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『先生の陥没乳首が狙われているようです』十時限目③*

 ドアが閉まった途端、甘い香りに包まれた気がした。 (ああ、碧の匂いだ)  頭がぼうっとする。海鋒に盛られた媚薬は、とうに全身に回っているだろう。  碧がしゃがみ込んで、赤峰の顔を心配そうに覗き込んでくる。 「太陽さん。大丈夫?」  目の前にいる碧のことしか、考えられなくなる。 「碧、いつ来たんだ?」  碧が赤峰の体を助け起こしてくれる。 「……っ!」  背中や太腿に触れられただけで、電流のような快感が迸る。快楽の行き先は、未だ(いまし)められたままの、小振りなペニスだった。 「ちょうど学校に着いた時、海鋒先生が第二体育館のほうに歩いて行くのを見たんだ。そしたら、太陽さんもいるのが見えて」 「……え?」  赤峰は潤んだ瞳で碧を見詰める。体育倉庫に入る前から、碧に見られていたというのか。  碧は無言で頷く。 「すぐに太陽さんを助けることもできたんだけど、それじゃあ、海鋒先生を一時的に黙らせるだけだから、根本的な解決にはならないと思ったんだ。海鋒先生の弱みを握るには、ポルノ写真を撮るぐらいしか思いつかなくて。……すぐ助けなくて、ごめん」  碧は苦しげに眉根を寄せながら、赤峰の体を優しく抱き寄せた。 「……っ!」  込み上げてくるのは、感動ではなく快感だ。意中の碧に抱き締められただけで、心臓が脈動し、末端の血流がよくなる。縛られたペニスからは先走りが迸り、もう限界だった。 「太陽さん?」  潤んだ視界の中心に、碧の綺麗な顔がある。ハシバミ色の瞳で見詰められるだけで、余計に体温が上昇する。 (視覚からも、興奮させる気か!)  赤峰は必死に呼吸を落ち着かせながら、充血した瞳で訴えた。  碧の指先が竿に触れた瞬間、電撃を食らったような性感が脳天から爪先まで駆け抜けた。 「ひぃっ! や……あああああああっ!」  赤峰は拘束された肢体を痙攣させ、快感に震える。きつく縛られているはずの亀頭から、びゅっ、びゅっ、と白濁が迸った。 「……太陽さん」  碧の喉笛が、赤峰の頭上で上下する。  赤峰は肩で息をしながら、恥を忍んで事情を打ち明けた。 「じ……実は、媚薬的なものを飲まされたらしくて……」  碧は納得したようだ。 「あー、口移しで水と一緒に飲まされてんの見た」 「口移しぃー?」  新たな事実に、赤峰は驚いてのけぞった。動いた拍子に碧のワイシャツに乳首が擦れてしまい、小刻みに震えながら身悶える。 「つらい? リボン、先にほどこうか?」  碧の指先がリボンに触れる。微細な刺激にも感じてしまい、赤峰は腰をびくりと震わせた。このままでは、海鋒に盛られた媚薬のせいで、快楽に流されてしまう! 「待てっ……待ってくれ!」  碧はリボンを摘まんだまま、不思議そうに眼をパチクリさせる。 (いちいちかわいいなあ! もう!) 「だって、このままじゃつらいでしょ?」  赤峰は歯を食い縛って、快楽に流されそうな自分と闘っていた。海鋒に凌辱されかけた時、身を()って思い知った後悔を、実行に移す時が来たのだ。 「今、ほどかれたら、きっと気持ちよすぎて、なし崩し的に流れで付き合うことになると思うんだ」  碧の長い指が、リボンから離れる。赤峰はとりあえずほっとした。  碧は心底わからないといった感じで、首をかしげている。 「なし崩し的に流れで付き合うことになったら、何がいけないの? えっと、両想いだよね? 太陽さん、さっき、『俺に触っていいのは碧だけだ』って、言ってたもんね」  顔が一気に熱くなった。 (やっぱり聞いてたのか!)  面と向かって言われると恥ずかしい。 「確かに俺たちは両想いなのかもしれない。けど、俺は大人として、けじめをつけなきゃいけないんだよ」 (わかってくれたか?)  碧は一旦、宙空に目をやり、少し考えているようだった。やがて、見たこともない極上の笑みを浮かべる。 「わかった。どんな時でも、太陽さんは俺の先生だもんね。だったら、せめてこうさせて」  碧の香りがふわりと鼻腔をくすぐる。 「うわっ!」  赤峰の体が宙に浮く。胡坐をかいた碧の膝に乗せられ、耳を碧の胸に押し付けられる。 「お、おいっ! 俺は、ほぼ全裸なんだぞ」  不意打ちの抱擁に、胸のドキドキが止まらない。