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悪魔の護り方、英雄の縛り方
だん、と大きな着地の音が静かな路地裏に響く。片手を地面につけて勢いごと後ろに滑り、くるっとナイフを逆手に持ち替えたミズガルズは真っ直ぐ敵を見据える。そして地面を勢い良く蹴り、馬の形をした魔物の首を落とした。
「ふー……B級なら札なしで倒せるようになって来たな……」
ひとつ呟き、それからハッと我に返る。
「っじゃねぇや、んでこんな街中にB級がいるんだ……? 師匠に報告しねぇと、」
とりあえず撤退するか、と一歩踏み出した瞬間、ミズガルズは背後に感じた悍ましい気配にバッと振り返った。しかしそこには誰もいない。ミズガルズは警戒を解かないまま、険しい顔で虚空を睨み付けると師匠特製の札を投げつけた。
「おっとと」
すると何もいなかったはずの空間が端から罅割れ、その向こうから青年が姿を現した。青年と言っても、角も羽も生えた立派な悪魔だったが。
ミズガルズは身構える。悪魔と魔物は根本的に造りが違う。魔物を祓えたからと言って、同じレベルの悪魔が祓えるかと言ったらそんなことはないのだ。悪魔は知恵も言葉も持つ。そして、人間を誑かすことに最も長けている。
だから、ミズガルズが普段言われていることと言えば、『悪魔に遭遇したら耳を貸すな。それが出来ないなら逃げろ』ばかりだった。だから、シェリーとの関係は会話をした時点で負けなのだ。だから、今度はそんなヘマはしない。そう思ってミズガルズは即座に地面を蹴った。
「えっ!? ちょちょ、待ってよ! ってうわ、わ、わぁ!」
しかし目の前の悪魔は、慌てたように両手を振る。それに構いもせずナイフを振るえば、避けようとした結果その場に派手にずっこけた。流石にミズガルズの動きが止まれば、悪魔は安心したように息を吐いた。
「まったく、話くらいさせてよね! びっくりしちゃうじゃん」
「……悪魔と交わす言葉はねぇよ」
「えー!? そんなこと言わないでよ、ボクはキミに興味があるだけなんだよー?」
「知るかよ」
構えを解かずにいながらも、なんだか毒気の抜けるほんわかとしたタイプの悪魔に、呆れ敵意を削がれる。シェリーとはまるで違う、真っ青な瞳。ふわふわの髪から覗く、小さな角。羽も驚くほど小さく、シェリーのそれとは比べ物にならない。
だからと言って警戒を解いて絆されるほどミズガルズもあほではない。ぎろりと強く悪魔を睨み付けた。
「わぁ、こわーい。そんな顔しないでよ、ボクはエルマー。ねぇ、キミの名前は?」
「悪魔相手に名乗る名前はねぇ」
「んもーつれないなぁ。ならほら、キミが好きそうなやり方にしよう! 刃を交えて、ってやつ!」
そう言うと悪魔――エルマーはその身体の小ささに見合わないサイズの大鎌をどこからか取り出した。ほら、おいでおいで! と手招きするエルマーを見て、ミズガルズは間合いを計算する。近付くのは得策ではない、そう察していくつか札を取り出すと、真っ直ぐ投げつけた。
「わ! 全然交えてくんないじゃん!?」
それを大鎌で薙ぎ払いながら避けるエルマーは、ぶー、と頬を膨らませる。それを無視して追加で札を投げつけたミズガルズは、軽やかに壁を蹴って背後を取った。そして首許を狙ってナイフを振るった。
はずだった。
刹那、がく、と足の力が抜け、ミズガルズはその場に倒れ込んだ。状況が理解できず目を白黒させているミズガルズを見下ろすのは、青色の悪魔。
