赤峰の視線の先には、情欲に濡れた碧の瞳があった。
こんな時だというのに、別の意味で胸がドキドキしてしまう。
「机の上にあるのって、誰かの学生服じゃね? それに、椅子の上に先生のジャケットとネクタイもあるし」
生徒たちはしばらく沈黙した。
「ティッシュと服が置いてあるのって、なんか意味深……」
碧の右手が、赤峰のスラックスの中に侵入する。
「ひぃっ! ……っ! ……」
勃起した小振りなペニスを握られ、思わず悲鳴を上げる。
(本当に、何を考えているんだ……? 碧……)
「馬鹿なこと言うなよ。あのティッシュがガビガビだったとしたら、マジでシャレにならねえって。ぽかぽか陽気だし、食後の散歩でも行ったんじゃねえの?」
すかさず碧がキスで赤峰の口をふさいだ。
「んんっ……ふ……」
声を吸収するように、激しく唇を吸われ、亀頭から先走りが滲み出ているのがわかった。
「……ぅ……ぁ……」
ペニスの根元を握り込まれ、赤峰の腰がびくりと震える。びんびんに熟れた胸の果実は、碧の掌に弄 ばれている。
息継ぎのため、唇が離れると、碧の熱を帯びた視線が赤峰を射抜いた。
「いないんなら仕方ない。放課後でいいや」
ドアが閉まり、足音が遠ざかっていく。
緊張の糸が途切れ、赤峰は脱力して碧の胸板に汗まみれになった半裸の体を預けた。
赤峰の剥き出しの胸が上下する。ペニスはなおも、碧に握られたままだった。
碧が愛おしげに、赤峰の額を撫でる。
「意地悪して、ごめん」
頭頂部にキスをされ、優しく抱き締めてくれた。赤峰は力尽きて、されるままになっている。もはや抵抗することも、小言を言うこともできなかった。
「今、イかせてあげるね」
碧がおもむろに手を放す。
「あっ! ……っ……あぁぁぁぁぁぁっ!」
びくびくと赤峰の全身が痙攣する。じらされた分だけ、快感もひとしおだった。いつもより何倍も気持ちのいい射精が長く続き、永遠に終わらないのではないかと思えた。
(さっきの生徒たちが言ってた通りだ。外はぽかぽか陽気なのに、カーテンで閉め切って、こんなところに隠れて、俺は何をやっているんだろう)
碧の腕に抱かれながら、赤峰は思う。
(自分が、泥沼に嵌まっていくのがわかる。底なしの沼の中で溺れ、もがけばもがくほど、俺は身動きができなくなる)
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