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第2話
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次の日、学校帰りに湊に電話して、平屋にいるか確認して、少し遠回りしてから、湊のいる平屋にピアノを聴きに行った。次の日も、次の日も。そのうち湊が平屋にいるなら毎日のようにピアノを聴きに行くようになった。
もっとも、俺は時間を有効活用するために、湊のピアノを聴きながら宿題する毎日だったけど。
平屋に湊は住んでいなくて、湊が自由にピアノが弾けるようにと、湊の母親が湊のために借りたものらしく、湊には何やら事情がありそうだった。
湊は俺の前で目が見えているかのように振る舞った。だから俺は湊の目が見えないことに気付かないふりをした。
湊のピアノの音は優しかった。湊自身も同じように。
不思議なのは目の見えない湊がいつもいつもモデルか俳優のように隙のない髪型や服装をしていること。家族にスタイリストでもいるんだろうか。まさか運転手の他にスタイリストがついているとか言わないよな。
「超絶かっこいいよな、湊は。憧れる」
「……森野の前だからかっこつけてるだけだよ」
艶のある目元を朱に染める湊の姿を見ると、クラクラとめまいがして、言いようのない感情が胸に去来する。イケメンってすごいと思う。こう、うまくは言えないけど、脳をガンガンと揺さぶり、胸に突き刺してくるものが何かある。
湊と出会って、一年過ぎた頃。
湊と会っても会わなくても、湊のことを考えるだけで胸がじれったいような、むずむずするような、そわそわと落ち着かなくなる気持ちが生まれてきた。持て余すようになってくるのはそれからすぐのことだった。
どうしてこんな気持ちになるのか。この気持ちを沈めるには湊の存在が必要だと毎日の経験から知って──気が付いた。
俺、いつのまにか湊に恋してる、と。
それと同時に俺も湊も男だから、この恋が実らないことに気が付いて、不毛な恋をしてしまったなと、から笑いした。
可愛いなと思う女の子も気の合う女友達もいままでたくさんいた。受験中に告白されて付き合わなかったけど、それでもその女の子に付き合って欲しいと言われて、嬉しいと思ったこともある。
俺が真性の同性愛者じゃないのは自分自身でよく分かっていた。
でも俺が湊に恋をしたのは、太陽がいつも東から昇って西に沈むように、あまりにも自然なことだった。
今、思い返せば、広瀬さんの家と間違えて彼の平家に上がり込んだ時、湊の存在は俺の心に確実に”刺さってた”。
よく知りもしない相手の家に毎日遊びに行ってたのは、すでに”落ちてた”のかもしれない。
湊に恋したと気付いてから、ありきたりな表現として、世界中の色も、音も、香りも、何もかも鮮やかになった。心が躍って周りのみんなに「かっこよくなったね」と言われた。
湊に会うと胸が苦しくて息をすることさえ怪しくなるのに、湊に会いに行くのをやめられなかった。むしろ湊に会ってもっともっと胸の苦しみにもだえたいと思うようになっていた。
俺は湊への気持ちを隠して、湊の弾くピアノを平家で聴いた。
湊は目が見えない事を俺に隠して、平家でピアノを弾き続けた。
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