「あはは! 獲れたつもりだった? ざぁんねん♡」
いつの間にかエルマーの持つ大鎌は血に濡れていて、ミズガルズの足がそれに呼応するようにじくじくと痛んだ。視線を落とせば、右のふくらはぎがぱっくりと斬られており。まったく感じなかったその速さにも、油断していた己自身にも驚きが湧いた。
「やっぱりこの血……シェリー様のが混ざってるよね。ねぇ人間、シェリー様とどういう関係? 返答によっちゃあ殺すしかないんだけど」
エルマーはじっとミズガルズを見下ろす。それを煽るように見上げ、ミズガルズは鼻で笑った。
「はっ……アイツとどういう関係かだなんて、オレの方が知りてぇわ、っが!?」
「弱いんだからさぁ、見栄張らない方が良いよ? ねぇ? あー腹立つなぁ、こんなんがシェリー様と関係持ってるなんて」
それがよほど気に食わなかったのか、エルマーは血の滲み出るミズガルズの足を踏みつけぐりぐりと踵を押し付けた。痛みに悶えるミズガルズの顎を大鎌の柄で掬い、ほら、はやくー、と氷のように冷めた目で小首を傾げる。それでもミズガルズは、強く悪魔を睨み付けることをやめない。
「ふぅん……」
エルマーの手がミズガルズの頬に伸び、細く長い指が深く刻まれた左頬の傷をなぞった。
「何が良いんだろ、こんなの。あぁ、よっぽどアッチの具合がいいとか? 良いね、ボクのも相手して、ょ゚?」
エルマーの言葉にミズガルズが顔を顰めるよりも先に、青はミズガルズの視界から消え失せた。そしてふわりと鼻腔を擽る、嗅ぎ慣れた薬草の匂い。
しかし、あの笑い声は聞こえなかった。ただただ感じるのは、純粋な殺気。冷たさすら感じる、強い強い敵意。
「――誰の」
こつ、こつ、と足音がいやに路地裏に響いた。吹き飛ばされたエルマーは、壁に埋もれながらも信じられないような顔でミズガルズの背後を見上げた。
「許可を得て」
不思議と、ミズガルズよりもいくつか小さいはずのその立ち姿は、大きな翼の所為か普段よりもずっと大きく見えた。
「拙のモノに触れている?」
その瞳孔は開き切り、声には怒りが滲み、普段の雰囲気とはかけ離れているその姿にミズガルズは息を呑む。しかしすぐにハッと我に返り、おい! と声を上げた。
「誰がてめぇのもん、」
「きみは黙っていなさい」
「っ」
噛み付こうとしたミズガルズを静かに諫め、シェリーはただエルマーを見下ろした。その瞳は、弁明も釈明も許さないと語っていた。
「しぇっ、シェリー様、違うんですこれはっ、」
「気安く拙の名を呼ぶな。中級如きに許した覚えはない」
「っ……も、もうしわけ、ぃたっ」
ぶわ、と風が吹き、エルマーの肌を斬り付ける。逃げ惑うように凹んだ外壁に背中を付けるエルマーは、直後がん、と顔の真横に突き刺さったシェリーの足にひっ、と声を上げた。
「不快だな……あァ、不快だ。どう落とし前を付けてくれる?」
青色の悪魔はガタガタと震えながらシェリーを見上げ、その子供のような相貌を酷く怯えさせた。それを見ていたミズガルズは、圧倒的な力の差に足の痛みも忘れゾッと背筋を冷やす。オレはこれまでこんなものを相手にしていたのか、と。それなら敵うわけない、と思いかけて、ぶんぶんと頭を振ってその思考を振り飛ばす。
そうこうしているうちにシェリーは何かを思い立ったかのようにそうだなァ、と呟いた。
「その翼と角、捥ぎ取ってしまおうか」
「っ!? お、お許しを……!!」