横向きに抱き締められているため、赤峰の股間は碧に触れていないが、剥き出しの臀部に、なんだか硬いものが当たっている気がして、落ち着かない。  碧の鼓動が聞こえ、赤峰は動きを止める。碧の脈拍も、普段より速くなっている。同じ鼓動を刻んでいる気がして、心が凪いでいく。  赤峰は目を閉じ、呟くように言う。 「香水付けてるのか? いい匂いだな」  少しの間を置いて、碧に囁かれる。 「何も付けてないんだけど。いい匂いって言ってくれて、嬉しい。太陽さんも、いい匂いするよ。甘くてエロエロで、俺を興奮させる香り」  ウイッグを付けた髪に鼻を押し付けられ、熱っぽく言われる。 「そうかよ!」 (これじゃあ、ただのいちゃついてるカップルじゃないか!)  このままではいつまで経っても終わらないと思い、赤峰は意を決して話し始める。 「今思えば、最初に親父から家庭教師の話を聞いた時から、碧に惹かれていたのかもしれない。一六〇センチにも満たないウイングスパイカーで、小さくても闘えるエースになりたいっていう気概を、応援したくなった。俺はリベロで、空中戦を捨てたことに後悔はないけど、エースへの憧れは、ずっと持っていたから」  目蓋の裏に、中学生の碧を思い浮かべる。 「出逢った頃の碧は、俺より小さくて、女の子みたいでかわいかった。ものすごくでかくなって、今は面影ないけど」  碧はあからさまに顔をしかめた。 「それって、今はかわいくないってこと?」  赤峰は顔が熱くなるのを感じた。両手が自由なら、灰緑色の髪をめちゃくちゃに撫で回したいところだ。 「相変わらず碧はかわいいよ! そういうところがたまんねえわ!」 「太陽さん! 大好き!」 「あっ、こらっ……!」  ぎゅーっと抱き締められ、後ろ手で縛られた腕が痛いくらいだ。股間からまたしても白濁が迸り、碧の剥き出しの腕に擦れて、乳首がぷっくりと膨らんでしまった。感じすぎて、胸がじんじんと痛む。 「おまえ……媚薬、盛られてるって、言ったろ……」  赤峰はぜいぜいと息を継ぎながら、涙目で碧を見上げた。(いまし)められたペニスは、はち切れんばかりに張り詰めている。 「ごめん。続きをどうぞ」  赤峰は気を取り直して正面を向く。膝に乗せられて背中を預けているほうが、返って話しやすいかもしれない。 「年のわりに落ち着いていて、大人みたいに笑う碧を、ほうっておけないと思った」  ――太陽さん、俺のこと好きでしょう。  不敵な笑みを浮かべた綺麗な顔が、昨日のことのように思い出される。  赤峰は間を置いて、身をよじって碧の顔を見上げる。口角が自然と上がった。 「三年前におまえに言われた通り、もう好きになってたのかもな」 「太陽さんっ……!」  碧の声が震えていた。 「ひあっ……」  腰を掴まれ、体の向きを変えられる。今度は正面から抱き締められ、剥き出しの亀頭が布越しに碧の股間を直撃し、得も言われぬ快感が背筋を這い上がる。 「あっ……ああっ! ……っ……! おまえ……わざと、かっ……!」  ペニスを(いまし)められているため、快感は蓄積されるばかりだ。イきたいのにイききれず、際限のない責め苦が赤峰を苦しめる。 「ま、待てっ……まだ途中なんだから、最後まで聞け!」  赤峰は歯を食い縛り、なんとか気力を振り絞った。  碧は腕の力を抜き、素直に赤峰を見詰めている。 (大型犬みたいにかわいいやつだな。しっぽの幻覚が見えそうだ) 「三年ぶりに碧に会って、正直に言うと、ときめいたんだ。碧がどんなふうに成長してるのか、テレビや雑誌を見て知ってはいたけど、実物は好みのど真ん中で、かっこよくて、笑顔は相変わらずかわいくて、キューピッドの矢が、心臓に刺さった」  碧は目をしばたたき、少し驚いた様子だった。 「言ってくれたら、即両想いになれたのに」  赤峰は一度目をつぶって、深呼吸した。 「俺が、前の学校を二ヶ月で依願退職したのは、とある女子生徒に迫られたことが原因なんだ」  碧の双眸が驚愕で見開かれる。 「ごめん! 俺、知らなくて……」  赤峰は頷くことで、碧の謝罪を制した。 「元はと言えば、俺が意地を張っていたのが悪かったんだ」  赤峰は遠い目をする。 (そのせいで海鋒に付け込まれて、こんな結果になってしまった。自分が情けない) 「俺は心底反省してるんだ。こんなことなら、『碧が生徒でいる間は付き合えない』って、はっきり言えばよかった」  碧は顔色を変える。