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1章(2)
自分たちの出会いは、別に大したものではなかった。
高校三年のクラス替えで同じになり、普通に過ごしていたら普通に意気投合して互いに良いなと思える人だったのである。
意気投合といっても、割と思考は真逆だったりすることもある。
それでも合うと思ったのだから、目には見えない何かがぴったりと合ったのだろう。
運命的な出会いでも、ドラマチックな出来事が起こったりしたわけでもない。
穏やかに、美しい湖面を眺めながら小舟に乗って漂うような、何の変哲もない平穏な恋愛だったと思う。本当に、何もなかった。少なくとも自分にとっては。
同性が相手だったことが、まあ少しは変わったことではあったのかもしれないが、特別気にするものでもなかった。
周囲の人が自分たちの関係を察していたのかは知らない。別に、知っていても知っていなくてもどちらでも良いかというスタンスである。明確に何かを聞かれた経験は今までなかった。
学生時代は、とにかくあの人が目立つ人間だったため、高校三年で同じクラスになる前から自分は知っていた。
その後、どうして互いに好きになったのかは、覚えていない。
覚えていないのは、自分だけかもしれないが。
大学時代は互いに目指すものも違っていたため、少し距離の離れた場所に互いのキャンパスがあった。
一緒に暮らすこともできたし、自分としては同棲したかったと言えばしたかったのだが、あの人はあまり自分のテリトリーを他人に踏み入れられることは好まないと知っていたため言い出さなかった。
直接言葉で言われたことはないが、違うと言われたこともない。
もし違うのであれば、あちらから話を切り出されているはずだった。それがなかったのだから、人と暮らせない人なのだと思う。
少しだけ、人とは違う人なのである。
愛想の良い一匹オオカミなのだ。
一人の時間がなくなってしまうとあの人は恐らくだめだ。それを証明するかのように、大学時代、一度も一緒に暮らそうといった類の言葉が出てくることはなかった。
そういう人なのだということも理解したうえで付き合い始めたため、その時も、まあいいかで時間は過ぎていった。
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