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第11話 R

 手当をしてもらった病院のロビーに座っていると、小田桐夫婦と深澤が、泣きそうな顔で現れた。 「茅洋、ごめんな」そう言う深澤に、「深澤さんのせいじゃない」と何度も頭を振る。  そうだけど、そうだけどよ。ごめん。と言葉を詰まらせながら、茅洋の手を握っていた。 「明日は店も休むから、お前らも休め。な? ふかちゃん、ふかちゃんとこも休むだろう?」  小田桐は、項垂れている深澤の肩を抱いてゆさぶる。 「そうだな」と頷く深澤。 「休みの間、キャバクラ行こうか……うっ」  梓から思い切り足を踏まれた小田桐のうめく声が聞こえた。    病院から茅洋の家に向かう間、何も話さなかった。  並んで歩いていくうちに手が触れて、互いの手を絡むようにして繋いだ。ごく自然に。  家に帰っても手は繋いだまま、離れがたい。  茅洋も同じ気持ちでいるのかと思えた。 「シャワー先浴びてこいよ。俺もお前のあとで入るから」  その言葉通りに、茅洋が入り、その後に亮が入った。  何度も来るうちに亮の私物は増えて行った。洋服や下着はタンスに入れてある。  歯ブラシやよく使うヘアケア用品も洗面所に並んでいる。  一緒にいる機会が増えても、共にベッドに入ることがあっても、触れ合うことはなかった。  シャワーから出て、床に座っている茅洋の横に座る。 「ありがとう……助けてくれて」そう言う瞳が揺れている。  茅洋の指が亮の首に触れる。さっき絞められてできた痣をそっと撫でた。 「なあ、しよう。俺、おまえとしたい」  茅洋の瞳が、大きく開かれた、ごくりと喉が鳴った。  勢いよく抱き寄せられて、耳元で「はい」と呟いた吐息に下半身が疼く。    ベッドに入って、お互い身に付けているものを脱がし合った。  部屋は暗い。隣の部屋から差し込む光で、かろうじてどんな顔をしているかわかる。  煽情的で、うっすらとかいた汗にたまらなく興奮した。  茅洋は亮を倒して首に残るあざを指先でなぞり、その手は、鎖骨、胸元に降りてくる。  小さな尖りに触れ、指先でこねられた。 「……っ、はっ……ん」  茅洋の手は、胸だけでなく、腹やへそまで撫であげるように優しく触る。  男とするのは初めてじゃない。じゃないのに、快楽という芽が、その手ですくすくと育てられているように大きくなる。  耳朶を舐めあげられ、首筋を吸われる。逃げようとすると、大きな体でやんわりと抑えられた。  抵抗を優しく包むように封じられ、それが気持ちいい。  茅洋の口が、小さな尖りを舐め、吸い上げるとダイレクトに下半身に響いた。 「は……あん……」  やばい、変な声を出したと反射的に口元を片手の甲で覆う。  それを見た茅洋がふっと息をもらしながら「もっと聞きたい」と小さく笑いながら言う。 「や、やだよ……」と言っても聞かなかった。  頭上で両手を絡めるように繋がれて、また口での愛撫がはじまった。  手首から、腕、脇へ舌を這わせていく。  俺の吐息を感じながら、どこをどうしたらいいか探っているように、動かしているみたいだった。  舌が、尖りに触れた。今度は甘噛みされる。 「は、や……ん……」もう、全身が気持ちよくて、声を我慢しようとしたけどムリだった。  気持ち良いところを見つけては、しつこいくらいに責め立てる。  おかしくなりそうだ。  張りつめた下半身を擦り付けるように腰を動かした。 「さ、触って、茅洋……ここ触って」  切羽詰まったようにそこを押し付けると、茅洋の頭が下へと降りていき、それを口に含ませた。 「ひっ……あ……っ、ああ……」  生温かい口の中で、弄ばれながら、茅洋の柔らかな髪の毛を手で掴んで、快楽に耐える。  徐々に激しくなる口淫に、腰が揺れる。  もう無理だ。出る。 「茅洋……口放して、出るから……で……る」  体が波打ち、自分の屹立から粘液が吐き出されているのを感じていたが、それを吸われたことでさらに脳が痺れるような快楽を与えられた。 「飲むなんて、お前、ばか……」  恥ずかしさで死にそうだ。 「次は、俺がするよ」  起き上って、茅洋の上に乗ろうとしたら、抱きしめられて、耳元で「後ろいい」と聞かれた。  耳元で言うのは反則だ。吐息が腰にくる。  何も言わずに頷くと、茅洋は、ベッドわきにある棚からジェルを取り出した。  俺も鞄の中に入れておいてたけど、用意してたのか……。ちゃんとわかってたんだな。  後ろ向きにさせられて、茅洋の長い指がうなじから背中、尻の割れ目にむかって這う。  同じ経路を舌で這わせながら、ぷつりとジェルを纏った指が窄まりに入ってきた。  細くて長い指の節が、異物感を感じさせる。 「ひゃ……あふっ…………ん」  ぬるりとした感触は知っている。何度か後ろは使ったことがある。  気持ちいいことも知っている。でも、でも今のこれは、脳が溶けそうになる。  なんだよ、こいつ……普段の無表情なあの顔から、こんなことができるなんて信じられない。 「あ……や、やだ……それ……あっ、ん……っ」  指は、内側の柔らかい場所にふれた。びくりと体が跳ねる。  その反応を見逃さないように、押し上げたり擦りあげられる。 「や、は……っ……あ、ああ……」 「気持ちいい? これ? ここは、どう?」  亮からでる蜜のような吐息と同じくらい、茅洋の声も甘い。  ばかやろう。普段そんなエロくないのに、なんだよこれ。  うなじと背中を舐められながら、後ろの気持ちが良いところをしつこくいじられる。こんな快楽は知らない。  どうなってしまうのだろうという怖さと、それ以上の期待が押し寄せて、いろいろ忙しい。 「入れるね」とまた耳元で囁いて、蕩けきった場所に茅洋の昂りが吞み込まれた。  快楽の道が自分の中にあって、それは深いところまであるようで、ずんずんと茅洋が入ってくる。 「あ……あっ……うっ、ん……ま、まっ……て」  4つ這いの体勢になった腰を持たれて、中まで収まったものをぎりぎりのところまで引き抜き、また奥まで突き入れる。  繰り返される運動に、亮の中すべての壁が擦れて身体が熱くなっていた。 「は、はな、花岡さ……んっ、すご……い、は……っ……」  顔は見えないけど、感じているアイツの声が聞こえる。それがたまらなく興奮させた。  止まらない。あまりの気持ち良さに声が上がる。 「あ……っ……ち、ちひっ、ろ……はっ……も、もう……」  力を取り戻していた自分の昂りが、シーツに擦れて熱さで身体がはじけた。 「――――っ」  激しい動きから、茅洋の甘い吐息と共に動きが止み、ずしりと背中に重みを感じた。  気持ち良かった。それでも、どこか心が寂しい。『友達で』最初に付き合おうと言った時にアイツから出た言葉を思い出す。  別に今までだって、こういう付き合いは散々してきたのに、人の運気を上げるだけなのに、事後こんなに虚しい気持ちになるなんてな……。  横たわる茅洋は、天井をみあげて、ぼそぼそと呟いている。  日本語じゃないように聞こえた……こんな時もイ・シワンかよ。  身体がベタベタだ、気持ち悪い。シャワー浴びたいけど、起きあがることができない……。  そんなことをぼんやり思いながら、意識を手放した。

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