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悪魔の愛で方、英雄の壊し方

雨の時期も明けて、カラッと空気の乾いた晴天の日。ミズガルズは今日も運び屋としての職務を全うしていた。繊細な壊れ物から重量のある着物まで、依頼物は種々様々である。背中に荷物を背負い、汗を流しながら往来を歩く。祓魔師一本だけでは食っていけないのだ、そもそも人に知られるような職でもなければ、拍手喝采を得られるような職でもない。ただ日陰を歩き、星空と共に暗躍するような生活だ。人に褒められることが無くとも、ミズガルズはやりがいを感じている。だからそれで良い。良いのだが、それと生活とは別である。金が無ければ食っていくことも儘ならない。だから、ミズガルズの師匠だって学校の教師をしているし、ミズガルズ本人もこうして働いている。 「あークソ、マジであっちぃ……」 服の袖で顔の汗を拭い、ミズガルズは日の光を睨み付けた。こないだまで雨ばかりで寒かったというのに、なんだこの気温差は、と。それからふと、風邪をひきかけたときのことを思い出し、いけない方向に思考が行きそうになったのを頭をぶんぶんと振って誤魔化した。クソ、あの愉悦野郎……と呟けば、ズキ、と勝手にその夜のことを思い出した腰が痛む。 「くふ」 思考の海に溺れていれば、突如聞き覚えのある笑い声が耳に入り、ミズガルズはばっと身体ごと振り返る。しかし辺りを見渡しても、あの銀色はいない。だけれども、ふわりと漂う、あの独特な薬草の香り。散々脳裏に刻まれた、あの香り。つい足を止めてしまえば、するりと腰に手が這う感覚があった。ぞわっと身体に走った悪寒に、首をぐるんと後ろへ向ければ、唇が当たりそうなほどすれすれの目の前に、シェリーの顔があった。 「っ、!?」 「くふ、どうしたんだいルージー、そんな顔をして」 「てめぇ……こんな往来で何考えてやがる」 「おやおや、きみこそ何を考えたんだい? 一体、ナニをされると思ったのかな」 きゅう、と目を細めて笑むシェリーの手を振りほどき、ミズガルズはチッとひとつ舌を打つ。 「そんなんじゃねぇよ。ただ悪魔であるてめぇがこんだけ人の多い場所で何かやらかさねぇかと思っただけだ」 「くふふ、安心しておくれ。こーんだけうじゃうじゃと人がいても、拙にはきみひとりしか目に入らないよ」 「嬉しくねぇよ。こんなところに何しに来やがった」 シェリーは愉しそうにくふくふと笑い、もう一度ミズガルズの腰に手を回した。そして囁く。 「ただ薬を売りに来ただけだよ。心配しなくても、きみという玩具がある限りは他の人間に手を出しやしないさ」 「……喜ぶべきなのか悲しむべきなのか分かんねぇな」 「くふ! 拙にこんなにも気に入られているんだから喜んでくれていいんだよ?」 「その点に関してだけはぜってぇに嬉しくねぇよ」 いい加減手ぇ離せ、とミズガルズが言えば、シェリーは寂しそうにパッと両手を上げる。またいつでも拙の家に遊びにおいで、という言葉が聞こえた瞬間、シェリーはミズガルズの視界のどこにもいなかった。 「……チッ」 顔を流れ落ちる汗の存在に、ようやく自分の仕事を思い出したミズガルズはハッとしてまた歩き出した。 今度は依頼は失敗しなかった。 ◇◆◇ 獣も寝静まる深夜。ミズガルズは森の中に異変がないかパトロールをしていた。ジージーと虫の羽音だけが耳に突き刺さり、時折木々の葉が擦れ合う音が静寂に鳴り渡る。 「……平穏すぎて怖いくらいだな」 うじゃうじゃとまではいなくても、夜の森の中は大体が魔物の独擅場だ。だからこそこうしてミズガルズは定期的にパトロールをしているというのに、こうも静まり返っていると逆に異変を疑う。 嵐の前の静けさではないのか。どこかに巣を作っているのではないか。それとも―― 「……シェリー。いんだろ」 ぽつりとミズガルズが呟けば、バサ、と大きな羽音が風と共にミズガルズの耳に届いた。 「くふふ! 流石だねェ坊や、どうして分かったんだい?」 「やっぱりな。どうしてもこうしても、これだけ魔物が鳴りを潜めてんだ、上位存在が近くにいる以外ねぇだろ」 上空から降りてきたシェリーはミズガルズの前で止まり、大層嬉しそうに笑った。 