悪魔にとって、翼を失うということは死にも等しい。翼が大きければ大きいほど悪魔としての強さが図られる。それを失えば、悪魔でなくなると言っても過言ではない。エルマーは逃げようと画策するも、横を向いた瞬間に翼を掴まれ、悲鳴を上げた。
「やっ、やめ、おねが……っあ゙ぁぁあああ!!」
「まずは一枚」
ぶち、と鈍い音が響き、青色の血が舞った。シェリーは掴んだ小さな翼をぽいと地面に投げ捨てる。それから背中からだくだくと流れる血に触れないように、もう片方の翼を掴んだ。いやだいやだと喚き逃れようとするエルマーの背中に足を乗せ、シェリーは勢いよくそれを引き抜いた。
「ぃ゙あああぁぁっ!!」
「……少しはいい声で啼くじゃあないか。ほら、次は角だよ」
「やだっ、いやだ! おねがっ、おゆるしを……っひ、ぎゃああぁ!!」
阿鼻叫喚の眼前に、ミズガルズは絶句する。地面にはまるで湖のように青が染み渡り、シェリーはちっとも笑うことなく淡々と作業をこなすかのように悪魔の象徴を捥ぎ取る。エルマーがミズガルズの方を助けを求めるように見るも、見られたところでミズガルズに出来ることなどありやしない。そのシェリーの有り様にも、猟奇的な現状にもついていけず、ミズガルズはず、と身体を引き摺って後退る。立ち上がることは出来なかった。
そうこうしているうちにもシェリーは角を引き抜き終わったのか、酷く冷たい瞳でエルマーを見下ろした。
「……あァ、腹の虫が治まらん。森にでも捨て置くか」
「っひ!? も、もう、おゆるしを……っ! 出過ぎたことをいたしました、これ以上は、どうか……っ」
「ワームでももう少し良い音を奏でるというのに、お前は命乞いのひとつも上手にできないのか? 最後までつまらんやつだ。拙の時間を奪ったことを後悔して死に晒せ」
「ひぃっ、やだ、いやだ……っ!! うわぁぁぁあああ!!」
シェリーは言いながら空間を開き魔界と繋げると、エルマーの首根っこを掴んでそこへ落した。一体どこに飛ばされたのかなど、ミズガルズにはちっともわからない。ただ、恐ろしいものを見た、という認識だけがあった。
それからシェリーはくるりと振り向き、地べたに座り込むミズガルズを見下ろした。その目は冷たく、しかし先程とは明らかに違っていた。大切なものを見る目。だからと言ってミズガルズが懐くわけでも、怯えるわけでもない。
ミズガルズはただ、強く睨み付けた。
「てめぇのせいで余計なことになったじゃねぇか……! この街に悪魔なんて入れやがって!!」
その言葉に、シェリーは一瞬ポカン、としてから口許を笑みの形に歪めた。この場に来て、初めての笑いが漏れる。
「くふ、それは悪かったねェ。でも呼び寄せたわけじゃあないんだよ?」
「知るか、てめぇが原因で来てんだからてめぇの所為だ」
「くふふ! まァとりあえず、拙の家に行こうか。その足を手当てしなくてはね」
シェリーはそう言ってミズガルズを担ぐと、軽く地面を蹴って空を飛んだ。
「ぅお!? 高い高い高い!!」
「おや、高いところは苦手かい? こりゃ良いことを聞いた。でもこうした方が早いからね、少し我慢しておくれ」
ミズガルズは恐怖心からぎゅっと目をつむり、浮遊感に耐えた。ものの数分でふたりにとって馴染み深い小さな家が見え、シェリーはゆっくりと着地した。
「さ、着いたよ。何はともあれ、その足の手当てをしないとねェ」
「うぷ……気持ちわりぃ」
「くふふ!」
シェリーはミズガルズを担いだまま部屋に上がり、そっとベッドに下ろした。それから部屋中のあちこちをまさぐって古びた救急箱を取り出し、ミズガルズの足に消毒液をぶっかけた。
