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第6話「憩いの城」
「手前にあるのは小さな町だけど、もっと奥へ行けば王都だ」
「わぁ……っ」
遠いから、たくさん見える家も玩具のようだ。
でも、間違いなくそこに暮らす人々がいる。外の世界が存在している。
その“当たり前”に感動して、立ち尽くしてしまった。
「よく頑張ったね、ユノ」
太陽のように眩しい笑顔。頭を撫でる大きな掌。
大袈裟だと感じてたけど、これが最後の称賛だと思うとちょっぴり切ない。
けどここから先はもっとしっかりしないといけないから、視線を外した。
「お疲れ様です。同行してくださってありがとうございます」
「こちらこそ。スリリングで楽しかったよ」
楽しかった……だと……?
やっぱり経験値に差があるのか、感覚が違い過ぎる。自分は総合的に地獄でしかなかった。
それに崖から飛び降りたいぐらい恥ずかしい姿も見られてしまったし……。
彼のことは信頼してるけど、昨日までの痴態を思い出すと今すぐ離れたい。
恩は必ず返したいけど、街中に入ったらタイミングを見て別れよう。────そう思ったのだが。
「さて、と。見た目と匂いが酷すぎて注目されちゃってるね。一旦ホテルに避難しようか」
「え」
さり気なく挨拶して別れを切り出そうとしたのに、強引にホテルに連れて行かれてしまった。
数日風呂に入らず森で過ごした為、実際目立って仕方なかったけど、予想外の展開に内心焦りが募る。
受付の人は初め自分達を見たとき露骨に顔を顰めたものの、リザベルさんが差し出したカードを見て驚いていた。
「私がここにいることは、くれぐれも内密にお願いします」
「か、かしこまりました! ただいまお部屋をご用意します」
やっぱり特別な存在なんだろう。本来通される道ではなく、裏ルートに連れて行かれて、一気に最上階までエレベーターで上っていった。
大変だ。
初めて街を訪れたことも、たくさんの人を見たことも、全てが刺激的だ。落ち着いてなんていられない。
「それでは、なにかあればご用命ください。失礼いたします」
案内人が部屋を出て行き、リザベルさんと二人きりになる。
ホテルの基準は分からないけど、用意された部屋はとても素晴らしかった。笑ってしまうぐらい広くて、装飾も素敵。古びた城の中にいた自分からすれば、まるで天国のように純白な世界だった。
リザベルさんは俺の手をとり、歩き出した。
「リザベルさん、どこに……」
「もちろん、バスルームだ」
は。
確かに酷い匂いだから、流れ的には分かるけど。
「お、俺は後でいいです。お先にどうぞ」
「一緒に入った方が効率的だよ。それにここは広いから心配しなくていい」
それでも二人で入るのは変だろ……。
だがあれよあれよという間に服を脱がされ、浴室の中へ入れられてしまった。
全裸を見られるのは初めて。さすがに恥ずかしい。
けどリザベルさんは気に留めるでもなく、熱いシャワーをかけて笑った。
「はー、気持ちいい。生き返るね、ユノ」
「はぁ……」
生きた心地がしない。
広いんだから離れればいいのに、何故か彼の腕の中に抱き締められていた。
服がないだけでこんなに心細いとは思わなかった。もう抵抗する気も起きず、大人しく洗髪される。
備え付けのソープは花の香りがした。とても良い香りだったけど、彼の野趣的な香りも悪くなかったから……ちょっと勿体ないかな、なんて思った。
「ユノの髪は綺麗だね。太陽の下に出ないから尚さらなのかな」
「どうなんでしょ。でも、リザベルさんの金髪も綺麗です」
石鹸を洗い流され、自身の銀糸を指でつまむ。そして彼の髪の生え際に触れた。
「眠ってる貴方を見たとき……宝石みたいだと思った」
「……!」
素直な感想だ。人形のように美しく、非の打ちどころがない青年に一目惚れした。
何故周りは彼に見惚れないのか。心底不思議に思っていた。
「目覚めてほしいけど……もしこのまま眠り続けたら、ずっと自分が面倒を見よう。って本気で思いました」
誰にも見せず、触れさせず。二人だけの世界で、永遠に。
そんな危険な思考に陥っていたことを、赤裸々に明かしてしまった。これまでの倦怠感と、逃げ切れた安心感で頭がおかしくなっていたのかもしれない。
「……ね。俺“達”は普通じゃない、ってよく分かるでしょう?」
私利私欲にまみれた、呪いの一族。欲しいものの為ならいくらだって手を汚せる。
そう思って彼を見上げたものの、
「っ!?」
突如顎を掴まれ、唇を奪われてしまった。
何……っ。
視界が黒で覆われる。抗議しようと口を開くと、熱くて柔らかい何かが潜り込んできた。
彼の舌だ。絡まり、無遠慮に口腔内を侵略してくる。
「んうぅ……!」
息が苦しくて逃れようとしたものの、腰をホールドされて動けない。あまりの激しさと息苦しさに、涙が溢れた。
何で急に……?
