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第28話 ※求め求められる大人な関係 ~クロードSide~

 「旦那様、少し御用が……あら? 寝室にリックがいなかったのでこちらにいるかと思ったのですが……」  「寝室に、いない?」  なぜかその事に妙な胸騒ぎを感じ、執務室を飛び出した。  あちこち探し回ったけれど、リックの姿はどこにも見当たらない。  邸の者が総出で探したのに見つけられないという事は、邸にはいないという事になる。  そこへバタバタと足音が聞こえ、侍女の一人が一枚のメモを渡してきた。    「だ、旦那様! こちらをっ!!」  「どうした?!」  そこに書いてあったのはとても短かったけれど、彼が私の手をすり抜けていってしまったのを悟るのに十分な文章だった。  『ごめんなさい。 少し一人になりたいので邸を出ます』    下にはフレデリックという名前——。  「これを、どこで……?」  「…………リックの部屋です……机の上に置いてありました……!」    「まさかあの子、私たちの話を聞いていたのでは?!」   レイラが悲鳴のような声を上げ、アーヴァンが何か言っている。  私は誰の声も聞こえなくなり、その場で立ち尽くした。  どこまで聞いていた?  この書置きを見る限り、涙が滲んでいる……彼を傷つけたのか……?  もう戻ってこない?  この邸に連れてきてから邸の外に出ていない彼がどうやって出て行ったのか…………とにかく私は馬を駆り、邸を飛び出した。  しかし探しても探しても見当たらず、王都でも聞き込みをしたが、全く手掛かりはない。  消えてしまった……私の最愛が…………明け方近くに邸に戻り、待っていた使用人達に手掛かりはなかったと告げ、ベッドに倒れ込む。  この喪失感はフレディや両親を亡くした時以来。  いや、それ以上かもしれない。  君がいない人生なんて、生きてる意味がないじゃないか。  あんなに可愛いのだから、危険にさらされていないかも気になって眠れない。  どこにいてもいいから、とにかく生きている事が確認できれば――――  そう思い、とても心配していたのに。  翌日、王太子殿下からもたらされた知らせは、私の遥か斜め上をいく展開だった。    ”フレデリックが私のもとにいる。 保護しているから明日王宮へこい”  殿下からいただいた知らせに書かれていたのはこれだけ。  一体何が起きた?  私ではなく、殿下に助けを求めたというのか?  彼が無事だったという安堵の気持ちと、とてつもない嫉妬心が入り混じり、喜んでいいのか分からない。  とにかく居ても立っても居られなくてすぐに王宮へと駆け付けると、そこには失ったと思っていた最愛が元気に立っていたのだった。  「リック!! 無事でよかったぁ……」  生きていた……無事だった…………彼の美しいターコイズブルーの瞳は驚きで揺れ動き、漆黒の髪は朝日に煌めいていて、思わず手を伸ばした。  けれど——その存在は殿下腕に絡め取られ、自分以外の男の腕の中に収まってしまう。  殿下には想い人がいるのに、なぜリックに構う?  彼の白い肌に殿下の頬が触れていて、嫉妬で脳が焼き切れてしまいそうだった。  「……殿下のお心遣い感謝いたしますが、早急にその御手をお放しください」  「嫌だと言ったら?」  「決闘を申し込みます」  「覚悟の上でか?」  「もちろんです」  殿下は自分の主ではあるけれど、私の最愛に手を出すのならそれ相応の覚悟をしてもらう必要がある。  もっとも殿下があの方を裏切るなんてあり得ないので、決闘なんて起きるはずがないのは分かっていたけれど。  「リック、おいで」  私が声をかけると、リックは殿下の腕をすり抜けてこちらへやって来たのだった。  甘い匂いを嗅ぎながら存在を確かめるように抱きしめる。  殿下が色々言って去って行ったけれど、もう何もかもがどうでもいい。  君が生きて存在してくれているだけで胸がいっぱいで。  フレディや両親のように、私を置いて逝かないでくれれば……君の願いならなんでも叶えてあげるから。    「君が自立したいならそれを応援しなきゃね……寂しいけど」  すっっっっごく嫌だけど。  「クロード様、ありがとうございます」  ふにゃっと表情を崩し、ホッとした表情で笑う。  そんな君が愛おしくて大切で、色んなモヤモヤがどうでもよくなっていった。  もう二度とこの手からすり抜けていかないようにするにはどうしたらいいだろう?  やっぱり結婚しかないのでは?  そこまで考えたところでアーヴァンの言葉が浮かんでくる。  『そもそも恋人を通り越してプロポーズをなさろうとしている事に驚きを隠せません』  そうだ、恋人関係から始めよう。  