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1章(5)

密着していた体をほんの少し離して、寝室に行くのを拒んでみせる。 今日は、本当に、乗り気じゃないのだ。 「んっ、ん、……」 何を言うこともなく奪われるように唇を合わせられ、考えるよりも先に自分の口から甘い声があがった。 冷えた自分の唇がどんどん溶けていってしまうかのように、恋人の唇は熱くてしっとりとしていた。 「ふ…っ、ん、ぁ、」 それ以上の侵入は許すまいと、頑なに閉じていた唇を舌で舐められ唾液で濡らされていく感覚に、ふるりと肌が震えた。 「……温まるだろう」 「そ、…のじゃ、なくて」 「違うなら、何がお望みだ」 顎を掴まれて、身長差を埋めるように指先で持ち上げられる。 角度がぴったりと合わさって、自然な形で寄り添うように唇と唇が重なる。もう何度も繰り返されてきた口付け。あまりにもすんなりと合わさる唇が気持ち良かった。 「ふ、……っん」 さっさと開けろと言わんばかりに、唇を舌で舐められて上唇と下唇の境界がなぞられていく。 肌をぞくぞくと走っていく、甘い痺れを伴った感覚に自然と唇から力が抜けていってしまう。頑なに閉じていた蕾が、男に施される口付けでいとも簡単に綻んでいった。 「んっ、ンく…っ、ふ、んぁ…」 あっという間に口内に侵入を果たした舌で歯列を舐められ、粘膜を嬲られる。 舌同士が触れ合った瞬間に、蕩けていく感覚に襲われて全身が熱を持っていくのを感じた。とろとろとした情欲の火が、じりじりと追い詰めていくかのように下腹に灯されていく。 「ん、んん…ッ、ぁ、は…んっ」 唾液を奪われ、飲まされ、舌の裏側を舐められて、つい自分の手が縋り付こうとしたところで、ようやく熱に浮かされていた意識が引き戻される。 また流されるところだった。 視界の端に入ってきたそれに、自分がなすべきことを思い出す。今日ばかりは熱に任せて溺れるわけにはいかないのだ。

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