「っ~~~!?」
「くふ、あァすまない、声を掛け忘れたよ」
「わざとっだろ……てめぇ!」
痛みに悶えるミズガルズに、シェリーは心底愉快そうに笑う。それからガーゼを押し当て、しっかりと止血をしてから包帯を巻いた。
「跡は残るかもしれないねェ」
「構わねぇよ。今更だ」
あっけからんと言うミズガルズに、シェリーは顔を顰め呟いた。
「拙が気にするんだけどねェ……」
「なんて?」
「なんでもないよ。それより、」
シェリーは言葉を切ると、とん、と軽い力でミズガルズの肩を押した。それだけですとん、と後ろに倒れたミズガルズは、嫌な予感がする、と口端を引き攣らせた。
「拙以外の悪魔に触れられるなんて……消毒と、お仕置きが必要だねェ?」
「っ必要ねぇよ! つーかてめぇ、さっきは黙ってたけど誰がお前のモン、っんぅ」
抗議しようと上げた声は塞がれる。ミズガルズがどんどんとシェリーの胸を叩けば、黙れと言わんばかりに両手を拘束される。そして固く結んだ唇に歯を立てたシェリーは、驚きから小さく開いた口の中に舌を滑り込ませる。ミズガルズは文句有り気にシェリーの舌を噛もうとして、つい先日のことを思い出したのか大人しく侵入物を受け入れた。
たっぷりミズガルズの舌を味わってから、シェリーは口を離した。は、と呼吸を整えようと息を吐いたミズガルズをシェリーは笑って見下ろした。
「くふ……良いのかい? 噛まなくて」
「うるせぇ、もうあんな思いはごめんだ」
「くふふ、残念だねェ。あのときのルージー、とォっても可愛かったのに」
「さっさと手ぇ離せよ」
「どうしようかなァ」
ぎろりと睨み付けるミズガルズの視線をものともせず、シェリーはそうだ、と自らのボトムスに着けているベルトを片手で外した。そしてにっこり笑うと、それでミズガルズの腕とヘッドボードを縛り付けた。
「!? てめぇ何しやがる!!」
「大人しくしていてもらおうかと思ってねェ」
「ざけんな、っおい脱がすな!!」
抗議を聞きもせずシェリーは鼻歌でも歌いそうな勢いでミズガルズの服を脱がす。パーカーを腕のところまでたくし上げ、その傷だらけの身体に唇を落とした。それからつんと主張した突起を抓り、指で弾く。びくりと身を強張らせるミズガルズに、まるで怯える必要はない、と言わんばかりに唇を合わせ舐めた。
「ひぅ、おま、それ……っやめろ、」
「ここは触って欲しそうに主張してるよ?」
「生理現象だわ、っあほ」
「くふ……それなら仕方ないねェ」
実に愉しそうにシェリーは抓ったり潰したり弾いたりとミズガルズを弄ぶ。その度に身体を跳ねさせるミズガルズは、ガチャガチャとベルトの金具の音を部屋に響かせた。
「っふ、ぅ……は、はぁ、クソ、」
「くふふ! どうしたんだい、そんなに膝を擦り合わせて」
「うるせぇ……なんでもなっ、ひぁ!」
「おや、そうかい? てっきりここを触って欲しいのかと」
言いながらシェリーはいきり立つミズガルズの股間に手を這わせた。服の上からの刺激にもどかしそうに身体を捩るミズガルズは、焦がれるようにシェリーを見上げる。
「くふ、どうしたんだい? そんなに物欲しそうな顔をして」
「っはぁ!? してね、っひゃう!」
否定しようと躍起になるミズガルズを黙らせるように、シェリーは乳嘴をちゅうと吸った。
「でもね、まだダメ。今日はここでイくまでやめないよ」
「は、はぁ!? 無理に決まって、ひぁ、ぃう」
