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第二十九話 生きる温度*

「今日はお疲れ様でした」 「大変ご立派でしたよ、お坊ちゃま」 「凪、お疲れ様!」 「協力してくれて、ありがとうございました。みんなのおかげで責任を果たすことができそうだよ」   相馬は「……今日くらいは、ゆっくり休んでくださいね」と凪のことを心配そうに見つめる。 「ずっと動きっぱなしであんまり寝てないでしょ?」   二階堂も同じような顔をすると「大丈夫ですよ。今日は、ゆっくり寝られそうなので」と笑って答える凪。 「それじゃあ、あとはよろしくね」 「はい」 「私達は会場の片付けをしてから戻ります」   凪は朔に向かって手を出すと「付き合ってくれるよね、朔君?」と軽く首をかしげた。 「どこに行くんだよ」 「フフッ」   二人は手をつないだまま、報道陣に見つからないように裏口を使ってホテルを出て、途中でタクシーを拾う。 しばらく車を走らせたあと到着したのは、以前二人が一夜を共にしたあのスモールラグジュアリーホテルだった。 「こんばんは、凪様」 「こんばんは」 「記者会見、拝見しておりました。さすが、九条グループのトップという誠実な会見で、感動いたしました」   ホテルの支配人はそう言うと「これからも、凪様についていきます」と宣言する。 「ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」   支配人からカードキーを受け取り、見覚えのある道を通って三階のスイートルームに向かった。 部屋に入ってドアが閉まった瞬間、凪が朔の首に両腕を回して少し強引に唇を重ねる。 「っ!」 「フフフッ、びっくりした?」 「肋骨は?」 「ほぼ完治したから大丈夫だって言われたよ」   凪はそう言うと、朔の頬に自分の頬を擦り寄せながら「頑張った僕に、ご褒美をくれる?」と甘えた声を出す。 「……やめろって言われても、やめねえからな」 「うん」   朔の言葉に、熱に浮かされたような表情を浮かべる凪。 軽く背伸びをして、もう一度朔の唇に触れるだけの口づけをすると「準備してくるから、少しだけ待っててね」と言ってバスルームに向かった。 コートを脱いでネクタイを緩めた朔は、バルコニーに出てタバコに火をつける。 バルコニーから見える景色は、前に来たときと変わらない。   変わったのは、オレ達の関係だけだ。   凪との出会いを思い出しながら感傷に浸っていると窓の開く音が聞こえてきた。 振り返ると、少し髪の毛の濡れたバスローブを羽織った凪が「お待たせ」と言いながら微笑んでいた。 朔は煙を吐きながら「風邪ひくだろ」とあきれた顔をする。 「大丈夫だよ」   凪はそう答えると朔の隣に立つ。 「朔君」 「あ?」 「今日はありがとう。ボディガードをしてくれた報酬は、なにがいい?」   朔は、携帯灰皿を取り出してタバコを押し込むと、凪の腰に手を回す。 「……礼なら、これからもらう」   朔はそう言うと、凪の腰を抱き寄せながら顎に手を添えて上を向かせて噛みつくように唇を奪う。 互いが互いを求めるように、口内でねっとりと舌を絡ませ合う。 「ふ……っ、あ」 「……逃げんな」 「んんっ……」   息をする暇も与えてやらない。   そんな朔の独占欲がにじみ出るような激しくも甘い口づけに、凪も必死で応えていく。 「……っん、ふ……ん」 「……凪っ」   名残惜しそうに唇を離すと、朔は凪のことを横抱きにしてベッドルームへと向かう。 「朔君……」 「あ?」 「大好きだよ」 「知ってる」   凪の着ているバスローブの紐をほどくと凪の白くてなめらかな肌があらわになり、朔は思わず生唾を飲み込んだ。 「そ、そんなにじっくり見ないでよ……」 「……」 「……恥ずかしいんだけど」 「これからもっと恥ずかしいことすんだろ」   朔はそう答えると、凪の肌に唇を寄せる。 「んっ……」 「ここ、好きだよな」 「あ、……っ」   凪のいいところを見つけて舌を使って刺激を与える。 「ふ、ん……」   凪の体にゆっくりと舌を這わせながら、朔は緩めたネクタイを抜き取った。 強引な手つきでシャツのボタンを外したあと、ベッドの上にシャツを脱ぎ捨てた。 「……綺麗だね」 「はあ?」   古い傷が至るところに残る朔の体を、凪は愛おしそうに見つめる。 一番大きな傷が残る右腕を触りながら「朔君が……頑張って生き抜いてきた証なんだね」と少し切ない表情を浮かべた。 それは、朔が監禁されていた地下室から逃げる際に負ったものだった。 朔は凪の頬に手を伸ばすと「お前と、出会うためにな」と口角を上げた。 「本当に……君はかっこいいね」 「お前には負ける」   オレは、親父や柊達がいた。 だけど、コイツはたった一人でずっと戦っていたんだ——。   凪の頬をやさしくなでながら愛情を込めた口づけを落とす。 「……これで、終わったんだね」 「ああ……」 「明日からはどうしようかな」   その言葉を聞いた朔は「とりあえず、お前のやりたかったこと……一個ずつやってこうぜ」と誘う。 「付き合ってくれるの?」 「当たり前だろ」 「ありがとう」   そう言って笑った凪に、朔はもう一度口づける。 「ローションは?」 「あるよ」   凪の視線がベッドサイドに置いてある棚に向いた。 朔が棚の一番上の引き出しを開けると、中にはローションとゴムが収納されていた。 