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第21話 会いに来た
朝早く、シドが訪ねて来た。
「蜜に会いたくて。」
何か清潔な香りのするシドに蜜が抱きついた。奥からリキが出て来た。パジャマ姿で眠そうだ。
「朝早くすみません。ごめんなさい。
今日、栃木の採石場に行くんでその前に一目蜜に会いたくて。」
「何?何か今生の別れみたい。」
「いや、そんな事はないよ。
ただ、仕事で出かけるんだ。」
「恭司と一緒かな? 栃木に行く話をしてたな。」
「え、と,あまり宣伝してないんですけど、格闘技の大会があるんです。」
「シドもやるの? 格闘技。」
「いや、雑用係で呼ばれてるだけ。
おみやげ、買ってくるよ。」
「あ、有名な餃子がいいな。」
「うん、わかった。それじゃリキさんもお元気で。」
蜜が抱きついてキスした。リキの目の前で気まずい。リキは何かに気付いてしまった。
「これ、持っていけ。」
シドの手にすっぽり収まるほどの折りたたみナイフだった。特注品で小さいながらも刃が固く、象も倒せると言われている有名なナイフだった。
手にしっかりと握りしめて家を出た。組の車、クラウンに乗ってきた。
これから恭司を迎えに行く。リキはシドが来た事で何かを察した。
恭司に電話する。
「今、おまえんとこのシドっていう若いもんが来たよ。何かあった?」
「ああ、極秘なんだけど、金網デスマッチがあるんだよ。」
「シドも出るのかい?」
「まさか、奴は手伝いだ。」
「それにしては悲壮感が漂ってたな。」
「初めてだからな。金網デスマッチってのは
稀に人死にが出る。緊張するだろう。」
(稀に、じゃない。大勢の死人が出る。)
「おまえ、知ってるか?
ドラゴンホールっていうプロレス団体。」
「ああ、潰れたんじゃなかったか?」
猿の虐待が刑事事件になって、解散したと思われていた。
「ゴキブリみたいに、まだいたんだよ。
猿は行方不明だ。
猿は長生きだから,まだ元気だといいがな。」
恭司は渋い顔をしている。うちのテツが主催して、テツの仲間が出るんだよ。
見にくるか?」
うっかり誘ってしまった。
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