5 / 8

第5話 海岸ライブ?

 そこに恭司が入って来た。お供を数人連れている。屈強な組員たち。 「どうした、揉め事か?」  さっき、からんでいた客が恭司の顔を見て静かになった。 「お客さん、外まで聞こえてましたよ。 M会の浦部を知ってるとか?  私も浦部とは懇意なので、 一度挨拶させて貰おうか? あんた、名前は?」 「いや、俺はただ、有名なギタリストの演奏を聴いてみたかっただけだよ。」 「あんまり、人の名前出さない方がいいですよ。」  恭司がドスの聞いた声で言った。  リキが店にあったギターを取って何か弾き始めた。いい声で寂れたブルースを歌う。  その場が静かになった。 渋い声で渋い曲を歌った。その場がまるでライブハウスのように懐かしい思いのする曲で溢れた。  リキのまずまずヒットした歌だった。 男の孤独を歌う切ないブルース。  拍手と共に恭司が 「いやぁ、今日のお客さんはラッキーだったね。 リキの生歌が聞けて。」  夜の海の家も少し賑わって来た。お客さんがそれぞれリキが来ている事を仲間内に連絡したようだ。ゾロゾロと集まってくるお客さん。  シドが 「店に入りきらない!」  リキはギターを持って砂浜に出た。砂の上に座ってまたギターを爪弾く。  海岸が即席のライブ会場のようになった。 恭司の組の者も、腕に覚えのある奴はそれぞれ楽器を持ち寄った。みんな店に置いてあるのだ  簡単なキーボードや充電式のミニアンプ。 ベースギターやスネアドラムが集まった。 「すごいね。波で大きい音も大丈夫みたい。 思い切って音が出せる。」  何故か盛り上がってしまった。リキはもうボトルを空けて酔いどれになっている。  ノリノリのブルース。昔のヤードバーズのナンバーやR&Bが次々に演奏される。 「いいねぇ、みんな適当に合わせても、ちゃんと音楽になる。」  恭司は不審な動きをする男に気が付いた。 蜜の後ろにピッタリと張り付いている。距離が近い。ほろ酔いの蜜は無防備だ。その美貌に変態が寄ってくる。  蜜の耳元で何か囁いている。 「ウチに可愛い子猫が生まれたんだよ。 見においで。」  蜜が猫好きだと言ったのか、そんな誘い文句で 酔っ払った蜜を懐柔しようとしている。  いち早く気づいたシドと仲間が、そいつを海の家の裏に引っ張って行く。  脅して家を聞き出した。割と近所だ。 そいつは逃げるように帰って行った。 「子猫がひどい事されないといいけど。」  心配そうな蜜に 「俺たちの仲間が家を見張ってるから大丈夫。」

ともだちにシェアしよう!