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第38話 愛の指輪

 歓声が遠くから聞こえる。  レンは力を使い果たして、戦闘形態が解けて人型に戻った。  ぼんやりと海底に向かって沈んでいく。  ――終わったのか。    指一本、動かせないでいると、兵士たちが集まってくるのがわかる。  アルシオン。  フィン。  ルカ。  アクア。  そして、遠くには足を引き摺ってこちらへ向かってくるジョウの姿。  レンは歓声の中、そっと目を閉じた。  その時、ふわりと体が浮かぶ。  そろりと目を開けば、そこには金の目があった。 「……やったな」  低くて、聴き心地の良い声。  大好きな、声。  レンはぽつりとつぶやいた。 「……った」  掠れた声は言葉にならず、オルキウスが口元に耳を寄せてくる。 「………………はら、へった」  すると、オルキウスがくっと吹き出した。 「……ピクニック、するか」  レンは力なく笑った。 「おう……」  その返事を聞いたオルキウスが、ひどく愛おしそうに金の目を緩めた。  オルキウスにそっと手を取られる。二人の指に、揃いの指輪がきらりと輝いた。   『――リヴァイアサンは、女神様から愛の指輪をもらうことで、倒せるようになるんだよ』  どこからか、前世の姉の声が聞こえた気がした。  ◆  海底神殿の女神像が、勝利を祝福するように淡く光る。  天井絵が光に照らされてぼんやりと浮かび上がった。  人魚と対峙する、巨大で恐ろしい蛇のような怪物。  そして、怪物の後ろで大きく口を開いている巨大鮫。  天井の巨大鮫は、まるで怪物の喉元を噛み砕こうとしているようだった。  かつては怪物と並び立つようにしか見えなかったその姿は、今ではまったく違って見えた。    『古き者よ――また、世界は救われました』    ――歴史は繰り返す。  けれども、同じ形ではないのですね。  女神像の口元が、静かに微笑んだように見えた。

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