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第16話 R
茅洋の部屋に着き、震える手で合鍵を回して開けて入ろうとしたら、ロックがかかって開かない。
なんでだ? ガチャガチャとドアノブを回していると、「まって」という声が聞こえた。中から茅洋の声がきこえ、ドアが開いた。
茅洋が、ぽかんとした顔で立っていた。
夢じゃない。思わずつぶやくと、夢じゃないですと微笑んだ茅洋が答えた。
「今、戻りました。羽田でなにか事故があったみたいで、すごい混んでて……大丈夫ですか?」
座り込んでしまった俺を抱えるように支えてくれる。
茅洋の右手首にギプス包帯が付けられているのが目に留まった。
「階段からおちてしまって、手をついたら、骨折してしまって……お手伝いもできないので帰ってきました」
ドジですね、と苦笑いを浮かべた茅洋を見て、胸を撫でおろした。
別れがくるとしても、死というもので離れたくない。いつか、そういう日がくるとしても今はまだ覚悟ができていない。
良かった、良かったよ無事で……鼻の奥がツンとする。声にならなかった。
部屋に入って、ベランダの植物に元気がなくなってしまったことを詫びた。
俺をソファに座らせ、目の前の床に座り、じっと見つめてくる。
「泣いてるんですか? 植物たちにも寿命はあります。そんなに落ち込まなくても……大丈夫です。愛情をもって接するとまた元気になることもあります」
「……人も、人間もそうだよ」
俺が小さく呟いた言葉に、手を握って答えてくれた。
「……キスしたいです。……花岡さん、キスしていいですか?」
いいよと言う代わりに、上半身を低く倒して茅洋の鼻先に顔を寄せた。
唇が触れると、抱き寄せるように腰に茅洋の腕が回る。優しい甘いキスに覚えがあった。
あの夢だ。くすぐったくなるようなキス。
唇が離れる。もっとしたい。繋がりたいという欲望が沸き立つ。
茅洋の目もそう訴えているように思えた。
「花岡さん、俺、また韓国行きます」
そうか。そうだよな。これは別れ話だよな。
「今度は、一緒に来てください……兄と、父に紹介します」
「……」
何て言った?……兄? 父?
「シワンは兄です。両親が離婚して、父は兄と韓国へ。母と僕は日本で暮らすことになったんです。父は韓国人で、母は日本人だったので……百合さんや深澤さんにきいてませんでしたか?」
聞いてない! 部屋に行ったとか、韓国語が流暢だったとか……そんなことばかり……。
母の最期を伝えることができました。と安心したような表情で微笑した。
なにからどう伝えたらいいか、わからない。ただ、自分の望を聞いて欲しくてたまらない。
「俺のことどう思ってる?」
子供みたいな質問をする。
茅洋の瞳が揺れている。動揺しているのかもしれない。
やっぱりなんでもないと言う前に、「好きです」と告白された。
「それは……友達としてか?」
馬鹿な質問だと思う。でも、気になっている。
「友達は、もう嫌です…………恋人がいい」
俺もだよ。と抱きつき唇を合わせた。
沢山キスがしたい。優しいキスも、甘いキスも、貪るような熱いキスも、全てしたい。
俺の想いが通じたのか、茅洋から唇が離れなかった。
キスをしながら、服を脱がせ合い、ベッドに行くまでに、凄く時間がかかった。
茅洋の舌が口の中で絡みつく、上顎や歯茎をなぞられて、脳がとろけた。
「ね……、なんで……今、んっ、まで……キスっ、んんっしな……かったの」
唇を付けて問うと、唇が離れ額と額を合わせて至近距離で見つめられる。
「初めてキスしようとしたときに、俺の腹が鳴って、それから離れたから……キスしたくないのだと……思ってました……」
「はあ……」
呆気にとられるというのは、こういうことをいうのかもしれない。
俺は、あの時はお互いが、キスを続けられないと思っていた。でも、俺がキスを止めたというふうに茅洋は考えたのだ。
言葉足らずとか、色々あるけれど、俺たちは、まだまだお互いを知らなすぎるみたいだ。
これから知っていけばいいか。
何度も繋がった身体だけど、今日はいつにもまして感じてしまう。
向かい合うように茅洋の上に座る。固定された手首に気を付けながら、左手で撫でられる。触れられている場所がチリチリと熱をもっていく。
胸の小さな実を見つけて、舌で舐めて、甘噛され、びくりと体が跳ねた。その反応を楽しむように愛撫が続く。
むくりと成長をとげた自身を擦り付けるように腰を押し当てた。
