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『先生の陥没乳首が狙われているようです』十時限目①*
(ん……どこだ、ここは?)
まどろみから目を覚ますと、赤峰は薄暗くてほこりっぽい場所にいた。
「なっ……なんだ?」
両腕が動かない。指先だけはかろうじて動かせるが、手首から先は固定されているようだ。どうやら、後ろ手にテープのようなもので前腕部をぐるぐる巻きにされているらしい。
「誰か! 誰かいないか!」
赤峰は黒髪ウェーブのロングヘアを振り乱して大声を出す。プロによるメイクアップを施された顔には、恐怖が浮かんでいた。
「いっ!」
拳が硬いものに当たった。おそらく壁だろうと、赤峰は推測する。目が慣れてくると、飛び箱やバレーボールで用いる支柱が見えた。どうやらここは体育倉庫のようだ。ほこりっぽい様子から、今はあまり使われていない第二体育館だとわかる。文化祭初日の今日は、第二体育館で催し物は予定されていない。
「……あ、っ……!」
下肢に違和感を覚え、赤峰は小さくうめく。
「ひいっ! ……あ、ああっ……」
自身を見下ろし、あまりにもひどい状態に悲鳴を上げた。
スカートが捲り上げられ、下肢が露わになっていたのだ。赤峰の剥き出しのペニスは、既に天を衝いていた。
それだけではない。脚をM字に大きく開いた状態で、足首と太腿が黒いビニールテープを幾重にも巻かれて固定されていた。特注したはずの下着は取り去られ、あろうことか勃起したペニスの根元に、血のように赤いリボンが蝶結びにされていたのだ。
「は……あっ、ああっ! ……やぁ……」
熱い息が喉を焦がす。息をするたびに、体の奥が燃え立つようだ。体中が熱くてたまらない。
(……なんなんだ? いったい何がどうなってる?)
頭が、混乱する。なぜ自分が、こんなところで拘束されているのかわからない。
「はあっ! やあああっ……」
わずかに身をよじるだけで、敏感になった乳輪が生地に擦れて甘い疼きが起こる。まるで全身が性感帯になってしまったようだ。ペニスをせき止められ、溜まりに溜まった熱を放出することは叶わない。澱 のように蓄積され、気が狂ってしまいそうだ。
(おかしい……こんなに、感じるなんて)
この感じ方は異常だ。どうやら、何者かに薬を盛られているらしい。
(いったい、誰が……? どうして、こんなことになったんだ?)
赤峰は昂った体をなんとかやり過ごしながら、必死に思考を働かせる。
(海鋒……。そうだ、俺は、海鋒に呼ばれて……)
プロによって仕上げられた赤峰の白雪姫は、生徒たちに絶賛された。碧が見たら、どんな反応をするだろうと気になったが、碧は仕事のため遅刻すると連絡があった。教室の中で給仕するだけではもったいないという話になり、赤峰は宣伝担当になった。
いい年をしてコスプレして人前に出るのは正直恥ずかしかったが、こうなったらもう開き直るしかない。せめて堂々としていようと、赤峰は自分を奮い立たせた。
コスプレ喫茶の宣伝のため、プラカードを持って廊下を歩いていると、普段通りのスーツ姿の海鋒が、血相を変えて追い付いてきた。
「どうしたんだ? そんなに慌てて」
「第二体育館の倉庫に、迷子の女の子がいるんだ。俺が呼んでも怯えて出て来ないから、太陽に頼んでいいか」
「わかった。すぐに行く」
赤峰はプラカードを海鋒に預けて、急ぎ第二体育館に隣接する倉庫に向かった。
体育倉庫のドアは開け放たれていた。辺りは静まり返っていて、人の気配は感じられない。倉庫に足を踏み入れる前に、赤峰はふと疑問に思った。
違和感を覚えたのは、体育倉庫の鍵が開いていることだ。第二体育館の使用予定はないはずだ。体育館と倉庫の鍵は職員室にある。学校関係者の誰か――職員室に出入りしても怪しまれない誰か――が、故意に鍵を開けたとしか思えない。
一陣の風が起こり、木々のざわめきが、赤峰の胸をさわがせる。
今日は一般開放日で、外部からの来訪者も多い。女の子が校内にいてもおかしくはないが、関係者以外立ち入り禁止で、人けのない奥まった場所にやってくるだろうか。かくれんぼでもしていたのなら話は別だが、そんな話は聞いていない。
誰かが、赤峰を陥れようとしている。そんな可能性が頭をよぎった。
(まさか、海鋒が……?)
