19 / 30
第19話 初めての介添え
「飛んで火に入る夏の虫、だな。
虫ケラみたいに捻り潰してやる。」
動画に映り込んでいた奴らも、恭司たちの情報源で炙り出している。日本に来てたら奴らは嬲り殺しだ。C国に帰っても、逃げ回る人生だ。
C国内でも、世界から顰蹙を買っている虐待動画制作は、国の汚点になっている。
「いいか、シドは初めてだろ?」
恭司がシドの目を見て確認する。
今日は金網デスマッチの開催日だ。
派手な宣伝はない。人を殺す覚悟を聞かれている。シドは腹を括った。
昨夜、恭司に呼ばれた。
「シド、話しておくよ。
明日の金網デスマッチの事だ。」
恭司がシドの目を見て言った。
「極道になるってことは、よ、いずれこの事も経験しなくちゃならねえ。おまえ、人、殺れるか?」
恭司から聞いたのは、S会永田組別働隊のことだった。始末屋の存在。
ただの出入りやゴロ巻きではない。
「タマァ、取るか取られるか、本気でやる修羅場だ。警察に捕まれば死刑の案件。
おまえの命、俺に預けてくれるか?」
聞けばこの始末に関わる組員は全員納得してここにいるそうだ。
「終わったら、盃だ。死ぬなよ。」
具体的に何をするかと言うと、金網デスマッチの進行だと言う。雑用だと言った。
何かドラマチックな事をやるわけではなさそうだ。
厳選された出場者の中からリタイヤする奴を助ける。
ルールは戦意をなくして降参の意思を示したらそれ以上はやらせない。一応屈強なレフェリーがいて様子を見る。
降参の意思を示したら今後、格闘界で生きてはいけない。負け犬の人生。
格闘家の実質的な「死」だ。
みんな生き恥を晒すより死ぬ事を選ぶらしい。
「止めを刺す介錯人がいる。」
本人が望む死に方を選べると言う。最後の人間の尊厳を尊重する。
ブルッと背筋が震えた。
シドは初めて本気の殺し合いを見ることになる。
「大丈夫か?シド、山岡士道!
腹が決まらねえんなら、今回はやめてもいいんだぞ。」
「いや、やります。お役に立ちたい。」
「よし、今回はシドは一番の初心者だから、いきなり前に出る事は、ねえ。
落ち着いて先輩の所作を見て学べ。」
これが昨夜の事だった。対して予備知識もない。それでも真っ白な晒しを一反、もらった。
ともだちにシェアしよう!

