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第四話 紗生の上目遣いギャップ攻め、トオルの抱卵

冬用の毛布を取り出してきたトオルが、ソファーの上で丸まろうとすると、先に寝ていた紗生(さき)が小さな声を出した。 「トオル先輩……………、トオル先輩…………… くっついてないと心配で……。駄目ですか?」 照明を消した部屋の中、トオルが空け渡したベッドに横たわり、行儀良く首元まで布団を被った紗生が、珍しく弱気になっている。 (普段はあんなにしっかりしてるのに、ギャップが凄すぎる!) そんな風に言われてしまっては、無下になどできるはずがない。 トオルはソファーを諦めて、自分の肝っ玉の据わり具合に自惚れながら、紗生の掛け布団の端をめくり上げた。 「ちょっと入れてね、……おじゃましまーす」 とトオルが言うと、紗生がふっふと笑って引き締まった腹筋が上下した。 キシリとベッドを軋ませて、トオルは紗生の隣りへと体を入り込ませる。 狭い布団の中、背後から、紗生の腕が自然な動きでトオルの腰に回された。紗生はトオルのヘソの下で、自分の手を組むとベルトみたいに強く、強く締めつけた。 がっしりと紗生の大きな体がトオルを後ろから包み込むようにぎゅうっと抱き抱える。 『このまま日常に戻れなかったらどうしよう』 今しがた紗生が漏らした不安を、トオルは心の中で思い返した。 『明日目を覚ましたら、世界が消えているかもしれない』 紗生は不安に飲み込まれて崩れないように、必至で自分を律し、踏ん張っているのだとトオルは思った。 トオルは触れる紗生の足先が冷たいことに気が付く。 (冷え性だって、言ってたよね。こんなに冷たくて、眠れるのかな?) トオルはそっと紗生の裸足の足首から下を自分の足の間に挟んで、熱を与える。思いの外体温を奪われて、自分の方が寒くなってきたが、トオルは卵を温める鳥のように辛抱強く、紗生の足先を温め続けた。 トオルと紗生の足の温度が、混ざり合って、同じになった頃。 トオルはうとうとと微睡んでいた。しかし、穏やかな時間が意外なところから破られようとする。 紗生の膝がするすると上がってきて、トオルの足の付け根まで到達すると、こつんと敏感なところに当たってしまったのだ。 (ひゃうっ?!………何?………紗生くん寝ぼけて?) 紗生はゴロンと寝返りを打ち、トオルの上に覆いかぶさるような体勢になって片足をドンと乗せてくる。 (あぁあっ……紗生くん、寝相悪いぃっ………!) トオルは両手で紗生の体を押し返し、何とか逃れようとするが、筋肉質な紗生は腕一本、足の一本がズッシリと重く、なかなか上手くいかない。 (重いっ!) おまけに、無自覚に動く紗生の足がトオルを容赦なく擦り上げていく。 (あぁ……んっ……やぁっ、こんなのっ………! 反応しちゃたら………先輩としての威厳がぁ) (あっ……あっ……こんなはずじゃあ……………!) 揉みくちゃにされ、ボロボロになったトオルはついに、堪え切れずに元凶を起こした。 「はぁ……はぁ………んっ、紗生くんっ、起きてぇ……」 「………どうかしましたか?トオル先輩」 起こされた紗生は、真っ赤になって目をうるませるトオルが悪夢にうなされたのだと思い込み、心配そうに眉を下げると、優しく微笑んでトオルの乱れた髪を撫でた。 「トオル先輩の髪、柔らかいですね」 トオルは紗生に髪を褒められて嬉しくなった。紗生は手を伸ばして大きな手の平でトオルの後頭部を包み込むと、自分の胸元へと引き寄せ、抱え込んだ。トオルは、紗生の熱い胸に押し当てられ、頭を撫でられるのは、悪くないと思った。すっかり安心感に包まれたトオルは、そのまま心地良くスヤスヤと寝入ってしまった。

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