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第19話 初めての介添え

「飛んで火に入る夏の虫、だな。 虫ケラみたいに捻り潰してやる。」  動画に映り込んでいた奴らも、恭司たちの情報源で炙り出している。日本に来てたら奴らは嬲り殺しだ。C国に帰っても、逃げ回る人生だ。  C国内でも、世界から顰蹙を買っている虐待動画制作は、国の汚点になっている。 「いいか、シドは初めてだろ?」  恭司がシドの目を見て確認する。 今日は金網デスマッチの開催日だ。  派手な宣伝はない。人を殺す覚悟を聞かれている。シドは腹を括った。  昨夜、恭司に呼ばれた。 「シド、話しておくよ。 明日の金網デスマッチの事だ。」  恭司がシドの目を見て言った。 「極道になるってことは、よ、いずれこの事も経験しなくちゃならねえ。おまえ、人、殺れるか?」  恭司から聞いたのは、S会永田組別働隊のことだった。始末屋の存在。  ただの出入りやゴロ巻きではない。 「タマァ、取るか取られるか、本気でやる修羅場だ。警察に捕まれば死刑の案件。  おまえの命、俺に預けてくれるか?」  聞けばこの始末に関わる組員は全員納得してここにいるそうだ。 「終わったら、盃だ。死ぬなよ。」   具体的に何をするかと言うと、金網デスマッチの進行だと言う。雑用だと言った。  何かドラマチックな事をやるわけではなさそうだ。  厳選された出場者の中からリタイヤする奴を助ける。  ルールは戦意をなくして降参の意思を示したらそれ以上はやらせない。一応屈強なレフェリーがいて様子を見る。  降参の意思を示したら今後、格闘界で生きてはいけない。負け犬の人生。  格闘家の実質的な「死」だ。 みんな生き恥を晒すより死ぬ事を選ぶらしい。 「止めを刺す介錯人がいる。」  本人が望む死に方を選べると言う。最後の人間の尊厳を尊重する。  ブルッと背筋が震えた。 シドは初めて本気の殺し合いを見ることになる。 「大丈夫か?シド、山岡士道!  腹が決まらねえんなら、今回はやめてもいいんだぞ。」 「いや、やります。お役に立ちたい。」 「よし、今回はシドは一番の初心者だから、いきなり前に出る事は、ねえ。 落ち着いて先輩の所作を見て学べ。」  これが昨夜の事だった。対して予備知識もない。それでも真っ白な晒しを一反、もらった。

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