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第6話

 千冬が入院して1週間が経つころに、ずっと待っていた知らせが届いた。 「佐宗さん! やりました! 勝ちましたよ!!」  山城からの歓喜の連絡が入ったのは、太陽も地平線の向こうへと姿を消し、薄い紫に空が染まっている時間帯だった。  チーム佐宗のメンバーが、入れ代わり立ち代わり電話に出る。  3カ月の努力が実り、全員声が嬉々としていた。 「やったな。おまえの尽力があったからだ」  遠藤が早く元気になって帰って来い、と続ける。  チーム佐宗が喜びを思う存分味わったころ、恭吾はホテルのラウンジにいた。 「今回の結果で、あなたの提示していた条件が満たされました」  契約書を確認しながら、向かいのソファーに座る男の話を聞いていた。 「わかりました。では予定通り来月から」  短く了承し、恭吾は契約書にサインをした。  千冬はスケジュール帳を確認し、来週はもう7月なのだと時の早さを感じる。  毎日同じことを反復して生活していると、日付や曜日の感覚が失われてしまう。  経過は順調で、予定通りあと1週間ほどで退院できると医師から聞かされている。  退院したら、また地獄のような日々がやってくるだろう。  それを考えると少し気が重く、しばらく予定が白紙になっているスケジュール帳を閉じた。  翌週の月曜日、朝一番、始業時間である9時の少し前にかかってきた電話は山城からだった。  もしもし、の一言も発せないぐらいの勢いで喚く。 「佐宗さん、大変です! 佐宗さん今回のプロジェクトから外れるみたいです!」 「え?」  思いもよらなかったことに、頭がついていかない。 「新しい部長が着任されて、その人の指示みたいで……あ、すみません。時間だ。詳しくはまた後で」  山城が早口で話す後ろで、始業を告げるチャイムが鳴っていた。  一方的に切られた通話になす術もなく、千冬は何が起こったのか理解できず、画面の暗くなったスマホをしばらく眺めていた。

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