赤峰は頭を振って、自分の考えを否定した。
(なんで海鋒が、俺に罠をしかけるんだ? 馬鹿馬鹿しい)
そういえば、女の子の名前を聞いていなかった。海鋒は「俺が呼んでも怯えて出て来ない」と言っていたから、名前はわかっているのだろう。
海鋒に連絡しようと、ポケットのスマホに手を伸ばしたその時だった。背後から鼻と口をふさがれ、赤峰は意識を失ったのだ。
「気が付いたようだな」
赤峰の目と鼻の先に、スーツ姿の海鋒が立っていた。
「海鋒! おまえ、なんで……!」
海鋒は嘲りと情欲の入り交じった眼差しで、赤峰を見据えていた。
「意識がないうちに凌辱してもよかったんだが、それじゃあおまえがかわいそうだから、目が覚めるまで待ってやったんだ」
(……凌辱? 目が覚めるまで待った? ……いったい海鋒は、なんの話をしているんだ?)
媚薬のせいか、高熱に侵されたように頭が回らない。自由を奪われ、性器をさらされていても、赤峰には、自分の身に危険が迫っていることが理解できなかった。拘束され、生々しい言葉をかけられても、学生時代からの友人である海鋒への信頼を、捨て切ることができない。
海鋒はしゃがみ込んで、赤峰と目線を合わせる。赤峰をじっと見詰めたまま、人差し指で赤峰の内腿をなぞっていく。
「ふぎゃっ! ……っぅ……」
膨れ上がった両方の袋を弾かれ、赤峰は痛みと快感に身をくねらせる。
熱い吐息が喉を焦がし、顔がほてってどうしようもない。額からは絶えず汗が流れていた。
「いい眺めだな。綺麗だよ、太陽」
不意に襟首を掴まれ、強い力で引っ張られる。衣装が音を立てて破られ、赤峰の裸体が露わになった。陥没乳首も丸見えだ。
「おまえ……せっかく特注したのに!」
海鋒の哄笑が体育倉庫に響き渡った。
海鋒の笑いはなかなか治まらない。赤峰は呆気に取られて、海鋒を見詰める。
「海鋒?」
海鋒の鋭い視線が赤峰を射抜く。海鋒はそのまま体重をかけて赤峰を押し倒した。
「いっ!」
後ろ手に縛られた両腕が床に押し付けられ、赤峰はうめいた。太腿と足首を固定されているため、ひっくり返ったカエルのような体勢になる。意図せず、露出した秘所を見せつける格好になってしまった。
海鋒にぶつけるように唇を奪われる。
「んんっ……ふ、はあっ……」
舌に口腔を侵され、思うさまに蹂躙される。海鋒の両手は、擦れて敏感になった乳輪を摘まんでぐりぐりといじくり回している。
「あ、ああっ……はあっ、あああっ……! いっ!」
いきり立ったペニスに、硬いものが押し付けられている。布越しに感じる海鋒のペニスだとわかった時、赤峰は初めて恐怖に震えた。
「やっとわかったようだな。そうだよ。おまえは今から、俺に犯されるんだ」
そう言うやいなや、海鋒は赤峰の右胸に顔を近付け、下品な音を立てながら執拗に吸い上げたのだ。
「ひっ……あっ、ああっ! ……」
痛いくらいに乳首を吸われ、快感がダイレクトに腰を直撃する。
「はあ……あぁ……」
肩で息をしていると、目尻に溜まった涙を海鋒に舌ですくわれた。
「太陽。おまえが望月に乳首を吸われたと聞いた時、俺は、嫉妬で脳の血管がぶち切れるかと思ったよ」
海鋒は口の端に意地の悪い笑みを浮かべる。
「だから、望月がやっていないことを、俺にためさせてくれ」
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