18 / 25

18 捕縛※

 ローバは試験管のようなものを持ってきた。  呪文を唱えると、中の液体が極彩色の輝きを放ち始める。アメリカのケーキか孔雀の羽でしか見ない色合いになってるぞ……。 「さ、飲みなさい」  渡されたラグナは、何のためらいもなく一気飲みした。お前、男気の化身か?  ほどなくして、ラグナの体がカッと閃光を放つ。  思わず目を瞑ると、2~3秒して光は収まった。  次に目を開けたとき、目の前にいたのは俺のよく知るラグナだった。今日もばっちりイケている。  ラグナは不安そうな顔で自分の両手を見つめた。 「戻ったのか……?」 「ラグナ! 大丈夫、完璧に戻ってるぞ。ローバさん、鏡はありませんか」 「魔法の鏡でよければ。使うと魂が吸い込まれる鏡か、自分の欲望を映し出す鏡か……」 「よくないです……あっ、そうだ!」  鏡で思い出した。巫女の手鏡を持ち歩いているじゃないか。  尻ポケットから手鏡を取り出し、俺は戦慄した。 「割れてるぅ!?」  圧力が掛かったであろう1点を中心に、蜘蛛の巣上にひびが入っている。  接着されているのか破片がはがれることはなかったようだが、鏡として使える代物ではなくなっている。  ……森での戦闘、からの逃走。馬に体をぶつけた記憶……思い当たる節がありすぎる。  なんて言い訳しようか。オルフェウスの顔を思い浮かべたとき、突如体の奥から痺れるような疼きが走った。 「え……?」  思わずしゃがみ込む。鏡が絨毯の上に滑り落ちた。  じくじくと鳩尾から熱が広がってくる。かゆみにも似た、もだえてしまう感覚。 「アイク?」  ラグナに肩を掴まれた瞬間、火に炙られたように鋭い痛みが走った。 「ぁ゛っ……!」 「おい!? どうした」  手を払いのけた反動で倒れ込む。  力が入らない。脳を支配してくるのは、ここ数日で何度も味わった強烈な刺激。  一度渇きに気づくともうダメだ。あれが、欲しい。   『つまりこの7日間、君は私に犯されないと発情で気が狂うってこと』  ……最後にしたのは昨夜。  今、何時だ? 「魔女! アイクの様子がおかしいっ」 「おやまあ……これじゃお姫さまっていうより奴隷だね。この子のご主人様は坊やかい?」 「な、な……!?」 「ああ、違うのか。なら誰だ?」  頭上でラグナとローバが何かを言い合っている。  全身を巡る熱で、何も考えられない。 「魔法でどうにかならないのか!?」 「ご主人様を探してきな。そいつを呼ばないことには治らないよ」 「——呼ばれなくても」  激しい衝撃音。  視界は粉塵で覆われ、息苦しさに咳が出る。  誰かに抱えられて、ようやく息ができるようになった。  思いきり吸い込んだ空気に、ずっと欲しかった匂いが混じっている。  これ。これが、欲しい! 「オルフェウス第二王子!? 何でここに」 「……おいおい、これのどこが『王子』だって? 私の結界をぶち破るなんて、とんでもない化け物じゃないか」 「悪いけど、君らに構ってる時間はない」 「アイクを離してください、王子! そいつ、ヘンな術に掛かってるみたいで……」 「ラグナ君。私は虫の居所が悪い。それ以上、私の視界に入るな」  閉じた瞼の向こうから、煌々と輝く光を感じる。  ゆっくり目を開けると、青白い光の壁を必死にたたくラグナがいた。魔女も壁の向こう側から興味深そうにこちらを見ている。  光の壁はドーム状になっており、俺たちを包み込んでいる。すなわち……俺と、オルフェウスを。 「オルフェウス、さま」  彼はちらりとこちらを見たが、何も言わない。  いつぞやの、いけすを見る目に似ていた。  ああ、何か言わなくちゃ。  何か、何か……何だっけ……。  言うべきことはいくらでもあるはずなのに、言葉の形に束ねられない。  身体が燃えるように熱い。  言葉を紡げば、早くしてくれとねだってしまいそうで。  開いた口から唾液が垂れる。  オルフェウスが顔を近づけてきて、その唾液を吸い取った。  舌を突かれ、痺れるような幸福感に包まれる。誰かに聞かせるみたいにわざと音を立てられ、耳まで犯されている気分になる。  向こうのほうで、壁をたたく音が激しくなった。けれど、俺はそんなのどうでもよくて、ただただ早くこの熱をどうにかしてほしい。  必死にオルフェウスの頭をかき抱くと、少しだけ彼の目が柔らかくなった。 