「くふ、相変わらず拙のことをよく知っているみたいで嬉しいよ。今日はあんまり邪魔されたくないと思ってねェ。坊やにも久々に会えたんだし」 「わざと避けてたんだわ、アホ悪魔」 「おやおや、どうしてそんな寂しいことをするんだい? いつだって拙を殺しに来てくれていいのに! あァそれとも、のことを思い出してしまうからかな」 シェリーの言葉に、ミズガルズの顔がかぁ、と赤く染まる。悪魔はそれを見て、おや図星のようだ、と実に嬉しそうに笑った。 「ちっ……げぇよ!! たまたま忙しかっただけだわ!! てめぇはオレが殺す、その意思は変わっちゃあいねぇ」 「くふふ、嬉しいねェ。それでこそきみだ」 シェリーはようやく地面に足をつけ、ミズガルズと視線を合わせた。そしてその手袋に覆われた細い指先をミズガルズの唇に当て、言う。 「この元気な口が聞けなくなるのは寂しいからねェ」 「触んな。んで、何の用だよ」 「おや冷たい。特に用がなかったら会いに来ちゃいけないのかい?」 「てめぇは何の用もなく来るようなやつじゃねぇだろ」 ミズガルズの言葉にシェリーはむ、と唇を尖らせる。そして少しだけ不満気な表情で、こてんと首を傾げた。 「拙は本当に坊やに会いたかっただけなのだけれどねェ……そう言うのなら仕方がない、今から用事を作るとしようか」 「は? 何言って、っ!?」 シェリーは一歩で距離を詰め、ミズガルズの頤を掬うと口付けた。目を見開いたミズガルズは慌てて抵抗しようとするも、既に両腕はシェリーの片手によって後ろ手に固定されていた。ミズガルズの手を持ったまま腰を掻き抱き、決して逃がそうとしないシェリーはぬる、と長い舌で唇を割り開いた。 「~っ!」 ミズガルズは必死に呼吸しながら、抵抗しようと身を捩る。しかしシェリーはその程度の抵抗などものともせず、更にキスを深くしていく。段々と蕩けていくミズガルズの瞳に、シェリーは目を細めて笑む。良い気分になって貪欲に貪ろうとした刹那、ガリ、という音と共にシェリーの舌に痛みが走った。シェリーが驚いて細めていた目を見開けば、強く己を睨み付けるミズガルズと目が合った。ゾク、と背筋に走る快感のまま、シェリーは更に舌をミズガルズの口内に押し込んだ。 「んぅっ!?」 ミズガルズの困惑と驚愕混じりの悲鳴が上がる。それを気にもせずにシェリーはご機嫌で青年を蹂躙した。 しばらくして口が離れれば、唾液と血の混ざった薄い桃色の糸がふたりの間にかかり、ぷつりと途切れた。 「――くふ、どうだい? 悪魔の血の味は」 「っ、は、ゲロ不味いわこの、色ボケ悪魔が」 息も絶え絶えになりながらミズガルズは悪態を吐く。その態度が尚更シェリーを興奮させるとも知らず。 「くふふ! あァ本当に、きみはカワイイねェルージー! 余計滾るじゃあないか」 「ド変態か」 「否定はしないでおこうかな」 いい加減離せよ、とミズガルズが言うも、シェリーは握った手を解かない。それどころかにこ、と笑みを深め、ミズガルズの臀部に手を這わせた。 「っおい! こんなとこでするつもりか⁉」 「くふ、あんまり騒ぐと獣たちが目覚めてしまうよ……それに、段々廻ってきただろう?」 「なにが、っ!?」 びくり、ミズガルズの身体が震える。頬は赤く染まり、きゅう、と瞳孔が絞まり、かく、と足が震え出す。明らかに異変が起きている己の身体に困惑しながらもミズガルズはシェリーを強く睨み付けた。 「っ、な、に……しやがった、てめぇっ!」 「くふ、噛んできたのはきみだよ? 拙の血にどんな効果があるかも知らずにねェ」 「ざっけんな……!! っておい、やめろ、触んな!!」 シェリーはくふくふと笑いながらも、ミズガルズの服の下に手を入れ後孔に指を這わせる。焦らすように、皴の一本一本をなぞるかのように動く指に、ミズガルズは息を荒くして逃げようと身悶えた。しかし前にも後ろにも逃げ場はなく、ミズガルズは力なくシェリーの胸に身体を預けた。 「くそ、はっ、くそったれ……!」 じた、と蹈鞴を踏みながら、色欲の籠った目でミズガルズは悪魔を見上げる。まるで懇願するかのような表情に、シェリーの笑みは深まった。 