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第4話
飲み会で父以外の男性に能力を発揮した身体に驚きつつも怖さも襲った。
このまま彼の食べる姿を見ていたら、間違いなく精を吐き出してしまう。
その日は洲永にも他の誰かにも下半身の変化に気づかれないよう、体調が悪いふりをしてお手洗いに駆けこんだ。
「ふぅ……」
個室でひと息ついたあと、瞼を下ろして洲永の口元を思い浮かべながらひとりで慰める。
声が漏れないように手のひらで口を覆いながらも「んっ」と喉奥から喘ぎ声は零れ、頂点を極めてしまった。
「……なんつーことしてんだ」
居酒屋のお手洗いでこんなことしている自分と洲永をネタにして自慰をしたことは罪悪感しか残らない。
ざぶざぶと後悔も同時に洗い流すかのように手を洗ったあと、俯いたまま席へ戻る。
すると酔っただけではなく違う意味で青白い顔色をしている匠海に対して、洲永は「帰るか? 駅まで送るぞ?」と心配をしてくれた。
「ちょっと……大勢での飲み会が苦手なだけで」
匠海は嘘だとバレないように洲永に告げると、隣に座っていた同じ部署の女性が「浮間くん、ひとりメシが好きなんだって。営業回りのない日にランチ誘っても絶対行ってくれないんだから」と膨れた表情を作った。
「まぁ、浮間の気持ちも分からなくないが、誰かと食事する時間も料理を美味しく食べるスパイスになるぞ」
別に誰かと食べることが嫌いなわけではない。この能力が発動するのを未然に防ぎたいからだ。
「し、静かに味わいたいんですよ……」
「別に誰かと喋りながら食べなくてもいいと思うぞ。俺も食べながら喋るのは苦手だ。じゃあ今度、俺と一緒にランチ行くか?」
食べている姿とはうって変わって、お酒の入った洲永はけだるく頬杖をつきながら匠海をとろんとした目つきで見つめていた。そんな表情をされたら特殊能力を持っていなくても身体が熱くなりそうだ。
「だってもう……洲永さんは品川エリアに異動でしょ。ランチへ行く機会ないですよ」
「ふうん。俺とそんなにランチしたくないのかよ」
曖昧にごまかそうと匠海は酒を胃に流し込む。すると彼は「浮間とメシ食べに行くのは楽しそうだな」とくつくつと肩を小さく震わせて笑った。
もし、一緒にランチすることになったら、どうなってしまうのだろうか──。
匠海はそのときの洲永の表情を忘れられそうになかった。
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