動揺しているのが見て取れた。 「え……? 付き合えないの?」 「馬鹿。よく聞いとけよ。『生徒でいる間』って、言ったろ。俺は教師だから、生徒とは付き合えないんだ」  碧の顔に、だんだん喜色が浮かんできた。表情がころころ変わる碧を、愛おしいと感じる。 「おまえが好きだ。高校を卒業したら、俺の恋人になってくれ」  一世一代の告白をしたのに、碧は目を伏せて黙ってしまった。  赤峰は事態が呑み込めず、はらはらしながら碧を見詰める。  やがて、碧の口から信じられない言葉が放たれる。 「ごめん、太陽さん」  赤峰は驚きのあまり二の句が継げなかった。 (え? もしかして、俺、振られるの?)  碧は顔を伏せたまま、額に手を当てる。 「ビジュアルのインパクトが強すぎて、頭に入ってこないんだ。だって」  顔を上げた碧の額には、冷や汗が浮かんでいた。 「口紅は少し剥げちゃってるけど、それ以外はメイクもウイッグもほとんど崩れてないのに、せっかくのドレスは真っ二つに裂けて腰巻状態になってるし、後ろ手で縛られた上に、下着まで剥ぎ取られてM字開脚の状態で固定されてるし……それに」  碧の視線が赤峰の股間に注がれている。赤峰が自身を見下ろすと、赤いリボンで(いまし)められたペニスが腹につくほどに勃起していた。先端からはトロトロと先走りが滲み出し、リボンの色が変わるくらい濡れているのが、一目でわかる。 (か、完勃(かんだ)ち!)  恥ずかしすぎて、顔から湯気が出そうだ。 「ごめん! 俺、いろいろわきまえず!」  こんな状態ではムードもへったくれもない。  慌てふためく赤峰に、碧はふっと相好を崩した。  不意打ちの笑顔に、赤峰の心臓が悲鳴を上げる。血流がよくなりすぎて、ペニスが痛いくらいだ。 「今のは半分冗談だけど」 (え? 半分だけ?)  碧の表情が曇る。 「俺のほうこそ、ごめん。太陽さんの事情も知らずに、ぐいぐい迫ったりして。太陽さんは先生だから、誰かにばれたらまずいってことぐらい、わかってたつもりなんだけど、海鋒先生が狙ってるの、まるわかりだったから、引くに引けなくて」 「そんなにわかりやすかったか?」 「めちゃくちゃ雄オーラ出してたよ。俺のこと威嚇(いかく)しまくってたし」  赤峰には寝耳に水だった。 「全然気付かなかった」  碧は困ったように笑う。 「鈍いなあ。そこがかわいくもあるんだけど」 (あ、また……『好き』が積もった)  さっきから、胸のドキドキが止まらない。  碧は急に真面目な顔になった。 「実は俺、英語準備室で太陽さんが海鋒先生に告白されてる時、ドアの外で聞いてたんだ」  赤峰の背筋に悪寒が走った。碧の言葉を、うまく咀嚼(そしゃく)することができない。 「海鋒の告白を聞いてたって……ってことは、俺が碧を遠ざけるために、海鋒に協力してもらったの、知ってたって、ことなのか」  碧は無言で頷く。 「極限状態になった太陽さんが、海鋒先生を頼ったのはショックだったけど、俺がそこまで太陽さんを追い詰めてたってわかった。太陽さんのことが大好きなのに、俺が意志表示すればするほど、太陽さんを困らせるだけで、正直、どうしたらいいのか、わからなかったんだ」 「碧」  碧の綺麗な顔に、苦渋の色が浮かんでいた。 「もう太陽さんを困らせちゃいけないって思ったけど、海鋒先生の執着は異常だから、太陽さんに危害を加えるかもしれないって、思ったんだ。だから、せめて学校にいる間だけは、海鋒先生を見張ろうと思って」  胸の奥がじんとする。赤峰が碧を思って遠ざけようとしたように、碧も赤峰のことを思って、見守ってくれていたのだ。 「それで、海鋒の後をつけてきてくれたんだな」  碧の表情が少しだけ明るくなった。 「俺はまだ高校生だから、正攻法では海鋒先生に敵わないと思ったから、太陽さんを写さないように気を付けながら、隠れてシャッターチャンス狙ってたんだ」  写さないように気を付けていたといっても、喘ぎ声は耳に届いていたに違いない。嬌態も少なからず見られてしまっただろう。  碧の顔を見ていられず、赤峰は胸の辺りに目を逸らした。我知らず、声が震える。 「俺のこと、軽蔑するか」  顎を掴まれ、触れるだけのキスをされる。 「するわけないでしょ。太陽さんを危険にさらした、自分に腹が立つだけだよ。俺がもっと頼りがいのある男だったら、こんなことにはならなかったわけだし」  視線がぶつかる。 