獲物を狩る猛禽のように、激しく食らいついてくる。目の前の青年が何を考えているか分からず、怖い。このまま逃げずにいたら食い尽くされそうだ。
向かい合って密着しているから分かる。……彼の性器は猛々しく、俺の下腹部に当たっていた。
経験が少なくてもさすがに分かる。
何かがトリガーになり、また彼のスイッチを入れてしまった。全身が震える。
「あっ!」
やっと唇を離してもらえたと思ったら、今度は無防備な前を握られる。散々彼の性器で擦られたせいで、そこも硬度を持つのは早かった。
呼吸を整えるのに必死なのに、彼の手の動きに合わせて腰を揺らしてしまう。
リザベルはシャワーを止めた。そのせいで淫らな音が浴室に鳴り響く。羞恥心で気が狂いそうだった。
おまけに尖った胸の突起を引っ張られ、激しく仰け反ってしまう。
「リザベルさん、やだぁ……」
「嫌? 気持ちよくないかい?」
上も下もくりくりと指で捏ねくり回される。困ったことに気持ちよくて、ガクガクと体を揺らした。
「体は素直だね。もっと欲しいって泣いてる」
「やっ」
性器を激しく扱かれる。夜中、森で見つかったときと同じように……あっという間に彼の掌に飛沫を放ってしまった。
俺の体はおかしいんだろうか。こんな風に、ちょっと触られただけで達したりして。
「う……っ」
「ユノ? ごめんね、痛かった?」
リザベルさんは心配そうに俺の顔を覗いた。力加減を間違えたのかと焦ってるけど、そうじゃない。
「俺、おかしいんですか?」
「え?」
「こんな……何度も、白いの出して……っ」
しゃくり上げながら言うと、彼は驚き、それから困ったように笑った。
「全然。健康そのものだよ」
「でも……」
「大丈夫。前も言ったけど、男の子なんだから普通だ。だから我慢しないで、もっと出していいんだよ」
果てた性器を握られ、親指で先端を押される。恥ずかしいけど、もう完全に彼に縋りついてしまっていた。
「私も、ユノがあまりに可愛いから困ってるんだ。この綺麗な体を愛したくてたまらない」
「あうっ!」
尻を掴まれ、腰を打ちつけられる。彼の硬い性器が俺の性器をぎゅうぎゅうと押した。
「ユノ、私が怖い?」
「……っ」
優しくキスされる。さっきとは違い、宥めるような、あやすようなキスだった。
それが分かった途端、火がついたように全身が熱くなる。
「怖くない……それより、自分の体が怖い。貴方といると熱くなって……触ってほしくなる……っ!」
赤く熟れた乳首と性器を誇示する。壁に背を預けて脚を開いた。
この世の終わりぐらいの痴態を晒してると思った。引かれて当然……なのに、リザベルさんは苦しげに顔を歪め、俺の左胸に手を添えた。
「……本当に、困ったお姫様だ」
互いに裸のまま、浴室を出た。息づく間もなくベッドに押し倒され、股間をむしゃぶられる。
「あ、あううっ!」
「私も君に触れたくて仕方ない。……両想いだね」
そんなところを舐められてるというのも嘘みたいだ。実はずっと夢の中にいるんじゃないか、と現実逃避したくなる。
でも気絶はできない。気を失いかける瞬間強く性器を吸われ、現実に引きずり戻される。
「リザベルさん……っ……リザベルさん、気持ちいい……気持ちよくて、やぁ……っ!!」
感じ過ぎて辛い。もはや苦しくて、必死に助けを求めた。足をバタつかせても強引に腰ごと抱えられ、最後の一滴まで搾り取られた。
「ユノ……可愛いね」
まだぷるぷると震える性器に、チュッとキスをされる。
それだけで敏感な体は魚のように跳ねた。
「こんなにエッチな体をしていて、今まで無事だったのは奇跡だ」
「ん……」
全身を愛撫される。せっかくシャワーを浴びたのに、汗や愛液でどろどろだった。
「何で……貴方に触られると、こんなになっちゃうんだろう」
純粋な疑問。片脚を上げたまま彼を見上げると、優しく頭を撫でられた。
「私が上手いのもあるし、君が敏感なのもあるし。……相性も良いのかもね」
「相性?」
「そう。私を求めてるということ」
乳首を吸われる。気持ちよくて身動ぎしたが、上から押さえられてしまった。
「だから隠さないで。私は全身全霊、君に愛を注ぐから」
愛。
意味は何となく分かっても、その心理までは分からない。
でも確かに、体はリザベルさんを求めている。たくさん触って、吸って、擦ってほしくて仕方ない。
「リザベルさん、俺……あっ」
また、堪えられずにイッてしまった。今度は透明なつゆが吹き出し、彼の胸とシーツをぬらしていく。
「あう、見ないで……」
「ううん。可愛いから、もっといっぱいしようか」
……下手したら死ぬかも。
限界突破した体を、その後もたんまり愛でられた。泣き叫んでも彼は手をやめることなく。夜が更ける頃には、体の至るところに痕をつけられていた。
同じ男相手に……鬼畜で、変態的。どれほど美しくても、それだけでは清算されない性癖。
だが困ったのは、俺も心から拒絶できないこと。むしろ彼を求め、どうしようもなく反応してしまう。
彼流の“愛する”の意味を知りたいと思ってしまっていることだった。
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