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Episode17 堕チタ証【R18】

そんな折、機会は思いがけない形で訪れた。 宮廷の夜会に殿下が呼ばれ、僕は荷運びの名目でその場に残された。 人混みに紛れて姿を消すことなど、造作もなかった。 第二皇子ノルヴィス様の姿は夜会にはなかった。今しかない。 彼の私室へ向かう足取りに、迷いはなかった。 「――おや」 扉を開けたノルヴィス様は、僕の姿を認めるなり、口の端を吊り上げた。 「珍しいな。弟の飼い犬が、自ら私の元へ来るとは」 「殿下に、内密にお伝えしたいことがございまして」 「内密、か」 粘つく視線が、僕の全身を舐め回す。 ここに来ることの意味を、彼は正しく理解していた。だからこそ、僕は部屋に招き入れられた。 「聞こうか。だが、タダで話を聞くほど私は暇ではない」 「――承知しております」 言葉より先に、僕はその場に膝をついた。 あの日、皇子の私室で覚えた抵抗感などなかった。この身体は既に何のためにあるものか、その意思はもう揺らがない。 纏う衣服のすべてを床に落とし、一糸纏わぬ身体を晒すが早いか否か、ノルヴィス様は僕を寝台の上に押し倒した。 忙しなく貪るように齧り付いてくる彼に、読み通り扱いやすい男だと安堵する。 行為の最中も、僕の頭は冷え切っていた。 与えられる刺激が快楽であるかのような演技をしながら、僕は頭の中で情報を組み立てていた。 半分は真実、半分は緻密に練り上げた虚偽。偽りの中に真実を混ぜるのは、人を欺く際の基本だ。 第一皇子が密偵機関に手を伸ばしつつあるという事実は、これまでの断片から確信していた。それを土台に、あと一押し、この凡庸な皇子を動かすための材料を足す。 「――ん、っ……殿下」 甘い声で名を呼びながら、僕は囁いた。 「実は、耳にしたことが……」 「何だ」 熱に浮かされたような声で、彼が問う。 「第一皇子殿下が、密偵機関の内部に手を伸ばしていらっしゃるようです。もし本当ならば、ノルヴィス様の御身にも危険が及ぶやもしれません」 「――何?兄上が?」 彼は、僕の身体をまさぐる手を止めた。 その目には、打算の色が浮かんでいる。 彼の脳裏には既に、僕が語った以上のことが組み上がり始めているのだろう。 あの非の打ちどころがなく完璧であり続ける第一皇子を、出し抜く好機だと。 「証拠があるのか」 「私が以前に目にした書類の中に、それらしき記録が。ただの下働きの身では、深くまでは分かりかねますが」 「――お前が?」 疑いを含んだ声。だが、僕はここで慌てなかった。 「信じていただけずとも構いません。ただ……ノルヴィス様の御身が心配で」 その一言に、彼の顔から疑念が薄れていくのが分かった。 単純な男だ。自分に都合の良い言葉ほど、容易く信じ込む。 「――良い。よく教えてくれた」 「あ……っ」 行為を再開しながら、彼は満足げに笑った。 「褒美をやろう。お前は、思っていたより使える駒のようだな」 「あ、あっ……んん……ッ」 ――駒。 その言葉に、僅かな苦さを覚えた。だが今は、その苦さすら利用する材料でしかなかった。 夜が更けるまで、僕は彼の玩具であり続けた。 その間、頭の中では次の段取りを組み始めていた。 ノルヴィス様は、必ずこの情報を元に動くだろう。 単独で、あるいは限られた側近と共に、第一皇子の動きを探ろうとするはずだ。 だが、第一皇子が既に密偵機関の一部を掌握しているならば、その動き自体が筒抜けになる。 謀反の疑いをかけるには、十分すぎる材料だった。 ――これでいい。 罪悪難などなかった。本来であれば、僅かばかりでも申し訳ないという気持ちがあってもおかしくはないだろう。 だが僕はもう決めていた。 彼の道を阻む者は、この帝国に一人たりとも残しておくわけにはいかない。 「お前は良い声で啼くな。感じているその顔もそそる。どうだ、私のものになる気はないか」 「……ですが……っ、そうなってしまったら……殿下にお渡しする、情報が……」 「ふむ。それもそうか……ならば仕方あるまい。時折報告に来い。そのたびに褒美をやる」 「あ、あぁっ……ノルヴィス、様……ッ」 彼の抱き方はどこまでも独り善がりで、僕のことなど少しも労わってはいなかった。 それを本当に悦んでいると思っているのだから、おめでたい話だ。 頭の中はおそろしいほど冷えていたが、この身体は齎される刺激に対して生理的な反応を見せていた。それが今は、何よりもありがたかった。 「ヴィルヘルムとこの私――どちらが悦い?」 耳元で囁かれる声音に、ぞわりと肌が粟立った。 そんなもの、比べるまでもないだろう――とは口が裂けても言えないため、僕は恥じらうように彼を見上げながら、言った。 「ノルヴィス様の、ほうが……」 「そうか」 彼の欲に溺れた碧眼が、満足げに細められる。 彼がこんなことを尋ねてくる理由は単純明快だ。 ノルヴィス様はヴィルヘルム殿下に対し、少なからず劣等感を抱いているのだろう。 能力のすべて弟の方が勝っているともなれば、無理からぬ話だった。 「んっ、ぁ、あ、あぁ……ッ」 僕はひと際高く、ノルヴィス様の悦ぶような嬌声で啼いてみせた。 刹那、この身の中に、愉楽に堕ちた証を注ぎ込まれたのを感じとる。 僕は肩で息をしながら、ゆったりと口角を上げた。

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