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第10話 普通のこと
「何? 何してんの?」
シドは慌てた。距離の近い蜜に驚く。
「うん、綺麗な背中だな、って思ったの。」
だからって、なんでくちつけてくるんだ。
「蜜はいつもこうなの?」
「ううん、僕、リキの所に来る前は怖い人に
飼われてたから。」
「飼われてた、って何だよ。」
いきさつを聞いてはいけないような気がして、くちごもる。
座ってスウェットに手を通しながら、蜜の話を聞いた。理解できないような話だった。
「僕はお金で買われたの。
ママが僕を売ったんだ。」
シドは混乱した。蜜のいう事はよくわからない。シドもヤクザだから、酷い話はよく聞く。
借金のカタに女を風俗に沈める話とか。
シドの永田組では御法度だ。そんな事をやれば破門だ。
「シドは恋愛とかしたことないの?」
「彼女がいた事はあったよ。」
10代の頃、付き合った女とは、ヤクザにゲソ入れて、入れ墨を彫った所で別れた。それ以来、女とはたまに遊ぶだけだ。
「僕とセックスしよう。」
「男とした事はないよ。
リキさんはどうするんだよ。」
「リキは好き。でもシドも好きなんだ。」
そこに力丸がやって来た。
「ニャー。」
「あ、猫、可愛いなぁ。」
ヒョイとシドの膝に乗った。
「シドって猫好きなの?」
「ああ、大好きだ。」
だから動物虐待は許せない。
シドは恭司たち始末屋の仕事を知らなかった。
組の仕事を手伝っていれば、いずれはその裏家業の事も知るだろう。
蜜が抱きついて来た。
「何だよ、おまえ男だろ⁈」
「えっ?これは普通の事だよ。」
蜜が股間を触ってくる。
「リキさんともこんな事するのか?」
蜜は複雑な顔をした。
「じゃあ、シドは女の人とならするの?」
「そんな事、聞いてどうするんだよ。」
それでも抱きついてくる蜜の可愛い仕草に惑わされる。
(俺は経験不足だな。
極道が何ビビってんだよ。)
蜜の顔を両手で包んで丁寧なキスをした。
手の中で震える長いまつ毛の可愛い顔に思わず激しいくちづけをした。
舌を絡ませて、目を瞑って、夢中になる。
「あ、はあ、シド、好き。」
思い切り抱きしめた。
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