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第34話 蜜とシド
もう夏が終わって海の家も片付けられた海岸は寂しさが漂っていた。
蜜は一人で自転車で来てみた。海には誰もいない。
金網デスマッチが終わってシドの強さを目の当たりにした蜜は、何だか寂しさが募っていた。
リキと暮らしている。でもこの頃リキは身体を求めて来ない。夜は同じベッドで抱いて眠ってくれるけど、もう前みたいにセックスはしない。
リキには蜜の心がわかるようだ。
今は仲のいい兄弟か、親子とまでは言わないが、ちょっと距離を感じる。
「ねえ、リキ、恭ちゃんのことが好きなんでしょう?」
聞いてみたい言葉が喉元まで出かかっているが、怖くて聞けない。
聞いたら蜜の居場所が無くなってしまうから。
それでも蜜もシドに会いたくて海に来てしまった。
「あ、シド! 大きいワンちゃんだね。」
シドは大門を連れて散歩に来た。
「若頭の神谷さんの犬だよ。甲斐犬の大門だ。」
賢そうな目をした黒い立派な犬だった。
まるで何かを話したそうな聡明な目をしている。
手を差し出すと匂いを嗅いでペロリと舐めた。
「ヒャハッ可愛いね。」
シドと二人と一匹で海岸を散歩した。久しぶりのシドとの時間。
蜜は
(こんなにも会いたかったんだ。)
と気がついた。
「シド、忙しかった? 僕に会いたかった?」
「ああ、会いたかったよ。」
にっこり笑って見つめる。
蜜はドキドキが止まらない。
「俺と柴木っていう人が、あのドラゴンホールにスカウトされたんだよ。
恭司さんはやって見ろって言うんだけど、
プロレスっていうのが、な。
抵抗あるっていうか。」
「プロレスって痛いんだよね。
痛いのやだなあ。」
シドは笑って蜜の頭をくしゃくしゃにした。
サラサラの髪が揺れる。
「やめてよぉ、大門が止めろって言ってるよ。」
「ああ、帰らなくちゃ、カシラが心配するからな。」
組のクラウンで来たというシドは大門の砂を払って自転車のところまで一緒に歩いた。
帰り際、肩を抱かれてキスされた。
「シドッ。」
「あはは、リキさんによろしくな。
あと、組長の恭司さんはリキさんが好きだと思う。俺の勘。」
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