「帰るよ」  体にかかる歪な重力。  景色はジェットコースターに乗っているみたいにビュンビュン移り変わって、まるで目が追いつかない。  俺の意識は強制的にシャットダウンされた。 * * *  ぬちょぬちょ、ぐちょぐちょ。  粘っこい、あられもない音が下のほうから聞こえる。 「……、……」  呼吸が苦しい。身体にはずうっと電流が走っている。  一際強い衝撃が走り、うっすらと意識が形を成してくる。 「ぁ゛ッ! あ、はぁ、ッ……!」  うまく息を吐けない声。それが自分の口から出ていると気づいた。  陸に打ち上げられた魚みたいだ。息継ぎはうまくできないし、体も勝手に跳ねている。  反った背中を誰かに支えられた。 「……、危ない。落ちるよ」  座り込んだら、余計に深く刺さって体の中を抉られる。ビリビリと、もう何度目かも分からない刺激に視界がぐらついた。 「も、で、出な……ん゛ぁ、ムリッ」 「無理じゃ、ない。ほら……頑張らないと、終わらないよ」 「無理、っはやく、あぁ、早く、出しでぇっ……」  気がつくと、情けなく腰をへこへこと振っていた。  どのくらいの時間こうしているのだろう。  いい加減意識が飛びそうだ……いや、多分数回トんだ。  そのたびにオルフェウスに正気に戻されては、続きを促されている。  ……思い出してきた。ここに連れてこられるなり、この地獄をずっと強いられているのだ。  咥え込んだ棒は確かに熱く膨張しているのに、魔法でも使っているのか、一向に弾ける気配がなかった。  淫紋は中に精液を受けるまで鎮まらない。最初は強引に足を開かされたのに、今じゃ自分からオルフェウスにまたがって尻を振る始末。  もう気持ちいいとかの次元じゃなくなっている。  常に快感のボトルが満杯になっていて、少し刺激を注ぐたびにイってしまう。 「あっ……んぐ、ぅうぅ……ッ!」  またイった。  脳天にぶっとい針が刺された感じ。 「……後ろだけで何回イったかな。気持ちいい?」 「も、嫌だッ、」 「嫌でも、君は私を求めるしかないね」 「……っあ、イきたく、ない……ぅう、おかしくなるぅ……」 「なってよ」 「ぁあ゛ぁッ!」  下から突き上げられ、オルフェウスの体にもたれ掛かる。  けれど、彼は動きを止めてくれなかった。  逃げようとしていた腰を抱かれて、なす術なく飲み込まされて。 「あ、あっ、っ、はぁっ、あ」 「ね、中に欲しい?」 「ふぁ゙……ッ、ほし、ぃッ……欲し……っ!」  ねっとりとした突き上げが、執拗に俺のイイトコロをなぶっていく。  中をギュッと締め上げたのを感じたのか、オルフェウスはかすかに笑った。 「ふふ、そう……じゃあ誓って。もう二度と私から離れない、どこにも行かない」 「や゙っあ゙ぁ……あぁあっ、欲しい、っおねがい゙……んっぁ」 「は、聞こえてないね……いいよ、じゃあ、これしか考えられないようになっちゃいな」 「お、ねがぁっ……ん、んんんー!」  唇を喰まれる。  我が物顔で侵入してくる舌。触れた部分が溶けてしまいそうなほど熱を持っている。  上からも下からも、狂いたくなるような快感を叩きつけられ、また意識が遠のきそうになった。    ……ああ、いっそこのまま身を任せてしまえたら楽だろうなあ……。 「もう、どこにも行かせないから」 「や、ぁ゛……っ、も、むり、ぃ゛!」 「誰にも……」  なあ、なんでアンタがそんな顔してるんだ。  責められてるのはこっちなのに。  話がしたいのに、俺の冷静な部分がもうほとんど残っていない。口から出せるのは嬌声とよだれだけ。  聞かなきゃ、なのに。 「……、っは……、ぅ……」 「……限界かな。一旦休憩だね」  オルフェウスが何かの呪文を呟くと、中がぐぐっと押し広げられる。  あ、クる。待ち望んでいたものが。  直感で分かった。嬉しさでへらりと口が緩む。   突き上げに合わせて中を締めると、オルフェウスの眉がギュッと寄せられた。 「……はぁっ……」 「あぁ゛ッ、……ッィ、ぐっ、~~~ッ!」  胎内に放出された瞬間、背中を駆け上がってきた暴力的な多幸感にギューッと首を絞められた。  心臓の音が耳のすぐ裏で鳴っている。  あー……これ酸素足りてねーわ……。  意識が保てたのはそこまで。  自身の体が傾き、オルフェウスの虚ろな顔が少し和らぐのが見えた。

ともだちにシェアしよう!