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第39話 翼をもいだ。

 たとえ冷静な心を持てたとしても、悲観的な考えをしてしまった次の日の早朝は、いくら私でも気力が湧くわけもなく。  薬草畑で手入れをしていたそんなときに、懐かしい声の主が話しかけてきた。 「せいがでますね」  懐かしいその相手は、ダニエル教官だった。  私は内心怯えながら挨拶をした。 「ダニエルさん、おはようございます。早朝の散歩ですか?」  怯えを隠し挨拶をするのは、かなり勇気がいることを知った。 「君と話がしたくてね。会いに行きたんだ、アルフレッド」  あの頃と何も変わらず、教官の面差しは優しかった。  心配は杞憂に終わりそうだと胸をなで下ろし、話を振った。 「お元気そうで、何よりです」 「君もね。まさかアルフレッドが教会で神父をしているとは思っていなかったよ」  教官の声色も落ち着いていたので、私はそのまま話を続ける。 「手紙も書かなくて、申し訳ありません。ダニエル教官に甘えてしまうわけにはいかないと思ったのです」 「……まだ僕を教官と呼んでくれるのか」  瞬間私はハッとした。  その言葉に含む本音を感じたから。  そして、ダニエル教官の声色に違和感を感じたので、聞くなら今しかないと思った。 「つかぬことをお聞きします。……セドリックのピアノ事故の現場に、ダニエル教官はいらっしゃったのでしょうか?……何故そんなことが起こってしまったのでしょうか?」  晩に私と妖精ちゃんが導き出してしまった答えが、真実とは違うものだと言って欲しかった。  教官は優しい人だ、セドリックの身を案じてこの村に来たと言って欲しかった。  優しく微笑みを浮かべた教官から発せられた答えは、私が言って欲しいものではなかった。 「あの事故は僕が起こしたものだよ。アルフレッドも薄々気付いていると思っていたけど、純粋すぎる君には考えつかなかったかな?」  まさかこんな残酷な真実を知ることになるとは思っていなかった私は、ショックを隠しきれず頭が破裂するくらいに怒りを感じた。 「……それはなぜですか!!ダニエル教官、音楽家のあなたが、何故これから開花する才能を摘み取ったんですか?!」  私の問に悪びれることもなく、ただ飄々と微笑むダニエル教官に詰め寄り胸ぐらを掴むと、私はその大きな身体に抱き込まれた。 「彼は音楽の才能に恵まれていた、そして輝くほど美しい。だから僕のもとから離れていかないよう、翼をもいだだけだ。アルフレッド、……君みたいなことがないようにね」  翼をもいだ?  離れていかないように?  ダニエル教官の言葉に私は混乱していた。

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