「は、あっ、……ん、あ……っ」
「可愛い……すごく、可愛い……」
こんな腰を押し付けている男のどこが可愛いのかわからんが、言われて嫌な気はしない。むしろ嬉しい。
茅洋の手が昂りを包み上下に擦る。先からぬるっとした感触を楽しむように、先端にぐりっと刺激され、背中がしなる。
「やっ……う……あん」
コイツ、これ好きなんだよな。俺も好きだけど。でも欲しい。後ろに……茅洋が欲しい。
深いキスをしながら、俺も茅洋の昂りに触れた。
ぴくり動く素直な反応と吐息が愛おしい。快楽を共にしている甘い空間に酔いしれる。
「ち、茅洋、横になって、今日は俺がする」
頭を下に持っていき、漲ったものを口に含んだ。
「……ふ……」とねっとりした吐息が聞こえる。微かに腰が動き、口に含んだものが成長をしていく。
「は、はな、はな、おか、さん、こっちに……むけて……」
上体を起こしたかと思ったら、あっさり俺の腰を持って、反対に向かされた。
いつの間にか用意していたジェルが尻の割れ目に滴る。茅洋の上になりながら、尻は茅洋の顔の方なのだから、なんとも卑猥な気持ちにさせる。
ぬるっとした指が窄まりにふれた。
「……ん……」
ゆっくりと亮の中にはいってくる指は、一番気持ちの良いところで止まる。
擦ったり押したりすることをしないで、そこからゆっくり引き出し、また挿れる。何度もそれを繰り返す。
焦らされている……。時々掠めることはしても、それだけで、ちゃんと当たらない。
「……ば、ばか、……やだ、……んっ、それ……も、……もっと……はぁ……」
口での愛撫を忘れて、自分の腰を動かす。
茅洋は入れた指を増やすだけで、動きは変わらない。
我慢できずに気持ちの良くなるように、自ら腰を動かしていた。
「すごく……エロい、花岡さん、エロすぎです……」
いやいや、お前だろう。今まで、こんな焦らしたことないじゃん。
なんだか悔しくて、目のまえにある昂りを咥えて、先端に吸い付く。
「……んっ」ねだるような吐息が聞こえて、たまらなくなった。
コイツが欲しい。早く、コイツのものでいっぱいになりたい。
願望が届いたのか、「花岡さんにいれたい」と茅洋の甘い声が聞こえた。
茅洋の口から俺を欲しがる言葉が出たことに満足する。
手首がついたら痛いだろうと思って、俺が上になろうとしたら、茅洋も同じ考えだったらしく、おとなしく先に寝そべった。なんか可愛い奴。
とっくにできあがっている快楽の通り道に茅洋の昂りをのみ込ませる。身体の奥のほうが喜んでいるのがわかる。身を捩って声をあげた。
「ふ……あぁ、はっ……あ……ち、ちひ、ろ……っ」
じっと下から見つめられて、それがまた興奮させる。身体が熱くなって、溶けそうだ。
中で茅洋を感じて腰を振る。絞りとるように収縮されて、その度に茅洋の眉根が寄せられて熱い吐息が漏れる。
色っぽい男だ。俺のものだ。
ほどよくついた腹筋を支えにして、腰を上げる。
熱い塊をぎりぎりまで抜きだす時に触れる浅い気持ち良い場所を掠めとり、また声が上がる。
奥まで沈めて、また上げる。繰り返す動作に羞恥は吹っ飛んでいる。
ただただ気持ち良くて、それしか考えられない。
「ああ、んっ、ん……は……ち、ちひ……ああっ、ん……」
上の動きに合わせて下からも突きあがる。
スピードが上がって、前からはトロトロと先走りで溢れている。
張りつめたそれを触ったら、すぐに果ててしまいそうだ。と思った時に、茅洋の指で下から上へ撫でられた。
「や、……だめ……それっ……」
内壁がきゅっと動いて、茅洋の身体が仰け反る。
「は、はな……おか……んんっ………」
腰を掴まれて、ぐりっと奥へねじ込むように突き上げられた。
茅洋の上にのしかかり、呼吸を整える。身体は、汗やほかの体液でぐちゃぐちゃだ。
首筋に顔を埋める。自分の好きな匂いがして、落ち着く。
顔をあげると、汗で滲んだ色男が、キスをせがんできた。
それに応えるように、舌を絡ませたり、吸い上げたり、啄むキスをする。
唇が腫れるのではないかと思うほど繰り返すうちに、中に収まったままのものがまた熱を帯びて主張してくる。
「お、おい、すこし休憩」
どこうとすると、背中をホールドされてしまう。
「だめ、このまま……俺を感じて……」
縋るような瞳で、またキスを仕掛けてくる。
この後、何回かの仕合をして、翌日起き上がるのに一苦労したのだった。
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