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第十四話 コンドーム一個でも、ドロボーはドロボーです!
「ドアは、強く願った場所へ繋がるのかもしれません」
直前にそう言った紗生 の言葉が頭をよぎる。ドアを開けた先は、いかにもといった雰囲気のラブホテルだった。
「トオル先輩も俺とこういう事したいと思ってくれてたんですね。」
(こういう事って………何?)
押し倒され、パニックになるトオルの足を開かせると、紗生は服の上から自らの存在を擦りつけてきた。
「トオル先輩……っ」
紗生の熱く湿った息が、トオルのおでこの生え際に吹きかかる。
紗生は腰を押し当て、何度も二人の股間を擦り合わせてくる。
「あ……っ、あぁ……っ、あ……あぁん……あぁん……」
(ああっ………勃っちゃう、勃っちゃう!)
「ち、ちょっと待って………紗生くん」
捕食者のように切れ長の目を細めた紗生は、トオルの首筋にぱくりと唇で噛みつくと、しなやかで弾力のある舌で舐め上げた。
「ど、どうして舐めるの……っ?」
「つい……」
髪をかき上げ、艶かしく濡れた瞳を揺らして応える後輩に、トオルは絶句する。
(!紗生くんは『つい』で僕をパクってするの!?)
紗生は器用な指先でシャツのボタンを上から順にひとつずつ外していった。トオルの胸元がはだけて薄い鎖骨が顕になる。薄いシャツが左右に割れると、白い胸から柔らかな腹までが晒された。
「トオル先輩は、おへソまで綺麗ですね」
紗生がそう言ったとたん、トオルのおへソに指が突っ込まれた。
「ひゃんっ!」
反射的にのけ反ったトオルの腰を、紗生がガッシリと大きな手で押さえつけた。そのまま、みぞおちのラインを下腹部へと向かって、熱い舌がツーッと舐め進んでいく。
いよいよ紗生の手がトオルのズボンの縁にかけられた、その時――。
「そ、そうだ、お金! お金払ってないし!!」
トオルが必死に正論を叫んだ。
すると、紗生はピタリと動きを止め、少し考えるとあっさりと身を起こした。
「……… そうですね。トオル先輩との初めてを踏み倒す訳にはいきませんね」
と爽やかににこりと笑って、紗生は頷いた。
細い手首を掴まれ、そのまま引きずられるように玄関ドアを潜り抜ける。自分の部屋に帰ってきて、トオルは心底ホッとした。
(なんだ、聞き分けいいんじゃないか。やっぱりいつもの紗生くんだ)
そう息をついたのもほんの一瞬。紗生は掴んだ手を離すことなく、今度はトオル自身のベッドの上へと押し倒した。
(何この流れ、まだ続いてるの!?)
「トオル先輩、続き……したいです」
「ダメ、……ダメぇ……ッ!」
ジタバタと暴れるトオルに対し、紗生は覆いかぶさるようにして上から乗っかってきた。
すらりとした細身の見た目に反して、筋肉質な紗生の身体は驚くほど重い。密着した肌から伝わる熱くて硬いしなやかな筋肉の質感とともに、抗うトオルをズシリと押し潰す。
紗生は体圧をかけてトオルの動きを封じ込めると、迷いなくその手をトオルの下半身へと伸ばした。
今度こそ、ズボンも下着も一緒に、するっと脱がされてしまった。
「あぁ、紗生……くん……、ゴム、ないからぁ……あ……ダメぇ!」
トオルが身を縮めて苦し紛れの言い訳を口にすると、紗生はその長い人差し指と中指の間に、小さな四角い袋を挟んで、トオルの目の前へすっとかざして見せた。
「ありますよ」
「は?」
ピキーンと青筋を立ててトオルの表情が固まる。それはさっきのラブホのベッド脇に置いてあったアメニティだった。
「戻して来い!!!」
トオルは般若のような恐ろしい顔で立ち上がり、玄関をビシッと指差した。
「ケチ。一個くらいイイじゃないですか」
「良くない! 」
トオルはベッドの上で仁王立ちになり胸の前で大きくバッテンを作って、頑として譲らない。
「ちぇ〜っ」
不満そうに肩をすくめた紗生は、玄関へと消えて行った。
(全くもう! コンドーム一個でもドロボーはドロボーなんだからね!)
お尻丸出しのまま、ベッドに腰掛けてプリプリと怒っていたトオルだったが、しばらくすると、紗生が玄関ドアをガチャリと開けて帰って来た。
心なしか玄関の方から軽快なコンビニの入店音が聞こえてくる。
『ちゃっちゃっちゃりらら〜♪』
(あ、あの聞き覚えのある音楽は……?)
戻ってきた紗生は晴れやかな笑顔で、なぜか手にレジ袋を提げていた。
「紗生くん、それ、どうしたの?」とトオルは引きつった声で尋ねる。
「ラブホに返しに行った後、ダメ元でもう一回玄関ドアを開けてみたら、コンビニに繋がってたんです。先輩の愛を感じましたね。買って来いってことですよね!」
紗生は褒めて、褒めてとばかりにキラキラと瞳を輝かせ、誇らしげに胸を張っている。
「どうなってるの〜?!頼んでないよっ!」
「いやー、こういう時セルフレジは気が楽ですね。」
紗生から突き出された半透明のレジ袋の中には、三つの手のひらサイズの四角い箱。
(ゴムとジェルは分かるけど……、あともう一つはカンチョー?
紗生くん便秘なのかな?)
完全に退路を絶たれてしまっていることに、まだトオルは気付かないのだった。
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