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第40話 その胸に想う人は 1
「ごめんね~~リック!」
「い、いいのです……俺が望んだ事なので」
「君が可愛すぎて、ついやり過ぎちゃった……!」
「それは俺を喜ばすだけですよ」
クロード様は散々抱き潰されて起き上がれない俺に泣きつき、ずっと謝っている。
腰が痛い……明日は起き上がれるのだろうか。
でも彼を求めたのは俺だ。
気持ちとしてはまったく後悔はしていない。
この痛みも彼の愛だと思えるなんて、俺って重症かも。
「クロード様、リヴィエール殿下って王太子殿下の事が大好きなのですね」
「そうなんだ。 お互いに想い合っているのに、見ている側としてはもどかしいものだよね」
「ふふっ、俺たちもそのように見えていたのかもしれませんね」
「確かに……でも今は両想いだから」
「はい! だからお二人も、いつか両想いになってくれたらいいなぁ」
俺の言葉にクロード様は少し渋い表情をする。
どうしてなのかと思っていたけれど、ご主人様はその理由を俺に話してくださった。
「カントボーイ?」
「そう。 私達と少し体の構造が違うんだ」
その事についてクロード様から詳しく話を聞き、とても複雑な事情にただ驚くしかなかった。
それは王太子殿下もさぞ悩んでいる事だろう。
もし自分だったら、相当の覚悟がなければ想いを告げる事は出来ないかも。
「他国ではリヴィエール殿下のような方を「神の子」と呼ぶ国もあるんだ。 当然バラデイン公爵は弟君の体の事を知らず、王位にと言っていて」
「もしこの事実を知ったら……良くない事が起きるのでは?」
「うん。 バレれば、高く売れる"商品"として違う意味で狙われてしまう。 だからこそこの事実を王家でもひた隠している」
「そんな事が……」
聞けば聞くほど王太子殿下とリヴィエール殿下が結ばれる未来が遠くなっていく気がする。
『ちょっと特殊な人で……』
酒場で遠くを見ながらそう言っていた王太子殿下の顔を思い出す。
こんな複雑な状況でも、王太子殿下のリヴィエール殿下を大切に想う気持ちは全く揺らぎのない想いだったけれど……そんな運命って、辛すぎるよ。
色々と考えて視線を下げる俺の頭をご主人様が優しく撫でてくれる。
ああ、俺は物凄く幸せ者だ。
こうやって想い合う相手と体を重ね、愛を伝える事が出来る。
「君は優しいから、彼らの事を伝えれば心を痛めるって分かっていたんだけど」
「いいえ、話してくださって嬉しいです。 知っていれば行動も変わってきますし……俺には何が出来るか分かりませんが、お二人の気持ちを守りたいって思いました」
「リックは本当に優しいなぁ……私なんて早くくっつけばいいのに、なんて思っちゃって」
「あははっ。 クロード様らしいです」
「それ、どういう意味?」
「ははっ」
ベッドで散々くすぐられてじゃれ合いながら、幸せを噛みしめる。
ここにいる間に王太子殿下とリヴィエール殿下の距離が少しでも縮まりますように。
そう願いながら、愛する人の腕の中で眠りに落ちていった。
~・~・~・~・~
バタバタと廊下をひた走る。
やっぱりクロード様の腕の中で眠ると、全然起きる事が出来ない!
多分夜が激しかったから……自分で想像していて顔が熱くなってくる。
もう、思い出している場合じゃない……!
とにかく殿下の寝室に急がなくてはっ!
そうしてようやくたどり着くと、中から少し話し声が聞こえてきた。
誰か来ているのかな?
ひとまずノックをして扉を開くと、そこにはベッドサイドで手を握り合う二人が立っていた。
「も、申し訳ございません!」
「いや、気にするな。 そろそろ政務に戻ろうと思っていたところだ」
「え? でも熱が下がったばかりでは……」
「まぁ休んでばかりもいられまい。 仕事は溜まるばかりだしな」
「兄上……僕に任せていただければ手伝いますのに」
「いや、弟が王太子業務をしていたと知れば、あの男が何を言ってくるか分からないからな」
「はい……」
お二人がとても苦々しい表情をしている。
彼らの邪魔をしているのがバラデイン公爵だと、リヴィエール殿下も分かっているんだ。
もっと一緒にいたいだろうな。
王族ってこんなに自由がきかないんだ。
殿下はリヴィエール殿下の頬に触れ、「そろそろ行きなさい」と優しく囁いた。
その表情がとても愛おしさが溢れる顔で、見ているこちらが胸を締め付けられてしまう。
そして俺の前を通り過ぎる弟君の目には涙が滲んでいた。
扉が閉まる音が室内に響く。
こんなの放っておけないよ。
「殿下、ちょっと行ってきます」
王太子殿下に一言断って、リヴィエール殿下を追いかける為に寝室を後にした。
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