「用意がいいな」 「でしょう」   ローションを手に取って、手の体温で温める。 そして、凪の窄まりに温めたローションを垂らしてゆっくりと解していく。 「っん……」 「大丈夫か?」 「ん、……大丈夫……」   傷つけないよう、ゆっくりと慎重に丁寧な愛撫を続ける朔。 「ッ……さ、く君……んっ」 「あ?」 「ナ……」 「な?」   凪は赤くなった顔を両手で隠しながら「ナ、ナカに……ちょうだい?」と朔の存在をねだる。 「もう少し解れたらな」 「や、あっ……ッ」   二本、三本と徐々に指を増やしていき、柔らかくなってきたことを確認した朔は、パンツを脱ぐために一度指を抜いた。 「ッ!」   凪が体をビクリと反応させたのを見逃さなかった朔は「……敏感」と言いながらニヤリと笑う。 「さ、朔君が上手すぎるんだもん……本当に童貞なの?」 「オレがいつ童貞だって言ったよ」   あれだけ童貞いじりをされてきた朔だが、任務遂行のために女性を抱いたことがあるため童貞ではない。 「そうなの?」 「聞きたくねえだろ」 「興味はあるよ?」 「なんでだよ……」   普通、自分の好きなヤツの過去の経験なんて聞きたくねえだろ。   そう思った朔だったが、凪は普通の思考回路をしていないことに気づく。 「いつ? どこで? どんな人? 相手は女性? 気持ちよかった?」 「……」   興味津々に質問をしてくる凪に、朔は大きなため息をついた。 「任務で寝たことはある」 「ふーん」   あれだけ質問責めをしたわりに、凪は興味なさげな返事をした。 「けどな」   そう言ったあと、朔は凪の手を取って自分の下半身に触れさせる。 「……本気で抱きたいって思ったのはお前だけだ」 「それならいいよ」   その言葉を聞いた凪は嬉しそうに微笑むと、朔のパンツのベルトを外してパンツのファスナーを下げた。 そして、硬くそそり立った朔の存在を下着の中から取り出すと、口に咥えた。 「っおい!」 「ふっ……おっひいね」 「ッ」   拙い動きではあるが、最愛の人が自分の存在を咥えていることに興奮を隠せない朔。 「……ッ」 「んっ……きもちいい?」 「ッ、ああ……」   ある程度凪の好きにさせたあと、朔は凪の両肩を持って「おい……もういいから」と止める。 「いいの?」 「……出すなら、お前のナカで出したい」 「うん」   ゴムを着けてローションを垂らしたあと、凪の両足の間に割って入る。 窄まりの入り口に朔の存在を押し付けると「……いいか?」と凪に聞く。 「うん……挿れて?」   凪の細い腰を持ってゆっくりと押し進めていく。 「……ッ」   念入りに解したはずだったが、凪の窄まりは初めての質量に驚いて押し返そうとする。 「力、抜け……」 「ん、……つっ……」   朔の首に縋りつくように両腕を回す凪に、朔も抱きしめ返す。 少しずつ腰を進めていき、最奥に当たると「は、いった……?」と凪が涙をこぼす。 「……ああ」 「……フフッ……僕のナカ、気持ちい?」 「……動いたらやべえ」   そう答えた朔だったが、ゆっくりと腰を動かし始める。 ムスクの上品な香りが広がる部屋の中は、二人の汗の香りに上書きされていく。 朔が動くたびに黒い髪の毛が背中を流れ落ちていき、組み敷いている凪の体をくすぐる。 「っあ、……あ、んっ」 「凪……っ」 「さ、く……んっ、あ」   凪の甘い声と朔の快楽に耐える声が、二人の熱が混ざり合う音と一緒に部屋の中に響き渡る。 「ンッ、あ、ソ、ソコ……ッ」 「ココか?」 「……ン、ッ」   首に回している腕に力が入り、声にならない声を上げる凪。 そんな凪のことを、愛おしそうに感じながら、執拗に同じ場所を突く。 「さ、さく……ッ」 「……ッ、……!」   逃げようとする凪の細い腰をつかんで最奥を突き上げる。 「ひゃ、……あ、だめ……っ!」 「ッ、いい、だろ?」 「あ、ンッ……あ、あっ——ッ」 「凪ッ——」   二人は唇を重ねたまま、熱いは白濁を一気に吐き出した。 唇を離すと、凪は乱れた呼吸を整えるように細く長く、息を吐く。 「……ハァ、ハァ」 「……大丈夫か?」 「うん……」   汗で張り付いている凪の前髪を、朔はやさしい手つきで直していく。 「フフフッ」 「あ?」   急に笑い出した凪を、不思議そうな顔で見つめる朔。 凪は、朔の髪の毛を細い指でもてあそぶようにいじりながら「生きてる、って感じだね」と微笑んだ。 「そうだな」   そんな凪に応えるように朔もかすかに微笑んだ。 「気持ちよかった?」 「ああ」 「よかった」   そう言って凪は朔の下から抜け出そうとするが、朔は凪の両肩をベッドに押さえ付けるようにしてもう一度押し倒す。 「へ?」 「終わりだって言ったか?」 「ッ!」   つながったままの朔の存在が、ナカで大きくなっていくのを感じた凪は「さ、朔君?」とめずらしく焦った声を出す。 「オレは」   朔は凪の指に自分の指を深く絡ませたあと、その手をシーツへ縫い留めるように押さえた。 「ひゃ、っ」   そして、凪のナカにいる自分の存在を感じさせるように腰を押し付けると「まだまだ満足してねえよ」と言って不敵に笑った。 「お、お手柔らかにお願いします」 「善処する」   そう答えた朔だったが、満足したのは明け方だった。

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