ミズガルズの驚愕の声を気にも留めず、シェリーは吸ったり舐めたり噛んだり転がしたり、抓ったり弾いたり押し込んだりと好き勝手に弄ぶのをやめない。その度にミズガルズは小さく嬌声を上げ、びくびくと身体を震わせる。
「っむり、むりだから……っ! いけねぇって、っひ、ぁ、」
無意識なのだろう、かくかくと腰が揺れながらもミズガルズは胸を差し出すように身体を逸らせる。縛られた両手は不自由そうに音を鳴らし、ミズガルズの声と共鳴した。
「くふ、そうは言うけれども……段々、ここに気持ちいのが溜まって来ただろう?」
「っな、わけ……ふっ、ぅ」
「そうかい? ほら、ここに集中してごらん?」
きゅう、と強く抓めば、ミズガルズの身体が跳ね上がる。限界が近いようで、は、はっと荒くなってきている呼吸にシェリーはにんまりと笑い再び突起を口に含む。
「はっ、も、やだ……っ、ちんこ、さわれよぉ……!」
ミズガルズの言葉にシェリーは目を見開き、それから細める。そして唇に触れるだけのキスを落とし、意地悪く笑った。
「おやまァ……随分とカワイイおねだりが出来るようになったじゃあないか。でもね、まだダメ。もう少し頑張ってごらん?」
「やっ、むり……っひ、ぃあ、あぅ」
ぎゅうと目を瞑っていやいや、とばかりにかぶりを振るミズガルズを宥めるように、シェリーは乳嘴を舌で転がす。仕上げとばかりにかり、と歯を立てれば、ミズガルズは目を見開いてがくがくと身体を震わせ達した。
「っ~~!?」
「うん、良い子良い子。上手にイケたじゃあないか」
「はっ、はふ、っひ、え、ぅえ……?」
「ご褒美に触ってあげようねェ」
状況が信じられなさそうに瞬きを繰り返しているミズガルズの呼吸が整う間もなく、シェリーはジーンズを脱がし、白濁で汚れた下着も取っ払ってそこへ顔を寄せた。
「っ!?」
「あいたっ」
その仕草に驚いたミズガルズは、整わない思考のまま思わず股間を隠すように膝を曲げ、その勢いでシェリーの顔面を蹴り上げた。ガッと鈍い音が響き、間の抜けたシェリーのあまり痛くなさそうな声が上がった。
「あ……っへ、ざまぁみろ」
一瞬やっちまった、という顔をしたミズガルズは、すぐに取り繕って笑った。シェリーはぽかん、として頬を手で押さえていたが、段々タガが外れたように笑い出した。
「く、くふ、くふふふふ……」
「……きしょ」
「くふふ、やるじゃあないかルージー。拙の顔を蹴るだなんて、くふ、魔王様にもされたことがないよ?」
「てめぇが変なこと、っんう!?」
反論しようとしたミズガルズの口を塞ぐように、シェリーは指を突っ込んだ。そしてぐちゅぐちゅと音を立てて舌を弄び、喉奥を擽るように指を這わせた。
「んぅうー!! ん、んぶ、っ」
「ほら、しっかり舐めないと。ちゃんと湿らせないと辛いのはきみだよ?」
これからきみの中に入るんだから、と口角を上げるシェリーを睨み付けながらも、ミズガルズは噛まずに手袋越しの指に舌を絡ませる。
「そうそう、上手。……はァ、この中に拙のをいれたら気持ちいいだろうねェ」
「っん!?」
「くふ、しないから安心しておくれ。ルージーに舐めさせなんてしたら噛み千切られそうだからねェ」
そう言いながらも口内を蹂躙し続ける指が十分すぎるほど唾液を纏った頃、ようやくミズガルズの口は解放された。そしてそのまま湿った指を後孔に添え、ずぷぷ……と一気に二本、指を差し入れた。
「っ……いっ、きなり、」
「くふ、もう十分慣れてきた頃だろう?」
