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悪魔の味わい方、英雄の汚し方
ある日、女は突然やってきて言った。
『私に今祓われるか、私の願いを叶えるか、好きな方を選びなさい』
脈絡もないその言葉に、シェリーは首を傾げた。みすぼらしい恰好をしたぼさぼさ髪の女は、自信だけは人一倍にありそうな勝気な瞳で、強く悪魔を睨み付けた。
そもそも、悪魔というのは人の願いを叶えるようには出来ていない。悪魔という存在は、己の悦楽の為だけに生き、己が哲学の為に人を使い倒すような、そんな生命だ。その流れで人の願いを餌にするタイプもいる、ただそれだけなのだが。シェリーの目の前に立つ女のように、勘違いしている人間も数多くいる。
困ったもんだ、とシェリーは頬に手を遣る。そもそも、何故目の前の女はシェリーが悪魔だと知っているのか。今はそう目立ったことはしていないはずだ。面倒そうだし殺しておくか、とシェリーが爪隠しの手袋を外そうとした、その瞬間。女は言った。
『私はヒーディ。ヒーディ・ミッテルドルフよ。この名前に覚えがないとは言わせないわ』
ぱち、とシェリーは瞬きをひとつ。何故って、本当に聞き覚えがなかったから。これまでにひっかけた女の中にでもいただろうか、と首を傾げれば、ヒーディはカッと顔を赤くして唾が散りそうなほど怒鳴り始めた。
『まさか覚えていないとでもいうつもり!? 悪魔に生贄に捧げられた一族の末裔よ!? 今でもアンタの容姿は私の家に語り継がれているわ、銀髪で血のように朱い目の悪魔だってね!!』
おやまァ、とシェリーは驚きから目を見開く。そして、それならば尚更殺さなければ、一族郎党根絶やしにしなければ、とそう思った。
しかしその殺気を感じ取ったのか、女は一歩後退ると待ちなさい! と焦ったように言った。
『私と契約しなさい! こっちにはこの指輪があるのよ!?』
女が掲げた手には、シェリーがかつて生贄の代金として置いていった、一度だけ悪魔と契約できる指輪が飾られていた。シェリーは溜息を吐きたい気持ちを堪える。その指輪で契約できるのは精々下級悪魔だけ。そんなものに従う道理はシェリーにはなかった。話にならない、と冷めた目で見遣れば、女はそれに怯むことなく睨み返してきた。
おや、とシェリーはそのとき初めて女に関心を持った。悪魔と対峙して――それもシェリーほどの格の悪魔と――怯えない人間がいたのか、と。そして同時に、少しだけ人間で遊ぶのも悪くないか、という気持ちが湧いてきた。
だからシェリーは尋ねた。一体お前が何を己に捧げることが出来るのか、と。女はそれに、強気に答えた。
『私の〝すべて〟よ。彼の正妻になれるのなら何も惜しくないもの。肉体だって魂だって、捧げてやるわ。それで足りないなら私の家族だって持っていったらいいわ』
シェリーはくふ、と堪えきれない笑いを零す。あァ、強欲な人間だ、と。自分の為ならどんな犠牲だって厭わない、最低な人間だ、と。しかしそういった人間は、悪魔の好物であった。
そしてシェリーは言った。それで契約してやろうじゃあないか、と。
女は手を叩いて喜び、後は頼んだわよ! と小さな薬屋を飛び出していった。
女の願いは叶った。好きな男の正妻の座に就き、元の妻を追いやり、憧れた貴族の地位を手に入れた。悪魔と契約したことなんて忘れるほど、彼女は幸せの絶頂にいた。そしてヒーディはその幸せを満喫してきっちり一週間、愛した男の上で死んだ。
まるで魂を抜き取られたようだった、と男は語る。虚ろな目は天井を向き、口はぱっかりと開いたまま、がくんと力が抜けたように男の上に崩れ落ちたという。刹那、くふ、と言う笑い声が聞こえた気がした、とも。
――きっと、悪魔にやられたんだ。
そんな噂話がまことしやかに語られ始め、その家が傾いた頃。また、シェリーの家を訪ねてきたものがいた。
『アンタだな、うちの娘を誑かしたのは』
髪は白く染まり、顔には深い皴が刻まれているというのに、背筋はびしっと伸びた老爺は、ぎろりと強い目線でシェリーを見据えた。その目力には確かな血筋を感じた。シェリーはまた嗤う。そして丁寧に成り行きを説明して見せた。すると老爺はさぁっと顔色を変えてその場に土下座した。
『た、頼む……っ儂の命はどうなってもいい、孫には、孫にだけは手を出してくれるな……!』
それは、悪魔にとってこの上ないご褒美であった。愉悦そのものである。だから、この老爺を使ってどれくらい楽しいことをしてやろうか、と。そう考えた。
しかし、老爺は態度や話し方こそはっきりしているものの、もう長くない命だった。そんな者から未来を奪ったところで、大して面白くない。つまらない。ならば、ならば。
『きみ、どうせ捨てる命だというのなら、拙と友達になってはくれないか――』
「――ぃ! おい!! クソ悪魔てめぇ、人に突っ込んどいてうわの空とはいい度胸じゃねぇか! マジで今日こそぶっ殺、っんぁ!?」
「あァすまない、少し考え事をしていたよ。それにしても、今の隙に逃げるなり殺すなりすればよかったというのに……わざわざ声を掛けるだなんて、ルージー、きみは本当に律儀だねェ。――あァそれとも、構ってほしかったのかな」
