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第19話

14 銀月に融ける灰青 ※ 『紫褐色の呪いのもや』が完全に消え去るまで、タクトは濃い胡桃を少しずつ削って食べるよう命じられ、その様子をジュリアンにしっかりと監視されていた。  高純度すぎる鱗の副作用に、タクトは息も絶え絶えだった。  ようやくすべてを食べ終えたタクトに対し、ジュリアンは約束を果たしてくれた。その美しい手で、快楽の火種を仕込むように、執拗に愛撫し始めたのだ。  壮絶な快感は、達しなければ至極の愉悦。タクトは射精という逃げ道(終わり)を与えられないまま、快感だけが天井知らずに跳ね上がっていく、地獄のような極楽へと導かれたーー。   ◇  ジュリアンの指が中に潜ると、滑らかな動きで内部を容赦なくかき回し始めた。  抜差しされるたびに、タクトの意志とは裏腹に、いやらしい水音が部屋に響き渡る。 「ん……っ、あ、ぁ、ぁぁっ」  タクトが思わず甘い声を上げると、ジュリアンはその声に煽られるように、肩から薄布を一気に引き裂いた。上半身を無防備にむき出しにされ、そのまま、抗う暇もなく乳首を優しく摘まれる。  指先で転がされて甲高い声が出た。ひくんと腰が震える。 「中が熱く、締め付けてくる」  ジュリアンはタクトの弱い部分を狙い済ましたように、内部を激しく、ぐちゃぐちゃとかき回していく。あまりの気持ちよさに、タクトの目からはボロボロと涙が溢れ出た。 「気持ちがいいのか……?」  ジュリアンがタクトを見下ろし、熱い吐息をこぼしながら、乳首を撫えた。太もも、腰、脇腹、鎖骨、二の腕――どこを責められても過敏に反応し、激しく感じてしまう。 「気持ち、い……っ、あ……っ」  腰をひくつかせて上擦った声を上げ、タクトはジュリアンに触ってもらえない、しどしどに濡れそぼった己の性器へとせつなく手を伸ばした。だが、その指先が届く前に、手首を強く捕らえられて自由を奪われた。 「やめなさい。これ以上は、そこが可哀想だ」  タクトはジュリアンが戻ってくるまでの間、衣服をずらしただけで無理な体勢のまま急いで自慰していたせいで、性器が衣服の繊維と強く擦れ、痛々しくも艶やかな桃色に染まっていた。ジュリアンはそれを見抜いていた。 「ジュリアンさま……でも……っ、でも……っ」 「タクト。そこへ優しく触れていいのは、私だけだ。いいね?」  慈しみを込めた囁きを与えられて、タクトの頬が絶望と渇望で朱に染まった。息を喘がせながら首を横に振るが、ジュリアンはその大きな手で細い胸を優しく撫で、そのまま容赦なく指先で乳首を弾いた。  触れられない性器がまたひとしずくの蜜を溢してぶるりと震え、堪えきれない嬌声が唇から漏れ出す。 「ぁ….ッ」  正面には一切触れられないまま、内部を緩やかに律動させる指の動きだけは止まらない。さざ波のような快感が絶え間なく、波濤のように押し寄せてくる。 「いきたければ、いきなさい」 「う、ぅ……後ろだけで、イったこと、な……んーーーッ」  内部を責め立てる動きに容赦がなくなった。経験のない未知の快楽にタクトは息を詰まらせ、その内壁はジュリアンの指をきつく締め上げる。  尖った乳首が切なげに震え、身体の奥に溜まった熱はもう行き場がなかった。   濡れそぼった性器がビクビクと震え、溢れそうになる嬌声を、タクトは必死に喉の奥で飲み込もうとする。  ーー耳元に、熱い吐息が寄せられ、鼓膜が震えた。 「結界は張っている。声も、気持ち良さも、何もかも、抑えなくていい。我慢だけは決してならない。我慢すれば狂うから」  自分の快楽を全肯定され、ぐちゅぐちゅと淫らな水音を立てて内部が犯された。  静かな寝室で、自分の体から発せられる淫らな音が、あまりにも恥ずかしくて、けれどそれ以上にジュリアンにこうして可愛がってもらってることが嬉しくて、タクトは涙が止まらなかった。 「……っ!」  ジュリアンが、熱で蕩けきった最奥を激しく攻め立てる。同時に、尖った乳首を繊細な指で執拗にグニグニと摘ままれてしまえば、タクトはもう声を抑えきれなかった。 