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第42話 噛む ※

 その後、レンはオルキウスと互いに体を触って、舐めて、口付けをした。    初めはいちいちびくびくとしていたレンだったが、オルキウスの熱っぽい目を見ると胸が疼いて、だんだんと行為に夢中になっていった。 「――あ、う!」    やがて、今まで自分では触ったこともない後ろを解されて、未知の感覚に震える。 「痛かったら言え」 「はぁ、ん……っ! んぅ……っ!」    ある一点をオルキウスの長い指が掠めると、それだけで達してしまいそうな快感が走った。 「あ、あ……それ、だめだ……変になる……っ」 「……なれよ」 「い、やだ……っ」  レンも体格は良い方なのに、オルキウスに軽々と体勢を変えられて、良いように扱われてしまう。  前世を含めて初めての体験。  もっと怖くて、もっと緊張するかと思っていた。  少し怖いし、緊張もしている。  でも、それ以上に、オルキウスと触れ合うことが気持ちよくて――幸せだ。    オルキウスもレンと同じくらい、熱に浮かされているのがわかる。  それを感じると、レンはなんだかほっとして、泣きたい気持ちになった。 「あ、あ……も、もう、むりぃ……っ!!」  しこりのようになっている部分をオルキウスの指が規則的に優しく突き上げてくる。  その度に目の前がちかちかとして、レンはがくがくと足を震わせた。  (な、なんかくる……っ!) 「は、ああ……あ!」  まるで体に電流が走ったような感覚と共に、ぱっと頭で光が弾けた。  そのまま、しばらく感覚が降りてこなくなる。  やっと意識がはっきりしてくると、腰が熱っぽく、重だるい。 「あ……お、俺……」  おそるおそる下半身を見下ろす。  予想通り、白濁がこぼれていた。    (いっちまった……)  レンはじわじわと戻ってくる理性と共に、呆然と己の下半身を見つめた。  (ち、ちんこ、触られてねえよな……?)  それなのに、いってしまった。  (エロゲーじゃん……)    未知の体験に呆然と目を見開いていると、オルキウスに額に口付けられた。 「ひゃっ」 「可愛かったぞ」  そう囁いたオルキウスに、きゅっと唇を噛んで恥ずかしさを耐えていると――後ろに、ぐっと何かが押し当てられた。 「……良いか?」 「あ……」  そうだ。  オルキウスは、まだだ。  レンは一瞬目を泳がせて、ふぅ、と息をついた。  オルキウスをまっすぐ見上げる。 「……来いよ」  すると、オルキウスが一瞬驚いたような表情をする。  やがて優しく笑ったオルキウスに、手を握られる。   「……ゆっくり、息を吐け」  指を絡ませて、しっかりと繋ぐ。  ぐぐ、と圧迫感が増す感覚に、レンは目をすがめた。  ふぅー、と息を吐く。その度に、ゆっくりとオルキウスが進んでくる。  指なんかじゃ比較にならないくらい、大きくて、熱いもの。  オルキウスも少し苦しそうに眉を寄せている。 「っ、ぅあんっ!!」  その時、あの気持ちがいい一点を擦られてレンは思わずのけぞった。 「……ここだったな」  ふっと笑ったオルキウスが、腰を揺らしてそこを狙ってくる。  ごりごりとそこを擦られて、レンは一気に体の奥に熱が戻ってきた。 「や、やば、それ、マジでやば……っ!」 「はあ……締め付け、すごいな……」  弓形に背中をそらせてびくびくと体を震わせていると、汗ばんだ首筋にオルキウスの唇が寄せられた。  そのまま舌で舐め上げられて、ぞくぞくと背筋が震える。  やがて最後までオルキウスの腰がぴったりとレンの腰に埋まった時には、すでにレンは再び達してしまっていた。  はあ、はあ、と荒い息遣いが寝室に響く。  レンは焼き切れた思考の中で、オルキウスの肩に歯を当てた。 「おる。おる。かんでいいか」  涙目になりながら懇願する。小さく笑ったオルキウスに、頭を優しく引き寄せられた。 「噛めよ」  その瞬間、ぶわりと胸の中で嬉しさが込み上げる。  たまらなくなって、レンは目の前の肩口に歯を突き立てた。  