「はぁ!? ちげぇ、っひ、あ、まて……っうごくな!」
顔を真っ赤にして慌てたようなミズガルズは、必死に弁明した。しかしシェリーは聞いちゃいない。ミズガルズのいいところを抉るように擦り、突きあげる。悲鳴のような嬌声が上がり、ミズガルズは何とか快楽を逃がそうと身を捩った。
「こォらルージー、逃げないの。焚き付けたのはきみだよ?」
「かひゅっ……おく、やめ……っ、てめぇっが、かって……に、ひぃついただけだろ……ひぁ」
シェリーは逃げようとするミズガルズの腰を掴み、ごちゅ、と最奥まで叩きつけると、乱暴に抽挿を繰り返した。そんな状況でも快楽を拾ってしまうミズガルズは、瞳に涙を浮かべながらいやいや、と首を振る。その幼げな仕草にシェリーはひとつ舌なめずりをすると、ぐい、とミズガルズの身体を持ち上げた。
「っひ!? や、やめ、……これっ、お、く……っ」
「うんうん、一番奥まで入れてあげようねェ」
「あぁっ!? も、もうはい……んね、よばか!!」
ぐりぐり、と捻じ込むようにシェリーはミズガルズの最奥を刺激する。まるでまだ先があるかのように。下から強く突き上げ、入れろ入れろと侵略する。ミズガルズは必死にじたばたと抵抗するも、悪魔の強い力には勝てず。結局のところ、敵わないのだという事実を突きつけられているようで。つん、と鼻の奥が痛くなって。その刹那、いい具合に力が抜けたのか、ぐぽ、という音と共にミズガルズは結腸を暴かれた。
「ぁ、え?」
同時にびゅる、と押し出されたように意思と関係なく精液が布団に散った。
「くふ、入ったねェ」
ミズガルズが目を白黒させているうちに、シェリーは容赦なく動き出す。捏ね繰り回すように、決して抜けないように。繊細に、かつ大胆に。ミズガルズを蹂躙する。
「あっ、ぐ……っひ、ぃう、やめっ、こぁれる……っ!!」
「くふ、壊しやしないよ。ただ気持ちよくて仕方がなくなるだけさ」
ミズガルズは泣きながら幼い子供のようにいやいやとかぶりを振る。しかしそれは悪魔を興奮させる材料にしかならない。
「くふふ……っはぁ、最高だねェルージー! 本当にカワイイよ、殺したくてたまらない相手に無理矢理結腸まで犯されてる気分はどうだい?」
「あひゅ、ぅえ、あ、あぐ……っいま、すぐ……ぬけ、このゆえつやろう……!!」
「くふ! ここまでされても折れないその高貴な心には拍手を送りたいくらいだねェ。……でも、ここは素直だよ?」
「ひぁっ!? まてっ、はら……おすな……っ!!」
「どこまで入っているか丸わかりだねェ。くふふ! こっちも触ってあげようか」
シェリーはミズガルズの鍛えられた腹筋とは明らかに異なる腹の膨らみをぐっと押さえつけ、同時に緩くほぼ精を吐き出しつくしているそれを握り込む。段々とミズガルズの精は透明に近づき、もう何も出したくないと涙を流しているかのようだった。
「ひっ、ぃう、もっ、やだぁ……っ」
「よしよし、気持ちいいねェ」
ミズガルズが苦しみながら快楽に浸れば浸るほど、シェリーは愉悦に嗤う。シェリーが手を離せばミズガルズはくた、とベッドに崩れ落ち、真っ赤な顔で呼吸を繰り返した。しかしシェリーはまだ達していない。硬さを失っていない己の中のモノに戦慄し、逃げようとシーツを掴んだ。だがまぁ、それを許すほど悪魔は慈悲深くない。
「がっ、ひゅ……っ!?」
「くふふ、敵前逃亡とは……いいのかい? それで」
「う、っせ……ひ、やめ、むり、むり……!!」
シーツごとずる、と引き戻され、抜けかけていたものが再び最奥まで叩きこまれる。がくがくとミズガルズの膝が震え、ぷしゃ、と涙が溢れ出た。それでも抽挿をやめないシェリーはミズガルズの顔を無理矢理後ろを向かせ、口付けた。
「っん、んぅ……っは、も、やめ……!」
シェリーはシーツを掴むミズガルズの拳をそっと上から握り込む。まるで恋人のようなその仕草に、ミズガルズは振り払おうとするも力が出ない。それを良いことにシェリーはばちゅ、と強く腰を打ち付け吐精した。
結腸に入れたまま出された所為で、腸の中を液体が逆流していく感覚にミズガルズはゔ、と嘔吐く。そんな彼の頭を撫でつけるようにシェリーがさら、と髪を手で梳けば、それが更にストレスになったのかミズガルズはとうとう胃の内容物を吐き出した。
「おやおや……くふ、よしよし、全部出しておしまい」
「やめっ、ゔ――」
とんとん、と背中を優しく叩かれたミズガルズは、ぇう、と小さく声を洩らしながら吐瀉する。その姿を見ながらシェリーはゆっくりと引き抜き、そしてもう一度打ち付けた。
「っ、ぇ゙!?」
「くふ」
ミズガルズは驚きと衝撃からげぼ、と胃液をベッドにぶちまけ、口許を拭いながら後ろを振り向く。視線の先にはにやぁ、と笑みを深める悪魔がいた。
「て、め……っ!! この、クソ悪魔!!」
「くふふ、もっとその歪んだ表情を拙に見せておくれ」
「し、ね……っ!!」
ミズガルズは己の吐瀉物を隠す猫のようにシーツを寄せて被せると、咳き込みながらも悪魔からの蹂躙に耐えた。夜が明けるまで。
「くふ、ちょうどベッドを買い替えたいと思ってたのさ」
「……まさかわざと吐かせたとか言わねぇよな?」
「くふふ」
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