「おやおや、そんな表情をしてどうしたんだい、ルージー。何かしてほしいことがあるなら言ってごらん?」 「っせぇ……なんも、ねぇよ」 「くふ、そうかい? きみのここはパクパクとして今にも拙の指を咥えたそうだよ」 そう言いながらシェリーはミズガルズの窄みに指を入れたり出したりする。その度にびくびくと身体を震わせるミズガルズは、強く唇を噛んだ。それを見咎めたシェリーはぺろ、と唇を舐め上げる。シェリーの血の所為でそれすらも快楽に変わってしまう身体に変えられていて、ミズガルズはひっ、と小さく声を上げた。 「やめっ、ぅあ!?」 「あァすまない、つい入ってしまったよ」 「しらじらし……っ、は、あ、やめ、やめろ……っ!」 「くふ、やめた方が辛いんじゃあないかい?」 悪魔の囁きがミズガルズの脳内に響く。言えば楽になるよ? という言葉にぐらりと理性が揺らぐも、ミズガルズは必死に頭を振ってその思考を追い払う。指の半分ほどを挿入したシェリーは、敢えてミズガルズのいいところを避けて中をまさぐった。焦らすようなその動きに、ミズガルズの腰が揺れる。 「身体はこんなにも素直なのにねェ」 「うっせ、ぇあ!?」 突然一番感じるところをぐっと押され、ミズガルズは悲鳴を上げる。がく、と足が震え、力が抜けそうな膝を叱咤してミズガルズはシェリーを睨み付ける。にこにこと微笑みながらシェリーはとんとん、と断続的に刺激を続ける。段々と抵抗すらも出来なくなっていく様子に、シェリーはミズガルズの手を離すと、後頭部に手を遣り深く口付けた。 「んっ、ふ、んぅ……っ」 ミズガルズは両手が自由になったというのに、シェリーの胸に縋ることしかできない。ぎゅう、とフリルのブラウスを握り締め、上と下から齎される快楽を何とかやり過ごそうとする。その間にもシェリーは指を増やし、ぐちゅぐちゅと拡張するように中を虐めた。 「っは、ぁ、ゔー……っ」 ぼろ、と遂にミズガルズの理性は決壊し、大粒の雫が両目から零れ落ちる。それをシェリーは唇で掬い取ると、カワイイねェ、と笑った。 「どうして欲しいんだい? ルージー」 「やだ、も、やだぁ」 「うんうん」 「からだ、へんなんだよ……っ」 シェリーは笑みを堪えきれない表情で、そうかい、と呟く。そしてミズガルズのいいところを更に強く攻め立てた。 「一度イっておこうか」 「あぁっ!? まっ、やだ、やめっ、……ひぃあぁ!」 「上手上手」 無理矢理高みに押し上げられたミズガルズの頭を、シェリーは優しく撫でつける。後ろだけで達した驚きと、シェリーにやられたという屈辱で、ミズガルズの頭はパニック状態になる。ぐずぐずになった顔で、それでも睨み付けることをやめないミズガルズの虚勢がいつまで持つものかと、シェリーはくふくふと笑った。 「おや、すっかり下着が汚れてしまったね」 「おいっ、やめ、脱がすな!」 ミズガルズの抵抗などものともせず、シェリーは彼の下半身をひんやりとした夜の空気に曝す。ぶる、と小さく振るえたミズガルズに唇を落とし、もう一度ぐっと弱い箇所を圧迫した。 「っひぁあ!?」 「シィー……カワイイ声だけれどね、もう少し抑えられるかい?」 「っせぇ、だしたくて、だしてるわけ……っじゃ、ァっ」 「くふ、そうだねェ、流石に拙の所為かな?」 にやにやと大層嬉しそうに笑うシェリーはぐちゅぐちゅとミズガルズを虐めながら囁いた。 「今きみの中に何本入っているかわかるかい?」 「は、っ? わかるか、よ!」 「当てられたら今日のところは帰してあげようじゃあないか」 シェリーの言葉にパッとミズガルズは顔を上げる。それから必死な表情で視線を漂わせ、自らの感覚に集中した。 「おやおや、こんなにも拙の指をぎゅうぎゅうと締め付けて。必死でカワイイねェ。――でも、そんな風にしては余計気持ちよくなってしまうよ?」 「っい、ふぁ、はっ……」 シェリーは先程から指を動かしてすらいないというのに、中をきつくしたことによって多分に侵入物の存在を感じ取ってしまい、ミズガルズは息を荒くする。チカチカと視界が明滅しているかのような感覚に陥りながら、青年は声を上げた。 