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第30話 蜜
車からおりたのは、リキと蜜だった。
金網デスマッチの会場になっている栃木の採石場。リキの音楽仲間が運転するハイエースでここまで来た。ライブの移動用の車。
「リキは、なんか気にならない?
恭ちゃんの事とか。シドもここにいるんでしょ?」
シドは出場選手ではない、と聞いている。
ケガをする事はない、と思う。ただの手伝いだ。
それでもリキにわがままを言ってここに来た。
会場はおどろおどろしい金網でガッチリ囲まれて、鍵がかけられている。一度入ったら生きては出られないように見える。
驚いた事に警備は手薄で誰でも金網に近づけた。
個人戦の試合は終わったようだ。中には誰もいない。金網の外にずらっと客席がある。
今は客席にレスキューブラッドのメンバーが数人いるだけだ。
「もう終わったの?」
「いや、最後のバトルロイヤルが始まるまで少し休憩だ。準備している。
出場者が施錠を解いた入口からパラパラと入って行った。リキも知ってる永田組の組員たち。
「あ、シド!」
シドはスタッフじゃなかったのか?
出場者なのか?
恭司が神谷の叔父貴と関係者席にいた。リキが近寄ると恭司は嬉しそうに
「来たんだな。蜜は怖がらないか?」
「大丈夫だよ。もっと酷い事も見て来た。」
金網越しにシドがこっちを見た。
「あっ、蜜。」
走って行って金網につかまった。
「シドもやるの?殺し合い。やめてよ。」
「殺し合いにはならないよ。
シドはケンカ強いんだ。大丈夫。」
シドと蜜は見つめあった。金網が邪魔だ。
リングの周りに出場者が集まっている。あの楊と徐もいる。金網のこちらには山賀とモナミが座っていた。
「リキ、力丸の首を絞めた奴がいる!」
リキも気付いた。近所の男だ。酷い事を平気でやる男。一瞬、恭司とリキの視線が絡んだ。
神谷の叔父貴はそれを見ていた。
「シド、気をつけて。危ない事はやめて!」
悪意の塊のような山賀から不穏な空気を感じ取った蜜の悲痛な声が聞こえる。
山賀は仲間がいる。残虐な事をする仲間。
「リキ、シドは格闘技なんかやらないよ。
逃げられないの? やめさせてよ。」
金網デスマッチのリングには、代々の試合で流された血の跡が残っている。
戦うのが好きな男の影が見える。
後ろに控えていたレスキューブラッドのメンバー、バイカーたちが神谷の叔父貴に挨拶に来た。
「今日はこれが最後の試合になるね。
真剣勝負だろう。見せてもらうよ。」
タトゥーだらけの筋肉隆々なバイカーたち。
「すごい、強そう!」
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