11 / 25

11 ローションガーゼとか二度とやるな※

 渋るオルフェウスの背中を押し、聖堂の一室を後にした。  帰りはよいよいの下り坂を抜け、行きの半分の時間で城まで戻ってくることができた。  何だかんだでうろうろしたため、気づけば日も暮れようとしている。 「それじゃ、俺はここで……」  無事城にオルフェウスを帰したことに安堵しつつ、別れを告げて去ろうとしたところで、肩をつかまれた。 「いやいや。それは違うでしょう、アイク」 「え?」  有無を言わさない力強さで、執務室のほうへ引き摺られていく俺。  途中、すれ違った兵士から不思議そうな顔をされた。おい、助けてくれ。  願いも虚しく、あっという間に見慣れた執務室である。扉を開けると、中から「やあ」と声が聞こえた。オルフェウスが机で書類をさばいている。 「おお……おお……! まじで二人いる」  扉に鍵を閉めるオルフェウスと、交互に見る。  まったく同じ顔と同じ声で動き回っているのが不思議だ。 「これ、記憶とかどうなってるんですか?」 「共有しているよ。そのときの景色や感情、感覚も全部ね」  そう喋ってくれたのは出迎えてくれたほうのオルフェウスだ。  馬鹿になってると言ってたけど、全然その素振りはないじゃないか。よかった、これならバレてないな……! 「じゃあアイク、しよっか」 「……へ?」  立ち上がったオルフェウスは、ぬぅっと手を伸ばすと俺の服を脱がせにかかってくる。 「は!?」 「あ、こら。暴れない」  後ろから来たほうのオルフェウスに羽交い締めにされる。2対1は卑怯だ! 「なになになに、突然なんですか!?」 「何って、今日の分」 「今日、の……いやっ、必要ですけど! 何も急にこんなとこでっ」 「向こうでヤッてもよかったけど、分身の私だけなんてずるいじゃないか。ねえ?」  手際よくボタンを外され、靴を脱がされ。  半裸の俺を近場のソファーに押し倒し、上から覗き込んでくる瓜二つの美貌。   「ならせめて、分身を解いてください!」  二人は顔を見合わせて笑った。 「せっかくだし」 「ね、せっかくだよ」 「何が!?」  一人は俺の頭の上側へ。両腕を押さえつけられて身動きが取れない。  もう一人は足を跨ぐようにした乗り上げてきた。  さらけ出した淫紋を縁取るようにゆっくり指でなぞられる。 「うっ……、く、すぐった、ぃですって」  触られた淫紋が赤く光る。まるでねだるみたいな反応に、羞恥心がこみ上げてきた。  逃げようとする体は、跨った足で簡単に抑えられる。 「うひっ」 「色気がないなあ」  横腹から脇にかけて、ゆっくりと撫でられた。  触れるか触れないかのフェザータッチに体が跳ねる。  上がってきた掌は首筋や鎖骨を丁寧になぞっていく。くすぐったさに悶えていると、オルフェウスが口の端を上げた。 「さすがにちょっと免疫がついた? 初日はもっとアンアン言ってたのに」 「い、言ってない……! あなたこそ、よく、っ、毎日できますねっ」 「アイクの開発していくの、面白いからね」  例えば……と、乳輪を人差し指でなぞられる。  背中にびりびりと電気が走り、乳首が鈍くうずいた。 「……っ!」 「ほら、もうすっかり性感帯」  もう一人のオルフェウスに頭を起こされ、自分の体を見させられる。  AVで見た女性のような、たわわなふくらみはない。ただ、腹筋までまっすぐ平らになった体の上で、乳首だけがぴんと立っている。  そこに、ゆっくりオルフェウスの人差し指と親指が触れた。挟んでこねられ、歯のすき間から息が漏れる。 「あっ……ぅ」 「こんなに育っちゃってどうするの。こんなんじゃ街を歩けないでしょう」  普段はこんなことになってないですから!  笑っている顔をにらみつけると、頭上にぬっと影が現れた。 「ほら、私のことも構って」  視界の上から、もう一人のオルフェウスが顔を近づけてくる。  上下逆さのまま唇が重なった。 「ん、」  いつもなら上あごをくすぐってくる舌は、俺の舌の表面に触れた。ざらざらとした面同士がぴっとりとくっ付いている。 「っ、ふ……っ!? ん、んんっ!」  舌が横にそれて付け根を刺激してきたのと同時に、下腹部に溶けそうなほどの快感が迸った。  思わず下を見ようとするが、顎が固定されてて動かない。  先端だけが温かい何かに覆われ、ヌチャヌチャと音がする。  体は勝手にのけ反り、一定のリズムでやってくる刺激に合わせてビクビクと引き攣る。 「ん、んっ、ふぁ、あああ……! 何? なに!?」  解放された口は完全に馬鹿になってしまっていて、声を押さえられない。  どうにか下を向くと、いつの間にかズボンと下着が脱がされていた。露出した俺のものは、ドロドロの液体に浸された薄い布が被せられている。  