私はどうやらリックに事になると、考えよりも欲望が勝ってしまうところがある。  彼が可愛すぎるのがいけないと思いつつ。  「君が大人になりたいのなら、私も大人として扱おうと思ってるよ」  今までのような可愛がるだけの関係ではなくて、お互いに与え合う関係がいい。  そんな大人な関係。    でもやっぱり彼への可愛いが勝り、翌日すぐに溜まっていた嫉妬心をリックにぶつけてしまうのだった。    資料室に連れ込み、誰も入って来ないように鍵をかけ、扉に彼を押し付ける。  うなじや胸など、殿下に触れられていないかを入念にチェックしていく。  少しでも痕を見付けたらと思うと気が気じゃないのに、必死で探してしまう。  結局彼の肌には殿下の痕などなく、心底ホッとすると今度は自分の痕を刻み込みたくて愛撫していった。  私に胸を可愛がられて悲鳴のような嬌声を上げるリック。    「ふあっ、ぁあ! だめぇ……っ!」  胸の花蕾を弄っただけなのに、彼の腰は期待に揺れ、下腹部の先端がじんわり湿り気を帯びていた。  いつもは意地っ張りで頑ななのに、体はとても正直なんだよねぇ。  本当にそういう無意識なところが可愛すぎて堪らない。  すぐに下半身を解放してあげると、すでに先走りが溢れていて、私を美味しそうに誘っていた。  吸い寄せられるように彼の熱を口に含み、一気に吸い上げる。  「んあぁぁ!」  なんて甘い声なんだ。  もっと聞きたくて彼の後ろに指を挿入れると、襞が絡みついてくる。  本当に正直な体……一生懸命気持ちいいって言ってる。  「あ、あっ、だめ、でちゃっ、クロードさま……でちゃぅぅ……!」  そのまま絶頂を迎えた彼の熱棒は、私の口内に絶え間なく欲望を吐き出した。  そしてそれを全て飲み込んでいく……彼の存在を確かめるように。  でもそろそろ私も彼から求められたい。  今なら正直に言ってくれそうな気がして、すっかり勃ち切った剛直を彼の目の前に差し出した。  「リックはコレが好き?」  どう反応するかな。  様子を見守っていると、可愛い顔を摺り寄せ、匂いを嗅ぎ始めたのだ。  そして舌を出しながら恍惚した表情を浮かべる。  「すき……すき、だいすき……ほしい…………コレほしい」  こんな表情も出来るようになったんだ。  自身の指を後ろに埋めながら、いやらしくおねだりまでしてくれる。  「こっちにほしい……クロードさまぁ」  こんな淫らなリックを見る事が出来るなんて……!  求めて求められて……大人になるのも悪くはないかもしれないな。    「可愛いおねだりまで出来るようになって。 ご褒美あげないと……!」  はち切れそうな楔を彼の中に埋めていった。  二日ぶりか……狭くてホッとする。  彼が誰かを受け入れていたらと思うだけで、その相手を消し去ってしまいそうだった。  狭くてよく吸い付いてきて、私の熱を離さないと言わんばかりに締め付けてくる。  こんなに体は正直なのに……普段は本音を言ってくれない。  私の為を想ってなのだろうけど。  でもいつかリックの口から本音を聞きたい。  そう思っていたところに、思いもよらず、彼が本音を漏らしていく。  「クロードさま、だけ……すきっ……だいすき……ん、んんっ」    一生懸命自分からキスをして。  私への気持ちを口にする。  きっとこの瞬間が終われば忘れてしまうのかもしれない。  それでも私の頭は沸騰しそうなほど嬉しくて、理性が一気に吹き飛んでいった。  何度も腰を打ち付け、彼の最奥を穿つ。  溢れ出る嬌声を唇で塞ぎ、互いに欲望を吐き出した。  「はぁ……ぁ……ああっ」  「リック…………君を誰にも渡さない」  殿下にもバラデイン公爵家にも、奪われてなるものか。  リックは公爵と会い、私との関係で釘をさされている。  その意味を彼自身は分かっていないだろうな……おそらく私がリュミエーナ嬢との婚約を断れば、彼を消そうと公爵が動く可能性が高い。  それこそ違法薬物を使って……侯爵邸で秘密裏に囲っていても存在がバレていたのだから、邸が安全んだとも言い難い。  だからこそ殿下はご自分の秘書にさせたのだろう。  彼を守る為に。    それならば、私がすべき事も一つだ。  私はその夜、王太子殿下の許可をもらい、リックの部屋を訪ねた。  「クロード様?! な、なぜ……」  「今日からここに一緒に住む事になったんだ。 よろしくね」  「えぇぇ?!」  驚き戸惑うリックの頬にキスをする。  まだこの貴人の間に怪しい者の気配はしない。  絶対に君を守るから……固い決意をしながら、部屋の扉を閉めていった。

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