ずん、ずん、と体の奥を規則的に突かれる。  肩に噛みつきながら、くぐもった嬌声が漏れる。  そのうち、掻き回すような動きになって、鼻から抜けたような声を上げた。  オルキウスの血の味がする。  痛いだろう。なのに、オルキウスはもっと噛めと言ってくれる。  なんて、幸せ。  やがて、オルキウスの腰の動きが力強く、速くなってくる。  ぞくぞくと腰から湧き上がってくる快感に、一瞬怖くなる。 「あぅ! あぅっ! へ、へんになる……っ! おる、おる……っ!」  目の前の体に必死にしがみつく。  オルキウスは汗を滲ませながら、低く笑った。 「変になれよ。一生面倒見てやる」  ――ああ、なら大丈夫か。  レンはふっと体から力を抜いた。  その瞬間、痺れるような快感が全身を駆け巡る。 「……ぁっ!」  びく、びく、と体が震える。  それでも、吐精はない。それなのに達している。 「……うっ」  オルキウスがレンの最奥で動きを止めた。  そのとたん、腹の奥がじわりと熱くなる。奥深くで脈動を感じながら、レンはオルキウスの苦しそうな顔を見つめた。  汗に濡れて、くっと悩ましげに目をすがめている姿が格好いい。  胸をきゅんと疼かせながら、レンはオルキウスをぎゅっと抱き寄せた。 「……オル」 「……ん?」  息がだんだんと整ってきた頃、レンはオルキウスの腰にぐっと両足で引き寄せ、囁いた。 「……もっと」  その瞬間、オルキウスの体がぐっと大きくなった気がして、深く口付けられた。    再び重だるい熱にさらわれながら、レンは恋しい人との触れ合いに溺れていった。    ◆   「――お、オル。悪い。噛みすぎた」  レンは行為が終わった後、そろそろとオルキウスを見て眉を下げた。  オルキウスの肩や首は噛み跡だらけになっていた。 「回復魔法使えば治る」 「で、でも……痛かったよな。ほんと、悪い……」 「気にするな」  しゅんとしていると、「それに」とオルキウスがふっと目を細める。 「一生懸命噛んでくるお前が可愛かった」 「……っ」  レンはそう言って笑うオルキウスにぶわっと感情が昂って、思わずその体にもたれかかっていた。    今まで、誰も受け入れてくれなかった噛み癖。  支配欲だけだと思っていた。  でも、きっとそれだけじゃなかった。  甘えたかった。  ただ、受け入れてほしかっただけなのかもしれない。 「オル……ありがとな」  そう言うと、オルキウスに抱き寄せられる。 「お前になら、何度でも噛まれたい」 「……で、でも痛いだろうから、たまにな」  気恥ずかしくて顔を逸らすと、頭を撫でられる。  ちらりと見ると、腕にまで噛み跡があった。 「て、てか本当俺めちゃくちゃ噛んでんじゃん……。悪い。背中とか、大丈夫か?」  オルキウスの背中を見てみて――レンは固まった。  そこには、背中一面にタトゥーが入っていた。 「お、オル……、こ、これ……」  一瞬、『反社』の文字が頭をよぎって震える。 「ああ。ノワールヴルの当主の証だ。後継者が決まったら、背負うことになっている」 「そ、そうなんだ……」  息を飲むと、オルキウスがそっと顔を覗き込んできた。 「……嫌だったか?」 「いや、嫌じゃねえよ! 一瞬、びっくりしただけ」  そこでレンはハッと思い出した。  シャチの別名は、『海のギャング』だった。 「……悪い。嫌だとしても、もう離せそうにない」  オルキウスの手が、レンの首筋をゆっくりと這う。  レンはハッとして、まっすぐに金の目を見返した。  おずおずと口を開く。 「離すなよ。……お、俺だって、離さねえし」  そう言うと、オルキウスがわずかに目を見開いて、そしてふわりと微笑んだ。  その顔があまりにも優しくて、レンは思わず見惚れてしまった。   「……オルが何者でも、好きだ」  そう言って、手を繋ぐ。  額をすり寄せて、どちらからともなく唇を寄せ合う。  重なった二人の手で、揃いの指輪がきらりと光った。   「――今度、海獣化してやるか」 「おう。……えっ!?」  

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