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完結編 獣と乙女⑦-2
「しばらく、二人でいよう」
ぽつりと貴良が言った。
「ん?」
なんのことかと目を瞬く。
「子ども。しばらくは、悠心と二人でいたい」
「えっ、でも……。良いのかよ」
周囲から多大な期待を寄せられているのに。
貴良は頷いた。
「父さんにも、散々言っている。あの人も懲りないが。……でも、こればっかりは好きにさせてもらおう」
「お、俺は良いけど……本当に?」
「ああ」
貴良は悠心の髪を撫でて、少し口ごもった。
「だってお前は……きっと生まれた子を可愛がるだろう」
「? うん。そりゃあ」
貴良との子どもなんて、可愛くて可愛くて仕方ないに違いない。
「……だからだ」
「へ?」
貴良は表情を曇らせた。
「お前は、子どもにばかり構うだろう」
「……」
一瞬、絶句した。
ぽかんと口を開けて、目の前の仏頂面を見つめる。
「……まさか、まだ生まれてねえ子どもに妬いてんの?」
「……ああ」
大きく目を見開いた。
じわじわと口元が緩む。
「……ぷっ、あははは」
「……笑うな」
思わず吹き出すと、貴良が苦々しい顔をした。悠心は思わず貴良にぎゅっと抱きついて、その首元に唇をたくさん落とした。
「お、おい」
「かわいい、貴良」
笑っていると、気がつけば目尻に涙が滲んでいた。それを指で拭いながら、悠心は貴良の首元に顔を埋める。
石鹸とシナモンの香りを嗅ぎながら、はあ、とため息を吐いた。
「……ばかだな」
そう言った声が少し震えた。
悠心なんかより、ずっと優秀な男なのに。
それでも今は、どうしようもなく可愛く見えた。
貴良の唇を甘噛みする。
「……なあ、もっかいする?」
そう囁けば、切れ長の目にまた熱がこもった。
大きな手で頬を撫でられる。そのまま、深く口付けられた。
指を絡めながら、悠心は心の底からこの男と番になれて良かったと思った。
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