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2章(9)
「三週間ぶりだな」
三週間。正確だった。自分の中にある、最後に彼に会った日からの経過日数として一致していた。
ただ違うのは自分が一方的に彼の姿を見たあの日だけである。二週間前、自分は彼をあの通りで見た。
しかし、すぐに意識の縁に上がってきたのは数えていたのか、というものだった。数えていた、この男が。自分と最後に会った日を。そこから会えなかった日の数を。
その一言で、喉の奥まで上がってきていた何かが、一瞬で行き場を失った。
三週間ぶり。
聞きたかったこと、聞かなきゃいけなかったこと、確かめたいこと、確かめなきゃいけなかったこと、たくさんあった。捨てたとはいえ計算を頭の中で組み立てたほど、自分は彼に言わなければならないものがたくさんあったのだ。
それなのに。
なのに、たった一言で全部追いやられてしまうのが分かった。胸を重苦しくさせていたものを呑み込めてしまっていた。
言葉を言おうとしたその唇は微かな吐息しか漏れなかった。薄く開いたそれを見ていたのか、瑞樹が自分の言葉を待つよりも早く動いた。
自分が両手で持っていた缶を瑞樹の手が奪い取り、恐らくはテーブルへどけて、その動きを見る間もなく自分から目を閉じた。
瞳が瞼に覆われると同時に唇が重なって、すぐに深くなった。
「ん……っ」
指先が項を撫でてから大きな手のひらが後頭部を支えて、逃げ道を塞がれる。角度を変えながら舌が入ってきて、上顎を舐められて、それだけで背中が跳ねるのが分かった。
この人のキスは昔からこうだ。
そして今日も何も変わらない。変わらないことが分かった瞬間に、目の奥が熱くなった。前置きが短いのに乱暴ではなくて、こちらが逃げようとする方向を先回りして塞いで、舌を絡められる。
「ふ、う……ン」
頭の後ろを支えながらも覆い被さるように体重をかけてきて、どんどん追いつめられていく。
息が上がる隙間を埋めるように唇を重ね、唾液を飲まされ、舌を吸われる。
力が抜けそうになる両手の指先でどうにか瑞樹の胸元のシャツを掴み、しがみつく。しがみついていた。突き放す動作は一つもなかった。
「はぁ……ッ、あ、」
シャツの下に潜り込んだ手が素肌の背中を撫で、背骨の窪みをなぞっていく。その些細な刺激に睫毛を震わせれば、瑞樹が完全に覆い被さっていた。
ソファを背にしながら、押し倒してきた男の顔を見上げ、唾液を飲み込む。瑞樹の指先がシャツのボタンを外していくのが分かった。
「あっ、待っ…て、ちょっと、ここじゃ……」
「ここでいい」
いいわけがあるかと思ったはずなのに、シャツが肌蹴られた鎖骨に唇が落ちてきて、熱い体温を感じた瞬間にどうでもよくなってしまった。
舌で肌を舐めてから、微かに歯を立て吸う。
ほんのりとした気持ち良さと痛みが同時に這いあがってきて、鼻から抜ける声をあげる。その声を聞いて満足したように、赤くなったそこをもう一度舐めてから、唇が下へと移動していく。
「まって、って…ん…っ、ふぁっ」
「待てると思うのか」
「あ……っ、…ッ」
耳元で落とされた声に、勝手に吐息が漏れ出て、腰の奥が重くなった。ほんの少し散らばっていた髪を指先でよけながら、剥きだしの耳を食まれる。
「お前も、待てないだろう」
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