「えっ……!」  赤峰は場にそぐわない驚きの声を漏らした。 海鋒の時は何も思わなかったが、碧の唇がほのかに色付いている。ほとんど剥げてしまったようだが、わずかに残った口紅が、先程のキスで碧に移ったらしい。それがぞっとするほど似合っていて、見入ってしまう。 「太陽さん?」  碧に瞳を覗き込まれ、思わずのけぞる。 「うわっ」  手足が不自由なのを忘れていた。倒れそうになった体を碧に引き寄せられる。そのまま脚を持ち上げられ、姫抱っこのような格好になった。 (ちょっ……! この体勢、マジでやばいんじゃ……)  碧の深い瞳に見澄まされ、心拍数が跳ね上がる。 「太陽さん、大好き。俺のこと、受け入れてくれてありがとう」 「お、俺のほうこそ」  体がそっと床に下ろされる。 「太陽さん」  碧は赤峰の股の間に割って入り、両手を床について顔を近付けてきた。  少し開いていた唇を、熱い舌先でなぞられる。赤峰は拙いながらも、碧のキスに応えようとした。 「んんっ……ふ……ん……」  碧にも気持ちよくなってほしくて、自ら舌を絡め、甘露のような唾液を味わう。  赤いリボンで(いまし)められた剥き出しのペニスが、碧の股間に押し付けられる。 「は……ん、ふ……」  甘い陶酔が全身に広がり、いきり立った怒張が、快感を放出できずに震えている。 「あっ……! はあっ……」  碧の唇が離れていく。赤峰は名残惜しくて、荒い息を継ぎながら、熱のこもった視線を碧に送った。  碧は目元を朱に染めて、欲情した瞳で赤峰を一心不乱に見詰めている。碧から、男の色香が感じられた。 「どうしよう……太陽さん。俺、こんなの初めてだ。自制が利かない。太陽さんのこと、むちゃくちゃにしたくなる」  碧は赤峰の顔の横で、白くなるほど拳を握り締めている。碧の眉間には、深い皺が刻まれ、瞳は涙の膜で覆われていた。 (きっと、碧のこんな顔、他の誰も知らないんだろうな)  頭上に一点の曇りのない青空が開けた気がした。急に目の前がクリアになり、視界の中心に、光り輝く碧がいる。  赤峰は、ようやく自分がすべきことがわかったのだ。 (碧。エロくてかわいくて、最高にかっこいい――俺の、大好きな人)  赤峰は万感の思いで口を開く。 「いいんだよ。おまえはまだ十八歳だから、思い通りにならなくて、当たり前なんだ。焦って大人になる必要もないし、俺にいくらでも甘えればいい。俺は、先に生まれただけの教師だけど、碧の全部を、絶対に受け止めてやるから」  碧は何も言わずに、赤峰の肩口に顔を埋める。 「碧?」  どうしたのだろうと顔を覗き込もうとすると、碧の全身が小刻みに震え出す。  顔を上げた碧は、真っ赤になっていた。碧は捲し立てるように言う。 「ごめん、太陽さん! 『一生付いていきます』って言いたいところだけど、この状況で『俺にいくらでも甘えればいい』とか、『碧の全部を、絶対に受け止めてやる』とか言われたら、挿入オッケーなのかと思っちゃうよ!」  今度は赤峰が赤面する番だった。 「え! 全くそんなつもりなかったんだけど、そう取ってくれても構わないぞ! 俺はおまえになら、何をされてもいいと思ってるから!」  碧は赤峰を胸に抱き、「くぅ――っ!」とうなったかと思うと、赤峰の体を放り出した。 「うわっ」  碧は一旦赤峰から離れると、両腕を広げて深呼吸を始める。 「勢いでは抱かない。勢いで抱いちゃダメ」  ぶつぶつと独り言が聞こえてきた。  赤峰はというと、腕を縛られているため、腰を突き上げる体勢で仰向けに寝かされている。未だにリボンを巻かれた恥部をさらけ出す格好で放置されて、今更ながら羞恥が込み上げてきた。 (は……恥ずかしい!) 「お? なんだこれ」  碧の能天気な呟きが頭にがんがん響く。 「碧……するなら早くしてくれ!」  赤峰が耐え切れずに催促すると、碧は紙袋を片手に戻ってきた。碧の顔はほっとしているように見えた。 「海鋒先生が、いろいろ用意してたみたい」 「海鋒が?」  そういえば海鋒は、ローションを使っていた。  碧は赤峰の体を助け起こすと、満面の笑みを浮かべる。 「準備するから、少しだけ待ってて」 「お、おう」  眩しい笑顔で言われると、何も言えなくなってしまう。赤峰は三年前から、碧の笑顔に弱い。

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