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第9話 夕立

「海の家にいなくていいの?」  蜜はシドの仕事が気になる。 「ああ、テツさんに言ってきたから。」  昼間は暇なので、ゆっくりしてこい、と言われたらしい。 「なんか、テツさんたち、ニヤニヤして、 行ってこい,なんて言うんだ。」    海水浴客らしい親子連れが眉をひそめてすれ違う。子供がシドのタトゥーをじっと見ている。 「見ちゃ、ダメよ。」  母親が手を引っ張って行ってしまう。 「何だよ、感じ悪いなぁ。」  蜜が聞こえるように言う。 「いいんだ、気にすんな。」 「子供は見たいんだよ。 ホントに絵が描いてあるのか、 擦っても落ちないのか。」  シドが笑って 「興味あるのは蜜のほうじゃね?」  二人でビーチロードと名付けられた寂れた海岸道路を手を繋いで歩いていると、突然雨が降って来た。 「夕立だ。そういえば入道雲が大きかったな。」  いきなりの雨に二人とも頭からびしょ濡れになってしまった。走って蜜の家に駆け込んだ。  合鍵で玄関のドアを開けて飛び込む。 「とりあえず、お風呂に入ろう。」  蜜は二人一緒に入るのが当然だと言う顔をしてシドの手を取った。  躊躇しているシドに不思議そうな顔をして 「寒いから早く入って。」  熱いシャワーでお互いにボディソープを泡立てた。真っ赤になってシドはそそくさと、出て来た。大きなタオルを投げて蜜が聞いた。 「タトゥー、ちゃんと見せてよ。」 「今日はリキさんはいないのか?」 「うん、横浜のスタジオだと思う。」 「蜜一人で危ねえな。 リキさんっていい加減だ。」  あの変態が張り付いていたのを思い出した。 蜜が奥からスウェット上下を持ってきた。 「ちょっと大きいかな? これは新しいから、とりあえず着てみて。 あ、上はまだ着ないで。  髪をタオルで拭きながらソファの隣に座った蜜が言った。 「タトゥー見せて。腕と肩だけ? 背中は?」 「やめろよ、くすぐったいよ。」  指で入れ墨を確認するように触ってくる。 背中を向けていたシドが振り向いた。 「背中はまだ、入れてない。 彫り師に入れて貰わないと、自分では出来ないからな。」 「あ、何してんの?」  蜜に背中にくちづけられた。

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