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第33話 王太子殿下の大切な人 2

 「殿下? 少し具合でも悪いですか?」  「いや、問題ない」  そう言いつつも、頬が赤いような……気のせいであればいいと思いながら仕事を続ける事一時間。  やはり様子がおかしい。  息が荒くなっているし、肘をついて、あまり書類も読めていない様子だ。  これはマズいのではと思い、再度声をかける。  「殿下、やはりお加減が悪そうです」  「大丈夫だ」  「でも……」  「仕事を続けよう」  「分かりました。 少し待っていてください」  俺はそう言いながら執務室を後にした。  あれは絶対に熱がある……いくら俺でもあれくらいは見たらすぐに分かる。  冷たい水に布を浸し、絞ったものと飲み物を持って執務室へと戻った。  「殿下、これを」  冷えた布を額に当ててあげて、飲み物を机に置いた。  首に手を置くと、物凄く熱い……!  こんな状態で仕事していたなんて。  殿下は布の冷たさが気持ちいいのか、自ら額を布に押し付けて息を吐いた。  「気持ちいいですか?」  「ああ……とても…………すまない、フレデリック」  「ふふっ。 こういう時はありがとうと言うのです」  「……そうか。 そうだな」  「そうです」  「王太子として隙を見せてはいけないと常に思っているので、こういう事には慣れないのだ。 自分で出来ないと申し訳ない気持ちの方が先立つ」  常に上に立つ者として甘えが許されないからだろうか……そうだとしたら、なんて苦しい人生だろう。  身の回りの事はお世話されて当たり前の人なのに、こういう時は頼れないなんて。  「私なんて、クロード様にお世話されっぱなしですよ」  「クロードが?」  「はい。 なんとか私がご奉仕したいと思ってもすぐにお世話されてしまうんです」  「ははっ。 アイツらしいな」  「だから殿下も、お世話されてもいいんですよ。 甘えてもいいんです」  「……そうか」  「はい!」  「では……どうやら限界がきたらしい…………」  そう言って机に突っ伏してしまう。  俺一人では彼をベッドに運ぶ事が出来ない。  医師や使用人の方達に声をかけにいかなきゃ!  「もう少し待っていてください! 今人を呼んで来ますので!」  執務室を飛び出してあちこちに声をかけて回っていった。  そのかいあってすぐに殿下は寝室に移され、しばらく静養する事になったのだった。  俺も自室に下がろうと思ったけれど、殿下が俺を呼んでいるという事でそばで看病する事に。  かなり熱が高いので、すぐに布が温くなってしまうのをまた水で冷やし、殿下の額へ乗せた。  「すまないな、引き留めて……あまりこの寝室に使用人を入れたくはないのだ」  俺も使用人と同じだと思う、と言おうとしたけれど、調子の悪い人に言う言葉じゃないよね。  とにかく殿下が落ち着く環境で静養しなければ。  そこへ扉がノックされ、クロード様が入ってくる。  「殿下……! お加減はいかがです?」  「クロードか……このような熱は久しぶりだが、そこまで悪くない。 それもこれもフレデリックのおかげだな」  「私は何も」  「殿下……大丈夫そうなのは何よりですが、リックはダメですよ」  「フッ。 心配せずとも手は出さん」  「殿下、安静になさってください。 ご主人様も興奮させてはいけませんよ」  「……ごめん」  「さすがのクロードもフレデリックには頭が上がらない、か」  殿下は熱があるけれど、割と話す事は出来る様子で、少し安心かな。  ぐったりしていたら要注意って言うもんね。  「私がフレデリックにいてほしいのは、お前が似ているからだ」  「……私が?」  「………………」  殿下とクロード様を交互に見やるけど、どちらも口を閉ざしてしまう。  どうしたのだろう。  俺は誰に似てるのだろうか……でも多分これは勘だけど、殿下の大切な人に違いないと思った。  だって目がとても切なそうだから。  その人とは結ばれる事はないのだろうか?  そんな事を考えていると、扉が開かれる音が聞こえてくる。  ふり返るとそこには、朝にぶつかった美青年が立っていたのだった。  今朝も思ったけれど、物凄く美しくて、儚くて……またしても瞳を潤ませながら、扉の前から動けずにいる。  最初に口を開いたのは殿下だった。  「リヴィエール……」  その声はとても優しく、大切な名前を口にしているようで……殿下の方を振り返ると、その表情全てに愛情がにじみ出ていた。  そうか、この人が――――  「兄上……!」  殿下の大切な人は、リヴィエール・フォン・アンドロス王子殿下だったのだ。  

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