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第29話 慣れ。

 何の魅力もないこんな神父を慕ってくれるのは嬉しいけれど、私は神以外の相手を愛することが出来ない。  ようするに、学生二人からの求愛問題は私自身がなんとか解決させなければならないことなのだろう。 「アル、教会の掃除を手伝いに来たよ」  制服姿のセドリックは学校帰りだ。 「ご両親が心配されるから、一旦家に帰宅して出直しなさい、セドリック」  都合の悪いことは聞いてないのか、私に抱きついてきた。 「俺がいない間、淋しくはなかった?」  淋しいも何も、毎日と言っていいほど会いに来ている相手の腕から逃れようと、胸を押す。  彼の腕から簡単に逃れることが出来たということは、今日は無理強いはしないということだろう。 「今日もそんな気にはなれない?」 「……そうです」  私は嘘をついた。  先日身体を繋げたときから何処かがおかしくて、セドの体温や匂いを感じることで、私の身体は発熱したように燈火が灯るような感じに陥っていた。  まるで彼が施してくれる快楽を再度感じたい、そう願っているかのような錯覚を感じている。  しかし私は彼とそんな慰め合う関係になりたいわけではない。 「アルの心は神様に向いているのはわかってる。本当なら心も欲しい、けど今は友人としての身体を慰めて欲しい」  友人としての好意だけでいい、けれど身体に慰めも欲しいなんて、不純にもほどがある。  私は彼を否定した。 「不純な目で私をみないでください、セド。……そんな君を私が受け入れるはずがありません」 「じゃあ、何故街の教会で俺が好きだと言えたんですか?同情心で、……慰めてくれただけですか?!」  それを言われたら、私は何と答えるべきか考えてしまうところなのだが。 「君は私を慕ってくれた。音楽の才能がない私のピアノが好きだと言ってくれた特別な人です。特別な人を身体を慰め合う関係になりたくはない……」  そう最後まで言う前に、私はグランドピアノの下に押し倒された。 「あなたからの愛情が注がれる相手が神様なら、その身体を慰め合う特別な関係に、俺は立候補します。……好きです、愛しています、アルフレッド」  『二度あることは三度ある』とは、このことなのだろう、彼は私に覆いかぶさり、そのまま唇が重なる。  今更口付けくらいでは驚かなくなくなった私は、やはりセドリックに甘いのだろう。  慣れというものは怖いと心底思った。

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