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第26話 ※絶対離さない ~クロードSide~
彼……フレデリックと出会った時、一瞬で自分の世界が変わった気がした。
灰色だった世界にパッと色が着いたような衝撃と、彼をどうしても手に入れたい衝動。
最初は手元に置いて可愛がり、愛でているだけで満たされていた。
それがいつからか渇望に変わり、彼の全てがほしくなってくる。
レイラやアーヴァンにも、
『リックを見る目が怖いですよ』
『大変な想いをするのはあの子なのですから』
と口酸っぱく言われていた。
でもあの夜。
リュミエーナ嬢の事で殿下から頼み事をされ、殿下にリックを預けてあの場を去った事を酷く後悔する。
殿下に頼まれていた事とは、”リュミエーナ嬢との顔合わせと、あわよくば婚約の話を受けてほしい”というものだった。
ひとまず顔合わせは実現させようと考えていた……バラデイン公爵家は王弟殿下を次期国王として推す勢力の筆頭だ。
とある事情から、殿下はこの公爵家をこちら側に取り込むか潰したいと考えている。
公爵家の出方を見る意味でも、リュミエーナ嬢と接触しなくてはならない。
「初めまして、リュミエーナ嬢」
「初めまして、クロード様! お目にかかれて光栄ですわ」
”クロード様”か……初めて会ったばかりで私を名前呼びとは。
その名を呼んでほしいのは君のような人ではない。
真っピンクの髪を綺麗に縦に巻き、分厚い化粧は本音を隠す為のもの。
顔が引きつりそうになるのを堪えながら、会話を続けていく。
「今日はお父上はいらっしゃらないのでしょうか?」
「はい……お父様は二人で積もる話もあるだろうと。 出来れば二人きりでお話したいのですけど」
腕に絡みつき、これ見よがしに胸を押し付けてくる。
私がそんなものに興味がない事も知らずに。
すぐに腕を引き抜き、一定の距離を取る。
「まだ夜会は始まってませんし、二人きりで話すのはもう少し後にしましょう」
「もし私に付き合ってくださるなら、閣下に有意義なお話をお伝えできるのですけど……」
扇で口元を隠しながら、下品な笑みでこちらの様子を窺っている。
この女……何を知っている?
彼女は公爵の駒に過ぎない。
私に近付いて誘惑し、私の態度次第で王弟殿下派の派閥に引き入れようとしているのだろう。
そして違法薬物についても共犯にしたいに違いない。
彼らの目的は王太子殿下を孤立させて排す事、もしくは王位継承権の剥奪。
殿下は弟君を何よりも大切に想っているのに――――周りがうるさくて仕方ないだろうな。
私とて、たとえ殿下と共に命を狙われる事になろうとも、こんな派閥に加担するつもりはない。
「あなたは何か勘違いをしておられる。 私があの方を裏切るなどあり得ません」
「閣下……! 大切な人がどうなっても知りませんから!」
私がハッキリと自分の意思を伝えると、ヒステリックを起こし、駆け出していく。
大切な人?
どういう事だ?
私の頭にリックの顔が過ぎっていく。
「リュミエーナ嬢!」
すぐに走り去る彼女を追いかけた。
なぜ彼女があの子の存在を知っている?!
彼の事は公爵家で引き取ってから誰の目にも触れさせてこなかった……殿下と私の友人しか知らない情報だ……!
ドレスで駆けていたリュミエーナ嬢は躓き、咄嗟に腕を掴んで支える。
「大丈夫ですか?!」
「離してくださいませっ! 私の事などどうでもいいくせに……」
リュミエーナ嬢は完全に取り乱していて、話しても埒が明かない状態だった。
とにかく周りにもギャラリーが多いので、ひとまず落ち着かせなければ。
この女には何の力もないが、バラデイン公爵が出てきたら厄介だ。
「落ち着きましたか?」
「わ、私……」
「お気になさらず。 そろそろ夜会も始まりますので、これで美しい顔を整えてください。 では」
私はハンカチを渡し、その場を後にした。
頭の中はリックの事でいっぱいで、焦燥感に駆られる。
彼の存在が漏れ出ている……しかも私の大切な人として……!
アーヴァンに鍛えられているとは言え、夜会にいれば身の危険もあるのでは?
今は殿下がそばにいてくださっているから大丈夫だろうけど。
衛兵に殿下の行方を聞き、急いで駆け付ける。
扉を開くとそこには、殿下に頭を撫でられて嬉しそうなリックの姿があった。
前言撤回。
殿下のそばにいると、違う意味で危険だった。
彼の腕を引き、自分の腕の中におさめて独占欲をぶつける。
「殿下と言えどもリックはダメです」
私にとってこの腕の中の可愛い存在が全てで、彼が他の人に触れられるのは絶対に許せない。
そう思っていたけれど――――どうやらリックにとっては違うらしい。
「縁談についても了承してくれた」
「私は気にしていませんので。 大丈夫ですから!」
「……そうか、気にしないのか……分かった」
私の中は君でいっぱいなのに。
他の女なんてどうでもいい、君だけがほしくて君が全てなのに。
夜会も早々に退席し、邸に戻ると彼を寝室へと連れて行った。
そして自分の中の独占欲と劣情を彼にぶつけていく。
「ん……んんっ……クロード、さまぁ……」
今までずっとキスだけはしなかった。
彼が誰よりも大切だけど、リックにはリックの人生があり、彼が自立して離れていく可能性もあったから。
レイラやアーヴァンにも窘められ、彼の人生を縛ってはいけないと自制していたのだ。
でももうやめた。
離れていこうとしても、絶対離さない。
「リック…………舌だして」
「ぁ……ぁあ……っ」
「おいし……」
全部全部私のものにする。
離れたくても離れられなくなるように――――
後ろの窄まりをかき混ぜ、胸の先端を舐り、内耳をぐずぐずにしていく。
リックは何度も絶頂を迎え、彼の熱棒から、とめどなく欲望がまき散らされていった。
「ふふっ、可愛い……」
可愛いよ、リック。
私に愛されて体中真っ赤に染まっている君は、この世の何よりも美しくて煽情的だ。
やっと、やっと一つになって君と繋がれた喜びに、昼も夜も忘れて一つに溶け合った。
なのに……君は私の手から、跡形もなく消え去ってしまったんだ。
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