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第十五話 愛の告白とカンチョープレイ

トオルのベッドの真ん中で、紗生(さき)は綺麗にあぐらをかいて座っている。先ほどコンビニで調達してきた浣腸の取り扱い説明書を手に、目を通していた。 トオルは服を剥ぎ取られたままの格好で、神妙な面持ちで正座していた。紗生のする事が気になって落ち着かない様子で、興味津々に紗生の手元を覗き込んでいる。 「トオル先輩。今から真面目な話をするので、ちょっとそれ、手から離してください」 「え? あ、うん……」 紗生に言われて、トオルは自分がいつの間にか手に握りしめていたカンチョーの小箱を慌てて脇に置く。 トオルは、真剣な射抜くような眼差しの紗生に、息を飲んで身構えた。 我に返ったように大きくはだけたシャツを手で合わせ、下着すら脱がされた下半身をなるべく見えないように隠そうと、足をぎこちなく閉じて斜めに傾ける。 「トオル先輩。俺、トオル先輩に恋してます。……一目惚れでした」 (うれしい……!) ハッキリとした言葉にされて、トオルの胸は想像以上に熱くなった。 年がいもなく心臓が跳ね上がった。 「いつだってトオル先輩は、俺が何か一つ出来るようになる度に、見逃さないで、すごく喜んでくれたじゃないですか。 俺はトオル先輩に頼られる存在になりたくて、必死に仕事を覚えたんですよ」 「でも、僕なんかでいいのかな? 紗生くんは、カッコよくて仕事が出来て、誰にでも優しくて、皆んな好きになっちゃうよ……」 トオルの自分を貶める言葉に、紗生は歯痒さを爆発させた。 「違います!トオル先輩は、俺を買いかぶり過ぎです!俺、そんなにモテませんよ? 今は他の誰がじゃなくて、トオル先輩がどう思ってるのかを教えてください」 「それは、……好きだ………けど…」 言いかけた言葉の先に、5年、10年後の現実を想像して、ブレーキがかかる。 慎重派のトオルにとって、恋愛感情だけで走り出すのは、難しかった。 どうしても、予防線を張ってしまう。 「……本気で言ってる? それって、刷り込みってやつじゃないかな?」 相手を傷つけると分かっている言葉を、上ずった声で吐き出し、トオルは無理に痛々しい笑顔を作って、逃げに出た。肌の上の汗が一気に冷えた。 「いくらトオル先輩でも、この想いだけは否定されたくありません……。無かったことに、しないでください」 本気で積み重ねてきた気持ちを「錯覚」と片付けられた紗生の目に暗い陰が落ちた。 絶望の底に叩き落とされた紗生は、内面の海の中で自問自答を繰り返した。どうすれば、この大人の逃げ道を塞げるのか。 静寂の底から唯一の答えを拾い上げ、紗生はトオルを真っ直ぐに見据えた。 「これから、すること、本当に嫌だったら……。 その時は俺のことが『嫌いだ』って言ってください。 その一言で、俺はトオル先輩に指一本触れられなくなりますから。」 その言葉は紗生の恋心を二人の関係ごと完全に壊してしまうだろう。紗生は自分を受入れるか、さもなければ俺を殺せと言わんばかりの二者択一をトオルに迫った。 退路を完全に焼き払ったのだった。 (ああ……僕、紗生くんに抱かれるんだ。紗生くんのを、ココに、挿れられちゃうんだ) トオルの秘部がキュンと疼いた。 拒絶なんて出来るはずもなかった。 トオルは膝を固く閉じて、ただ訪れるであろう衝撃に備えて身体をすくませた。 だが、一向に触れて来ない体温に、トオルは恐る恐る伏せていた目を上げた。 「ん?……何してるの、紗生くん?」 紗生は浣腸の容器を片手に持ち、もう片方の指先でトントンと側面を軽く叩いていた。 「空気を出してるんですよ」 容器の壁の内側についた気泡がすうっと先端へ昇っていくのを確認すると、紗生は指先にくいっと力を込め、容器の先端からプツリと一滴だけ透明な薬液を押し出してみせる。 「そうじゃなくて……、どうしてそんな物使うの?」 「トオル先輩、もしかして、知らないんですか?」 その純粋すぎる反応に、紗生はハッと息を詰めた。 「……まぁ、興味がない人は、一生知らない事かもしれませんね」

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