こ、これは……ローションガーゼ!?  噂にしか聞いたことのない光景に、目の前がくらくらした。  どうしてこう、どこの世界もニッチなエロが開発されてしまうんだ!  ……探究心が疼いてしまうんだよね、ちょっと分かる! 「どう、効く?」 「ど、どこで、こんなものを」 「アイク、いつも出したらしんどいって言うでしょう? けど毎回リングをはめるのも可哀想でね……いろいろ調べてみたんだけど、こうすると出さずにずっと気持ちいいらしいよ」  調べるな! 頭のよさと行動力を無駄なところに使うな! 「こうやって、布を左右に擦って……」 「待っ……あぁッ、や、あ、あああ、む、無理っ、無理ぃい!」  未体験の感覚に襲われた。  逃げようと必死に腰を動かすも、大きな手と布に包まれて逃がしてもらえない。 「や、やだぁあ! あっ、ああっ、ぅあ」 「……っふふ。すごい効き目」  絶頂感はある。あるのに、イケない。ずっと上り詰めたまま降ろしてもらえない感じ。  脳内でバチバチと電気信号が走っている。だめ、これ、危ない。 「あっ、ああっ、ひ、ひぁっああ!」 「ゆっくりがいい? それとも、こうかな」 「ああぁあっ!!」  小刻みに動かされるともう本当にだめだ。  体が全部下半身になっちゃったみたいで、ただ刺激に反射する機械にされる。 「やっ、やっ! もうやめ、やめてっ! あぁっ、んああっ!」 「やめてほしい?」  必死に頷くと、オルフェウスは残念そうな顔をしつつ布を取り払った。  解放された後も、息をするので精一杯。 「はぁあ、はぁっ……っ」    こんな……こんなもの、用意するんじゃありません!!  本気で意識が飛ぶかと思った。いや、すでに7割くらい飛んでいる。  オルフェウスに抗議したいのに、体は快感の余韻でカクカクと悶え続けている。  口から垂れたよだれを飲み込むことすらできない。 「ずっと思ってたんだけど、アイクって結構立派なモノを持ってるよね——残念ながら、もう使うことはないだろうけど」  ……喧嘩売ってんのか?  涙でぐにゃぐにゃした視界は、オルフェウスたちの顔を歪めて映し出す。 「だって、後ろでこんだけ快感を覚えちゃったらねえ……」 「淫紋が消えたってもう忘れられないよ」 「ハァッ……ハァ……ッ、ぁ、アンタが、そうしたんだろっ!!」  叫ぶように訴えると、2対の目の瞳孔が開いた。  いつもキラキラと輝いているエメラルドの瞳は、暗闇に取って代わられる。  あ、捕食される。唐突にそう感じた。 「……そう、私だよ」 「アイクを変えるのも、満足させるのも、ね」 「っあ!?」  後ろに指が侵入してしてきた。  ここ数日で既に勝手を知っている指は、迷うことなく俺の良いところを探り当てる。  悔しいが、ローションガーゼのせいで今までにないほどに滑りがいい。すぐにジュッジュッと音を立てての出し入れが始まった。 「アッ……ん、んあぁあ……」  淫紋が待ち望んだ刺激に反応して煌々と輝く。すでにとろけてしまった脳は、遠慮なくよがり声を上げさせた。 「今日は素直だね。さっきの布が効いてるのか」 「そんなに気に入ったなら毎回してあげようか?」  絶対やめてください!!  首を左右に振って拒否の意を示すが、どう受け取ったのかオルフェウスの指がさらに深くなった。  しこりの部分を、ぐっぐっと押すようにされたり、2本目の指と併せて挟んで震わせたり。  くそ……ここ数日で積んだ性の経験値は同じはずなのに、なんでこんなに上手いんだ!?  オルフェウスは俺の痴態を2対の目で見張っていた。まるで、一挙手一投足まで見逃さないと言わんばかりに。  もうここまで来ると、恥ずかしいという感情が薄れてくる。さすがに抵抗はあるけど……。  ……あるよな?  ……んん? 「アイク、考え事?」 「いやっ、今、あれっ? ……あれ!?」  ……まずいことに気づいた、かもしれない。  オルフェウスを受け入れることに、抵抗がなくなっている。  淫紋のせいとはいえ、指やらナニやら咥え込まされてよがり狂うことにもう少し葛藤があって然るべきじゃないか? それなのに。  可能性は二つ。俺がこっちを使う嗜好に目覚めたか、あるいは……。 「どうしたの?」  反転したオルフェウスの顔を見上げる。  まさか……な……?  頭のてっぺん側に感じる硬い膨らみ。さっきからずっと存在は気になってたのだけど……。 「はぁ……ッ、オルフェウスさま、起こして……」  一度指を抜いてもらい、仰向けから四つ這いに姿勢を変える。  息も絶え絶えの体は、少し動かすだけでも快感が走って大変だった。正座で痺れた足を動かすときのように、なるべく力を入れないように動かす。  オルフェウスは俺の動きを観察していたが、俺が前にいたオルフェウスのズボンを寛げると意図に気づいたようだった。 