「さっ……さん、ぼん……っあぅ」 「おや、まだ二本だよ? そうかいそうかい、三本も入れて欲しかったのかい? 気付かなくてすまなかったねェ」 「んぁあ!? っま、まて、!」 シェリーは笑みを深めながらもう一本指を差し入れる。シェリーを拒むようにうねるミズガルズの中はみちみちと拡げられていった。 段々と快楽に染まっていくミズガルズの脳内に、もう碌な思考は残っちゃいない。シェリーのブラウスを皴になるほど掴み、ミズガルズは涙目で口を開いた。 「もっ……はやく、いれろ……っ!!」 「――こりゃ驚いた。ルージー、きみ、いつの間にそんな芸当覚えたんだい」 「なにが……っだよ、も、てめぇのせいで、つらくて、しかたねぇんだよ……っ!」 「いけないよ、ルージー。そんなにカワイイことをされると」 シェリーは喋りながら指を引き抜き、そこに己のモノを宛がった。ひく、とミズガルズの秘所が期待するように痙攣する。 「思いっきり虐めてあげたくなるじゃあないか」 「っひぁあああ!?」 そしてシェリーはミズガルズの片足を持ち上げ、一気に最奥まで挿入した。ミズガルズの悲鳴のような嬌声が静かな森の中に響き、思わず片手で口を塞ぐ。殺された声によって、ばちゅ、ぱちゅと肉のぶつかる音だけが鳴り渡った。 シェリーは容赦なくミズガルズの弱いところを抉るように擦り、更に奥までノックする。すっかり蕩けた蜜壺はきつくシェリーのモノを締め付け離そうとしない。シェリーがぐりぐりと奥を抉じ開けるかのように押し付ければ、ミズガルズの口から我慢しきれなくなった甘い声が上がった。 「ひゃああぅ!! まっ、やめ、そぇ、やえろ……っ!」 「くふふ、もう活舌が回っていなくてカワイイねェ。そんなに拙の血はヨかったかい?」 「よ、くなっ、ふ、ゔぅ……っ」 ミズガルズは快楽に耐えるためか、それとも声を堪えるためか。ぎゅっと強く唇を噛み締め、くぐもった声を洩らした。しかしシェリーはそれを許さない。 「おや、いけないよ唇を噛んでは……拙のカワイイルージーに傷がついてしまうじゃあないか。ほら、声を押さえたいなら拙が塞いであげるから」 「んぅ……っ、ん、っふ、んぁ」 舌を絡ませながらもシェリーは器用に腰を止めない。段々痛いほどに締め付けてくるミズガルズに、シェリーは限界を感じ始めた。ミズガルズはこれまでに何度達したのかも分からない。最早快楽に溶かされまくった脳は麻痺し始め、眼球は天井を向きかけていた。 「っは、ルージー……っ」 「あぁああっ!!」 シェリーはまるで愛しい恋人でも抱いているかのような声でミズガルズの名を呼び、最奥に吐精した。ミズガルズはその熱と強い突き上げにがくがくと全身を震わせ達し、直後崩れ落ちそうになった身体をシェリーに支えられる。 「おっと……大丈夫かい? ルージー」 「は、はひゅ、だ、じょぶに……みえるかよ、クソが……っ」 まだ熱の抜けきってない表情で、それでも睨み付けるミズガルズにシェリーはにんまりと笑う。 「まだまだ体力はあるようだねェ」 「はっ、!?」 ミズガルズの中から一度引き抜くと、体勢を変えて後ろからシェリーはもう一度強く貫いた。かひゅ、と小さな空気の漏れる音が発せられ、ミズガルズは木の幹に縋るように抱き着いた。 「安心してくれていいよ、ちゃあんときみの熱が抜けきるまで手伝ってあげるからねェ」 「っざ、けんな、あっ、てめぇが、んぅ、やりてぇだけ、ひぁ、だろ……っあぁ!」 「くふ、どうだろうねェ」 こうして彼らの夜は今日も続く。 ◇◆◇ 「今すぐ殺してやる、まじで、その首差し出せクソ悪魔」 「くふふ、そんな生まれたてのバイコーンのような足で言われても説得力がないよ。ほら、拙の家まで連れて行ってあげるから、ベッドでゆっくりお休み」 「誰の所為だと思ってやがるこの色欲悪魔」 「くふ、やめておくれよ、拙は淫魔とは相性が悪いんだ」 「知るか、しね」 「くふふ! 情事の最中はあんなに素直だったのにねェ」 しばらくしてシェリーのベッドの上でミズガルズが寝入るまで、これでもかと悪魔は罵倒を浴びせられたのだった。

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