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2章(3)

指が画面の上で完全に止まる。 初めに思ったのは仕事である。取引先か、同僚か、接待の続きか、あの人の仕事には、ああいう場面がいくらでもあるはずだった。 肩を抱くのはやりすぎだと、自分の中の冷静な部分が棘を刺してきたものの、次の瞬間には自分の感情的な部分が理由を作った。あの人のやり方は昔から仕上がりが良すぎるのだからあれくらいはやるかもしれない。 だから、きっと。 二人が歩き出す。 女性の腰に、まるでお手本のように綺麗な流れで手が滑り落ちて、女性の腰を自分の方へと引き寄せた。その時の女性の気持ちを、自分は恐ろしいほど正確に想像することができてしまった。 足が、動いてくれなかった。 信号が点滅し始めて、ぶつかりそうになった人が舌打ちして自分を追い越していく。通りの向こうで二人は角を曲がったところだった。 曲がった先に何があるのかは、この土地に詳しくなくても分かる並びをしている。分かっているのに、頭の中には複数の候補が勝手に流れ込んでくる。 食事の店がある。 酒の出る店もある。 土曜のこの時間なら、打ち合わせの続きだってあり得る。一つずつ数えていくのを、止める手段がなかった。 いつ横断歩道を渡り終えていたのかもわからない。でも、渡っていた。渡り切った先で、曲がった道の奥を見ていたのだから。 傾き始めた夕陽が陰を濃くする道の先にあるホテルの中へと、長身の背中が消えていく。 最後まで、こちらを振り向くことはなかった。

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