「アイク、それは」 「……」  例えば。例えば、だ。  これを俺が何のためらいもなく頬張れたとしたら、それはつまり……?  出てきたものは、凶悪な形をしていた。既に臨戦態勢で、自身の欲を主張している。  ……オルフェウスは俺のものを褒めていたが、こんなのを持ってるやつに言われてもな。  片手を優しく這わすと、ピクリと震えた。 「本当に今日は、どうしたの」 「……嫌ですか?」 「いいや? アイクの好きにしていいよ」  許可も得たので、握りながらじっと見つめる。  これが、いつも俺の中に入っているもの……何だか不思議な感じだ。  えーい、ままよ! 「……っ!」  先の方を思い切って咥えてみる。少しだけ塩っぱい。が、それ以上の感想はない。  咥えたままで、自分でやるときに気持ちいいポイントを集中的に攻めてみる。  竿を扱きながら、裏筋やカリに舌を這わす。ピクピクと震えられると妙に楽しくなってきて、もっとしてやれ、という気持ちが湧き上がってくる。  必死に舐めていると、頭に手を置かれた。上を向いて、うわ、と思った。    余裕なさげに眉を寄せ、快感に耐える顔。  その快感を与えているのは、間違いなく俺な訳で。 「……んむっ!? あ゛ぁぁッ!」 「こっちも、好きにさせてもらうからっ」  突然、後ろにとてつもない圧迫感と痺れるような快感が押し寄せ、口を離してしまう。  それは、もう何度も挿れられているもの。後ろが嬉しそうに絡みつき収縮するのが、自分でもわかった。 「アイクが頑張ってくれるから、……は、私もあまり余裕がなくなった」 「あ゛っあっ……ハァ、あぅう!」  我ながら、鼻にかかった声が甘ったるい。  腰を掴んでくる指が、体に食い込む。いつもは体が慣れるまで少しだけ待ってくれるのだけど、今日は違う。  腰を止められない、といったようすで、一突き目から肉のぶつかる音が響き渡った。  俺は俺でもう余裕がなくなってて、それぐらいでちょうどいい。まるで動物の貪り合いだ。 「あっ……っ! ぁああ゛あぁ……!」  獣のような唸り声が出始めた。気持ちいい。よすぎて怖い。  なんだかいつもと違う。  脳を直接いじくられている感覚。頭から足先まで、抜き差しに合わせて電流が駆け抜ける。  ふわふわとして、それなのに妙に音や視界がクリアで、えも言われぬ陶酔感が勝手に込み上げてきて……。 「や、ば」 「アイク?」  オルフェウスに耳元でささやかれ、急速に波が高まり、体にギューっと力が入って。 「い゛ッ、あ゛ぁぁあ、〜〜〜〜ッ、ぅう゛ん」  バチン! 視界にフラッシュが走った。  花火に乗せて打ち上げられた気分。  ドクドクと心臓の音が聞こえる。  息が、できない。 「くぁ……っ! ……っ、ぁはぁ、……」  普通にイッたときの何倍、何十倍もの感覚。それなのに、下を見ると俺のものは張り詰めたままだ。  イッてない……? 「ハーッ……ハァ……んっあ!? ああっ、いまっ、ダメ! むうぅっ、うっ」  律動が再開し、なすがままに揺さぶられる。  前にいたオルフェウスも俺に咥えさせてきて、口をいたぶられる。  前も後ろも好き勝手にされ、ある種アブノーマルな快感が上乗せされる。  異常だ。分かってる、けど、正常な判断なんてできない。  ただただ、快楽が欲しい。 「……っく」  口の中で暴れるものに舌を絡ませた。気持ちよさそうな反応に、胸がくすぐられる。  またすぐに、あのおかしな波がやってきた。  背中にはゾクゾクとした悪寒が走り、その直後、下から濁流となって押し寄せてくる。  つま先をぎゅうっと丸めたとき、早くなったストロークの一番深いところで止まる。  クる! またクる……! 「あ゛あぁあ、っはぁあ、〜〜〜〜ッ、ぐぅッ……」 「っ……く!」  ほぼ同時に、中が生暖かいもので満たされた。  視界はまたスパークしている。  体中の毛穴が全部広がって、毛の1本ずつまで性感帯になってしまったような感じ。  いつもとは違い、ずっとイキッぱなしみたいになっている。  ……コレ、人類が経験していい類のものなんだろうか。一歩間違ったら、二度と戻って来られない世界に行ってしまいそう……。  体を支えておけず、ソファにべしゃりと崩れ落ちた。  なんか、すごく疲れた……全力でマラソンしたときのようだ。 「アイク、大丈夫?」  オルフェウスは分身を消して一人に戻っていた。  返事しようとしたが、声は出ない。 「アイク?」  意識はふわふわと漂っていて、心地よい疲労感とじんわりと続く甘い疼きが俺の世界を落としにかかる。  抗えない睡魔。  まだ後始末もしていないのに。 「……」 「……寝ちゃった?」  何かが俺の頭をなでている。  溶けていく感覚。  意識が落ちる寸前、何かが聞こえた気がした。

ともだちにシェアしよう!