「ひ……っ、あ、あ……っ、乳首、いや……っ」  これまで感じたことのない大きな快楽の波が押し寄せ、タクトはたまらず背を仰け反らせた。 「ああ……っ、あ、ああ……っ! ジュリアンさま……!」  乳首を小刻みに弾かれて、タクトはもう我慢できなかった。  触れられてもないのに、性器の先端から白濁した体液をびゅくっ、びゅくっ、と断続的に吐き出していく。  その都度、脳を焼くような快感に身を震わせた。――触って出すよりも、何倍も気持ちがいい。もはや、表情を取り繕う余裕なんか一切、なかった。  ジュリアンは射精するタクトを見ながら、ゆっくりと唇を舐めていた。  いつもは神々しい神授の美貌がひどく淫らに歪んでいて、タクトは泣きたくなった。荒い吐息を吐きながらタクトが名前を呼ぶと、さらに激しく内部を責め立てられた。 「ジュリアンさま……っ、やだ……っ、や、あ……っ!」  ジュリアンはピタリと動きを止めた。 「嫌か?」 「あ、あ、嫌、嫌じゃない……っ! ジュリアン様……っ!」  ジュリアンはタクトが感じているのを確かめるように、大きな手を広げて両方の乳首を押し潰すように撫で回した。突起が弾かれて腰が揺れ、期待するように性器がまた、ゆるりと勃ち上がっていく。 「うう……っ、あ……っ、あ、きもち……いっ」 「……かわいい、タクト。もっと気持ちよくなれるか?」  ジュリアンの濃い灰青色の瞳には情欲がはっきりと滲んでいて、タクトは訳も分からず震えた。  しっとりとした美しい手がタクトの肌をなだめるように滑り、微かに震える腰を優しく、しかし確実な力強さで引き寄せる。 「あ……ジュ、リアンさま……っ」  タクトは甘やかな吐息を漏らしながら、泣きそうになっていた。  ここでようやく、ジュリアンはその美しい手で、タクトの熱く濡れそぼった性器へと直接触れた。 「あ、ぁはっ……! ジュリアン、さま……っ!」 『ジュリアンが触れた』そのことだけで達してしまうかと思った。  見ればこの世のものとは思えない美しい指先が、タクトの敏感な場所を優しく、けれど容赦のない確実な律動で扱き上げていく。中を翻弄する指の動きと、正面を容赦なく責め立てる手のひらの熱。世界が涙でぼやける。迫る二度目の快感の波に抗うこともできず、タクトはジュリアンの胸元に必死にしがみついた。 「あ、あ……っ、も、我慢できな…ッイく……ッ!」  先端から白濁した熱い体液が、ジュリアンの美しい手にパタパタと零れ落ちていく。  自分の欲望の塊が、高潔な彼の手を汚してしまった。その背徳的な光景に脳が痺れ、呼吸が止まる。  ジュリアンはその汚らしいはずの跡を、微塵も厭うことなく、ただ静かに見つめている。タクトは敷布を強引に引っ張り、その汚れを拭った。  ジュリアンの形のいい片方の眉が上がる。 「タクトにマーキングは……」 「できません!できたらこんなこと、頼んでいません!」  ジュリアンは静かに目を伏せ、手の甲を舐めた。そのすべてが、静寂を裂くようなゆっくりとした動作だった。  ジュリアンが何を考えてこんなことをしたのか、タクトにはさっぱり理解できなかった。  ただ飢えた。  タクトにマーキングができたなら、この美しい人はタクトのものになったのかもしれない。  ジュリアンは襟を正したまま、着衣ひとつ乱れがない。これほどタクトに極上の快楽を与えてくれて、その手を汚してまで自分を可愛がってくれているのに、口付けひとつ、与えてはくれない。  ジュリアンは低く甘い美声でタクトをあやしながら、抱き寄せ、その長い指で律動を始めた。  タクトは強い快感に顔を歪め、必死に嬌声を飲み込んだ。 「タクト、声は抑えなくていいと言っただろう」 「んう……っ、あ、あ……っ、ジュリアン様、ジュリアン様……!」  マーキングして欲しい。  番にして欲しい。  そんな言葉が、口から溢れそうになるのを必死に耐えていた。  …………窓の向こう側には静謐で美しい夜が広がっている。タクトはジュリアンの鍛えられた腕の中、皓皓(こうこう)と輝く銀月が、ジュリアンの灰青色の瞳を濃い銀色に見せているのを不思議に思った。

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