「慣れて堪るかってんだ、っひぁ!?」
「ほら、ここで上手に快感を拾えているようだし……あァ、それは元からか。くふ!」
「死ね、このクソ悪魔……んぁ!」
とんとん、と一番弱いところを指先で叩かれれば、ミズガルズは我慢が利かず大きく嬌声を上げる。敏感な状態なのだろう、文句を言いながらも辛そうに目を瞑り、ぎゅうと足先を丸めて達しようとしたそのとき、ぴた、とシェリーの手が止まった。
「っ……?」
「おや、どうしたんだい? ルージー」
「はっ、なんも、ねぇ……よっあ!?」
「そうかいそうかい」
イケそうだったのに、と言いた気な瞳で見上げるミズガルズに、シェリーはさも不思議そうに微笑む。馬鹿正直に言う気にもならず、ミズガルズがふいと顔を逸らせば、シェリーは実に愉しそうにくふくふと笑い、再び指を動かし始めた。
「ひゃっ、ひぅ、ぅあ……っあ、ぐ」
「くふふ、気持ちいいねェ」
「うっ、せ……っひ」
執拗に捏ね繰り回されれば声を我慢することも出来ず、ミズガルズはただ与えられる快楽を享受する。びくびくと腰が跳ね再びイキそうになれば、ぴたりとシェリーは手を止める。それが何回も繰り返されれば、ミズガルズも我慢が利かなくなる。
「って、めぇ……!! いいかげ、んにっ、しろ……!!」
「くふ、何がだい?」
「確信犯だろ、さっきから寸止めばっか……ひぁ!」
「まァまァ、そう怒らずに。ほら、気持ちいいねェ」
「あっぅ、っひ、ぃあ……ぅあ、いく、い……っあぁクソ、てめぇ!」
「くふふ……どうしたんだい?」
またミズガルズが達しそうなタイミングで止め、ずる、と指を引き抜いたシェリーはそれはそれは愉しそうに笑う。爛々とした目でシェリーを睨み付けるミズガルズは文句有り気にガチャガチャと両手を鳴らした。
「ほら、どうして欲しいのかちゃんと言わないと分からないよ?」
「……っいか、せろ、!」
「うん、嫌だ」
「はぁ!?」
にっこりと笑って否定したシェリーを、信じられないものを見る目でミズガルズは見上げる。せっかく言われた通りにしてやったというのに、という顔で。
「だってこれはお仕置きだからねェ。拙以外の悪魔に触れられるだなんて、その程度じゃあ到底許せそうにないねェ」
「っじゃあどうしろってんだよ……!!」
「くふふ、頑張って考えてごらん?」
そう言いながらシェリーは再びミズガルズの秘所に指を差し入れ、くっと指を曲げ前立腺を圧し潰した。
「っあぁ!! ひぅ、あっ、あぅ、も、いきたい……っ!」
「うんうん、ツライねェ。指を増やそうか」
「あぅ!? いく、いきたい……!!」
「くふふ! あァ本当に、カワイイねェ」
ぐちゅぐちゅと卑猥な音と悪魔の笑い声が部屋に響く。段々とぼうっとしてきた頭で、ミズガルズは必死に考える。この地獄から解放されるには、どうしたらいいのか。このままじゃあおかしくなる。なんとかしないと。そう考えては快楽に押し流され、びくりと身体に力が入っては発散されぬまま脱力する。
「も、たすけ、て……」
「おや、誰に助けを求めてるんだい? まさか祓魔師のきみが悪魔である拙に助けてもらいたいだなんてこと、あるわけがないよねェ? くふ、あァ、お師匠様かな? くふふ! お師匠様が今のきみの姿を見たらどう思うかなァ? 家族の仇である悪魔にぐちゃぐちゃに犯されてみっともなく喘いでる様子を、っと」
シェリーがペラペラと愉しそうに言葉を綴っていれば、ひゅんと膝が飛んでくる。今度こそは喰らわずにぱしりと受け止めたシェリーは、強くミズガルズに睨み付けられた。
「っきから、べらべらうっせぇんだよ……殺すぞ」
「くふ! そんなにいきがっても、きみは今俎上のサハギンだよ? 拙に与えられる快楽に善がることしか出来ない、可哀想なルージー!」
「てめぇが随分好い気分なのは分かったわ。結局のところ、いれてぇだけだろ? さっさと突っ込めよ」
「うゥん……」
ミズガルズの言葉にシェリーは逡巡すると、まぁいいか、とでも言わんばかりに乱暴にボトムスの前だけを寛げると隆起したそれをミズガルズの後孔に宛がった。
「ルージー、きみはふたつ勘違いをしているよ」
「あ? ~~っ、ぁ!?」
そして声を掛けてから、一気に最奥まで貫いた。ミズガルズはその衝撃に白目を剥き、ぴゅる、と待ち望んでいた絶頂に達した。しかしそんなこと構いもせず、悪魔は律動を開始する。
「っあ、あぅ、っぐ、ひう、ぅあ!」
「ひとつめ、拙はね、きみにいれたいんじゃあなくて、ただきみがめちゃくちゃになってカワイくなる様を見たいだけなのさ。それの手段は問わないけれど、まァ双方が一番愉しいものを選んでいるだけだよ。血みどろになっても拙は愉しいけれども、それじゃあきみが愉しくない上に消耗してしまうだろう?」
「あっ、んぐ、ひ、あぁっ! いっ、いった、いったから……!!」
「そしてね、ふたつめ」
そう言うとシェリーは強くミズガルズの頬を掴み、目線を合わせるとその蕩けた瞳をまっすぐ射貫いた。その迫力にびく、とミズガルズは身体を強張らせる。
「拙は決して好い気分なんかじゃあない……むしろその逆だよ? はらわたが煮えくり返りそうなほどの怒りを、きみに直接ぶつけないように頑張っているんだよ。ねェ、ルージー?」
「っ……もう、だいぶぶつけてんだろうが……っ!」
「くふ、そうかもしれないねェ。でもきみにはもう少し、拙の玩具だって自覚を持ってもらわないと困るなァ」
「だからっ、いぁ、だれが……ってめぇの、もんっ!?」
「頑固だねェ。もう少し理性を溶かす必要があるかな」
ごちゅ、と強く奥まで打ち付け、開けろと言わんばかりに最奥をぐりぐり圧し潰す。その動きに、先日のことを思い出したのか、ミズガルズはじたばたと暴れ始めた。
「っまて、やだ、それはやだ……っ!」
「きみの意思は今必要としてなくてねェ。拙がここまで入りたいからいれる、それだけだよ」
「っざけん、あ゙ぁっ!?」
「ン、はいった」
ぐぽ、と無理矢理に押し開いたそこを、シェリーは腰を掴んで更に攻め立てる。ぐぽぐぽとおよそ人体からしてはいけないような音がミズガルズの腹の中で鳴って、じわ、と茶褐色の瞳が滲む。
「おやおや、カワイイねェ。分かるかい? 今きみは臓器のその奥まで拙に支配されているんだよ」
「あ、っひゅ、ぅ、くそ、くそ……っ」
「くふふ、気持ちいいよルージー、きみは拙を咥え込むのが上手だねェ」
「ころす、ころしてやる……っひぁあ!!」
がつがつと強く突かれながらも悪態を吐くことをやめないミズガルズを、シェリーは笑いながら蹂躙する。殺し合いのような目合 は朝になっても続いた。
「自分が誰のものか、理解出来たかい?」
「オレは……オレだけのもんだ……」
「くふふ! かすっかすの声で言われてもねェ」
すっかり組み敷いて気持ちを分からせたシェリーは上機嫌に笑うのだった。
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